*B部門入選作発表*


兼題『季語:無花果』『漢字:葉』=全78投句(入選62句)

【特選】

一席
●葉脈に土の心音うすもみぢ=葱男


◎資、砂、紅、し○村、メ△玻、白、ス=19点
(紅:参りました。これぞ、まさに「うすもみぢ」です。 し:葉脈は血管のようでもありますね。 村:土の心音という比喩に驚き。 白:吸い上げた水が静かに流れる。)


二席
●木犀やコトンとやつて来し葉書=紅椿


◎茶、ま、ス○村、秀△五、久、ぶ=16点
(茶:木犀と「コトンと」のほのかさがいいと思います。 村:コトンの擬音に待ち焦がれていたものが届いた感じが出た。 秀:葉書が「やってくる」のがいい。 五:木犀の咲くお宅。一人暮らしの老人宅に葉書が子供より届いた。コトンが上手い。 ぶ:リアル。音と言葉のコラボ。)


三席
●無花果や鍼灸院の犬の老ゆ=紅椿


◎五○や、資、し△十、葱、清、香=13点

(五:鍼灸院の庭に無花果が生っている。鍼灸院の夫婦も年をとったが、犬も老犬となった。や:手入れをしながら我も又老いゆく。 資:無花果と老犬と鍼灸院の見事な三点セット。  し:鍼灸院と老いた犬がいいです。 十:季語の符合で評価で分かれる句。私は合っていると思う。 葱:昔からある、おじいさんのやっている鍼灸院のような気がします。長年連れ添ってきた犬も老い、常連さんである作者もやや老けてきたな、という感慨。 清:いつも通っている鍼灸院の庭の無花果とともに老いてゆく犬。)


三席
●傷口のやうに無花果そっと舐む=秋波


◎雪○玻、淳、ぼ△十、砂、香、し=13点

(玻:体験の生々しさを感じるような赤。 傷口を舐めあうと感染するよ。と思いながら共感する措辞でした。 ぼ:これも禁断の実か。エロティシズムあり。 十:あの薄赤いグラデーションはまさに「傷口」ですね。 香:よく熟れてるものは、割れてたりしますね。 し:表現が斬新ですね。)


【入選】

●銀杏黄葉舞台女優は肩で泣く=十志夫
○葱、虹、ラ、ぼ△や、五、久、雪=12点
(葱:「舞台女優」だから肩を震わせて泣くのでしょう。テレビだとアップになるからまた表現が違ってくると思う。 虹:女優の熱演が伝わる。 ラ:「肩で泣く」という措辞が巧いです。 ぼ:ウソかマコトか、マコトかウソか。 や:泣いているのは舞台の上か現でか。 五:舞台女優たるものは肩で泣くことが出来ないと役者とは言えないということか?)

●皇后の言の葉に秋深みけり=十五
◎十、香〇虹、ラ△葱、ま=12点
(十:誕生日の時のお言葉。いつも慈悲に満ちたきれいな日本語に感心しています。 香:御歌にしても、お話にしても、趣深く愛情深く思われます。 虹:穏やかになる佳句。  ラ:「言葉」ではなく「言の葉」がふさわしいですね。 葱:苦労されてきて、なおあの気品を失わない姿、とても心打たれます。皇后を支えてきた陛下にも頭が下がります。深い深い愛を感じます。)

●三分で選ぶ駅弁薄紅葉=裕
◎や、ラ○十△五、砂、茶、ま=12点
(や:直観ほど正しいものはない。 ラ:慌てふためく様子が、目に見えてきます。  十:雰囲気が伝わってきます。 五:観光の模様を軽妙に伝える。駅弁より紅葉? 茶:慌ただしい気もしますが、こういった列車旅いいですね。)

●罪深き手に無花果の乳垂るる=葱男
◎白○砂、久、淳△茶、喋、し=12点
(白:とても深い詠みです。 久:鋏を使わず、やはり無花果を盗んだということなのでしょうね。 茶:何の罪かよくわかりませんが、ちょっと耽美な感じにいただきました。 し:”罪深き手”何の罪か気になります。)

●無花果を食みて欠伸の生ぬるき=秀子
○十、紅、茶、ま△資、メ=10点
(十:無花果嫌いにはよくわからないが、雰囲気が捉えられいるような。 紅:「無花果」の句がずらりと並んでいて迷いましたが、「生ぬるい欠伸」が気になりました。 茶:生あくびと無花果の立ち位置、その共通性の提示にいただきました。)

●封切れば言葉溢るる虫の夜=秀子 
◎久〇砂△十、虹、メ、紅、ス=10点
(久:目から耳から心が満たされていくのが感じられます。 十: 親しい人からの手紙。背景としての虫の声が効いている。 虹:「溢るる」と季語が合う。 紅:雰囲気があります。)   

●黒板に書く相聞歌薄紅葉=ラスカル
◎秀、清○葱△十=9点
(秀:授業中の相聞歌なのが、とてもいい。 清:古典の時間万葉集の相聞歌を黒板に書き出す教師、窓辺には愛し合うふたりの頬のように薄紅葉。好きな句だ 。 葱:学校で「相聞歌」という恋文を教えるのがいい。「薄紅葉」で女生徒のハニカミや恥じらいも見えてきます。 十:「しのぶれど色に・・・」「われても末に逢はんとぞ・・・」若い頃暗唱しましたね。懐かしい。)

●饒舌なシャッター音や紅葉山=紅椿
◎虹、ぶ△十、資、喋=9点
(虹:見事な臨場感。 ぶ:どこかの名所だろうか。土産物売り場は閑散としているようだが圧倒的な紅葉が浮かび立つ。 十:「饒舌」と擬人化したところが巧み。 資:おしゃべりなカメラマン,いるいる。)

●無花果やレコード盤の波うちて=まさこ
◎玻〇雪△秀、清、ス=8点
(玻:なんとも云えない哀愁を感じます。懐古的な心象風景に共感しました。「無花果に照る月をさげすむ」と云う句を 思い出し、対極の存在を感じました。 秀:懐かしい! 清:久し振りに取り出したレコードが波打つ昔あった無花果の木を思い浮かべながら聞く。)

●マウンドの手長き少女草紅葉=まさこ
○白△葱、村、秀、紅、修=7点
(白:おぉ、美少女投手だ。 葱:中七の「手長き」がいい、少女にしてピッチャーというのだからきっと、抜きん出た体格と才能があるのでしょう。 村:最近スポーツ少女が多く頼もしい、草野球か。 秀:中7がややつまってるのが、残念。 紅:ソフトボールなのでしょうね。上野選手がよぎりました。)

●蓑虫やをかしき言葉書き写す=十五
◎喋○秀△雪、ラ=7点
(秀:風狂の域? ラ:どんな言葉なのか、読者に想像させている点が巧みです。)

●紅葉かつ散り碧眼の修行僧=ラスカル
○清、ま△秀、白、ス=7点
(清:紅葉且つ散る自然の摂理を心に描く青い目の禅の修行僧。 秀:「碧眼の修行僧は既視感がありありかな。」 白:奥深き山に-----。)

●ムーミンの谷へと続く紅葉山=ラスカル
◎裕○ぶ△ま=6点
(裕:紅葉はなんとなくロマンチックですよね。 ぶ:さもありなん〜)

●新しき朝を木の葉の舞ひ落ちる=ぶせふ
◎子△淳、ぼ=5点
(ぼ:なんと、素直な!)

●無花果や古刹に笑ふ石仏=砂太
○裕、香△資=5点
(裕:笑う石仏がいい。)

●君のゐる向ひの窓の遠紅葉=虹魚
◎メ〇香=5点

●無花果や何か足らざる一日過ぐ=やんま
○清△村、し=4点
(清:何時ものように無花果の木を眺めながら何となく過ごした一日。 村:あれこれやった日なのに不充足な気分ありますね。 し:分かります。。。)

●一葉のひらり国東摩崖仏=砂太
○子、ぶ=4点
(ぶ:行ったこともない国東がなんとも懐かしい。)

●芋の葉の白珠ころと秋惜しむ=砂太
◎村△茶=4点
(村:白珠が綺麗な措辞で「ころと」もまさに的確。 茶:中七のリズムがいいと思います。)

●小夜時雨土の匂ひとさやぐ葉と=秋波
○し△虹、白=4点
(し:とても美しい響きのある句ですね。 虹:雰囲気がある。 白:眼耳鼻意の組み合わせが妙。)

●登校の列の凸凹一葉忌=十志夫
○茶△や、雪=4点
(茶:「たけくらべ」を思い起こしました。 や:これが人間のありようである。)

●葉つぱのフレディいのちの旅の銀河澄む=清一
◎ぼ△ラ=4点
(ぼ:宇宙につながる小さき生命よ。 ラ:俳句としてはやや言い過ぎですが、「葉つぱのフレディ」に一票。)

●マナー良き野球少年草紅葉=まさこ
◎葱△紅=4点
(葱:「マウンドの手長き少女草紅葉」と同じ作者か?同じ「草紅葉」を取り合わせていますが、草野球の感じがよく出ています。若い頃に体育会系を経験することは、先輩への礼儀や尊敬心を養うのにも良いことですね。 紅:近くの高校の球児たちはいつも挨拶をしてくれます。)

●紅葉かつ散る言葉瞬く間に乾き=秀子
○資△玻、砂=4点
(玻:拒絶を受けた告白は儚い楔です。それでもなお言葉にして吐き出してしまう人間の馬鹿さ加減を愛します。)

●雨晴の丘の無花果海へ吠ゆ=十五
◎修=3点
(修:吠えるという擬人化?なかなかできないと思いました。)

●無花果を食みて遊べば歯が笑ふ=メゴチ
◎淳=3点
(淳:歯が笑ふとはおもしろい表現ですね。)

●雲浮かぶ小川のありて紅葉鮒=やんま
○メ△修=3点

●原罪を無花果の葉で覆ひける=ぼくる
○五△久=3点
(五:無花果の葉は大きい。アダムとイブのことか?)

●紅葉山鞍馬天狗の鼻色に=清一
○雪△香=3点

●無花果の香や教会の朝の畑=雪絵
○や=2点
(や:この世も神も今は静まって。)

●いちじくの万有引力房囓る=茶輪子
〇久=2点

●無花果を椀ぐ少年の罪意識=清一
○白=2点
(白:聖書を知ってか知らずか。)

●柿紅葉一つだに実を生らさずに=五六二三斎
○修=2点
(修:目の付け処がおもしろい。)

●カラバッジョの裂けた無花果夜の露=しゃが
○裕=2点
(裕:カラパッジョの絵は見たことないですが・・・)

●空港に降りて飛び込む初紅葉=裕
○五=2点
(五:こんな空港があったら素敵だと思い選句した。)

●潮風に熟るるいちじく瀬戸は晴れ=ぼくる
○紅=2点
(紅:思わず「瀬戸に花嫁」を歌いだしそうです。)

●月一度の学生なりし草紅葉=十志夫
△葱、修=2点
(葱:聴講生か何かでしょうか?若い人たちに交じって、自分の学びたいことを見つけた熟年の向学心がとても爽やか!)

●どんぐりへはらりふわりと櫟の葉=ぼくる
○喋=2点

●葉ミカンの宅配下宿の昼下がり=久郎兎
○玻=2点

●ひらひらと桜落葉の神田川=資料官
△裕、喋=2点
(裕:神田川のあたりは春も秋も楽しめるところです。)

●ぶせふさんイチジクの葉に隠れをり=葱男
△ぶ、ぼ=2点
(ぶ:どなたかは存じませんが有り難うございます〜w ぼ:ははは、いとをかし。)

●ぽつつりと万葉歌碑やつづれさせ=雪絵
○喋=2点

●ミノムシも枯れ葉集めて冬支度=喋九厘
○ス=2点

●紫のラベル無花果ジャムの瓶=資料官
○修=2点
(修:季語としては弱いかも。しかし瓶自体が無花果のようです。)

●夜明から駅舎を飾る落ち葉かな=喋九厘
△虹、淳=2点
(虹:夜明けと共に落ち葉が光る。)

●無花果の木々濁流に呑まれをり=五六二三斎
△ぶ=1点
(ぶ:天災 は忘れたころにやってきて去って行く。)

●無花果のタルト並べて誕生日=資料官
△十=1点
(十:素直な句で楽しさがつたわる。)

●無花果のつぶつぶのジャム朝ラジオ=久郎兎
△や=1点
(や: これで今日の健康も間違いなし。)

●無花果の残り実ひとつまだ青し=白馬
△玻=1点

●無花果や仙人甘いものが好き=ぶせふ
△ぼ=1点
(ぼ:おとぼけ仙人、幼児と同じ。)

●猫の道落葉集めて通せんぼ=久郎兎
△裕=1点
(裕:猫にいたずらですね。)

●脳みそを抱えるように無花果椀ぐ=秋波
△葱=1点
(葱:比喩が面白い、リアル!)

●葉の色が光り輝く秋の暮れ=淳一
△メ=1点

●人々の縁ゆかしき照葉かな=ぶせふ
△ラ=1点
(ラ:「ゆかしき」という一語が利いていると思います。)

●踏締めば紅葉蓆の音詩かな=虹魚
△淳=1点

●古池やもみじ葉映えて芭蕉庵=メゴチ
△子=1点

●まなうらに山城の景谷紅葉=雪絵
△裕=1点
(裕:山城の景が浮かぶような紅葉、いいですね。)


●万葉の旅懐かしや銀杏散る=白馬
△清=1点
(清:懐かしい万葉を訪ねる旅銀杏散る季節になると思い出す。)


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