*B部門入選作発表*


兼題『季語:香水』『漢字:薬』=全86投句(入選68句)

【特選】

一席
●十薬の結界めきて父母無き家=智雪


◎秋、修○葱、資、朱△砂、久=14点
(秋:中七の表現に重さと妙味。 修:結界めきてー秀逸と思います。 葱:親が他界したあと、手入れする人のない実家の光景が浮かびます。 資:空き家に残る十薬の白が神秘的でもある。実感。 朱:なるほど、十薬は結界めいている。が、「めきて」が勿体無い。「十薬や結界となる」と言い切った方がいいのではと個人的な思い。)


二席
●香水をぬぐひて母に戻りけり=十志夫


◎資、砂○ぼ、秋、裕△白=13点

(資:何の気のない母のしぐさを良く捉えていると思う。 ぼ:女、母、女 を繰り返すのでしょうねえ。 秋:女は色んな顔をもつもの。眼や表情の変化も見えて上手いと思いました。 裕:香りを落とす 一人で何役もこなしている女性。 白:何か不倫のにおいが。)


二席
●芍薬や石灯籠に小さき窓=ラスカル


◎虹、喋○紅△資、十、ま、遊、朱=13点
(虹:まるで時が止まっているかのような静寂。 紅:正統派の俳句。景が見事に立ち上がります。 十:やや既視感はありますが、一つの発見。 ま:日本庭園をズームして見ているような美しい景です。 遊:ちょっと化け猫でも出てきそうな一句。 朱:景は見えるがもうひとひねり裏切りが欲しい所。)


【入選】

●漢方に恐竜の骨薬降る=虹魚
◎始、朱○遊△や、ス、雪、喋=12点
(始:なぜ恐竜と考えさせられる。 朱:こういう季語は取り合わせとの距離感が肝。とても上手いと思いました。 遊:恐ろしく効き目のある一句。 やんま:効きそう)

●邪を香水瓶より1グラム=葱男
◎遊、メ〇智、茶=10点
(遊:言葉がこんな風に勃起するなんて。 智:邪(笑)悪女には香水が良く似合う。 茶:1グラムの「邪」多いんだか、少ないんだか。)

●海の家レジと並んで薬箱=ラスカル
○村、茶△葱、ま、遊、水、久=9点
(村:中七のくだけた表現がまあ適度。 茶:何気なさを拾った点にいただきました。 葱:裸足で磯場など、怪我をする子もたくさん。 ま:海の家ならではの薬箱の存在感ですね。 遊:恐ろしくリアルで詩的な一句。 水:なるほど。)

●香水なぞ無用湯上がりの君よ=ぼくる
◎子、茶○白△修=9点
(茶:「なぞ」が効いています。 白:その方が余程色っぽい! 修:それはまあ結構なことで。)

●香水の瓶よりアラビアンナイト=五六二三斎
◎ぼ○砂、村△葱、虹=9点
(ぼ:詩的飛躍あり。いいですねえ。 村:ファンタジイ。 葱:アラビアには没薬や乳香のイメージがあります。)

●短夜や夢二の絵より媚薬の香=ラスカル
○虹、水、雪△十、五、白=9点
(水:たしかに。 十:たしかにそんな感じがします。季語も効いている。 白: 立ち昇る香。)

●薬師寺の重き瓦や梅雨長し=茶輪子
○葱、や、雪、修△子=9点
(葱:薬師寺と特定したことで句にリアリティを持たせることができた。 やんま:雨垂れが光る。 修:本当に他より重く感じます。)

●火薬庫に髑髏のしるべ仏桑花=十志夫 
◎村○紅△ス、白、雪=8点
(村:髑髏が圧倒的。 紅:沖縄の景でしょうか。リアルです。 白:不思議な恐ろしさ。)

●梅雨寒や日にちぐすりと言ふ薬=紅椿
○秋、智、清△子、茶=8点
(秋:自然な回復を待つしかない仕方ない気持ちと季語がうまく呼応している。 智:梅雨寒と日にちぐすりの心許なさが良く合っている。 清:骨折したら日にち薬しか手立てがない、梅雨寒の頃は特に痛む。 茶:季語選択がよいと思います。)

●梅雨晴や一言添ふる薬剤師=十五
◎久○や、ぼ△ま=8点
(やんま:明日も晴れでしょう。 ぼ:あたたかみのある句。 ま:優しい一言に、ほっとしますね。)

●牧草は釧路の夏のオーデコロン=メゴチ
◎葱、ま○白=8点
(葱:干草の匂いがするようです。 ま:牧草の香りが爽やかに広がりました。牧草がオーデコロンとは言い得て妙です。 白: 雄大さと清々しさが溶け合って。)

●香水や三面鏡のうす埃=紅椿
◎清○五△水、メ=7点
(清:三面鏡を使って居た人はもう故人なのか、何となく郷愁を感じる。 水:ずいぶんお年を召されたか、亡くなったお母さまの濃い黄色に変色した香水。)

●十薬や無人の駅をたたく雨=秋波
◎雪、紅△ぼ、朱=8点
(紅:読み手のその時の気分によって、感じ方が変わる秀逸なお句です。 ぼ:どくだみが繁茂、情景が目に浮かぶ。 やはり十薬はこういうイメージなのか。)

●香水の句会に潜む夕べかな=十五
◎裕○資△雪=6点
(裕:固い句会を妖しくしているところがいい。)

●十薬や不意なるもののひとつに死=雪絵
◎十〇朱△紅=6点
(十:先週、義母を95歳で看取りました。実感。 朱:陰の季語に陰の措辞だけれどもそれほどの重さはない。「ふいなるもののひとつ」という他人事のような軽さが良いのだろうと思います。 紅:こちらも〇にしたかったです。)

●青梅雨や薩摩切子の香水瓶=スライトリ・マッド
◎や△虹、ぼ=5点
(やんま:いかなる麗人か。 ぼ:手堅い、ザ、ハイク!)

●合宿に囲む薬缶の氷水=葱男
○ス、修△メ=5点
(修:ああ生きている!)

●眼科医に香水の名を悟らるる=雪絵
○ラ△や、十、智=5点
(ラ:瞳の奥を覗かれて、心の奥まで覗かれてしまったような。 やんま:顔が近い。 十:ありそうな話。遊び人風の眼科医が浮かびます。 智:顎を乗せて眼を除き込まれるなんて、考えてみれば何と無防備な‥その上香水の銘柄まで悟られるなんて‥。)

●薬など役には立たぬ冷し酒=虹魚
○清△ス、裕、=5点
(清:大概の薬には副作用がある、それで苦しむよりは百薬の長の酒だ。 裕:まるで自分のことのよう。 修:なんという精神力!)

●香水をひと振り向かふ投票所=資料官
◎五〇久=5点

●薬局のカエルを叩く梅雨豪雨=水音
○十、五△始=5点
(十:面白い捉え方です。感心しました。 始:最近はあまり見ませんが、懐かしい。 )

●漢方薬の香や梅雨寒のエレベーター=まさこ
○十△清、修=4点
(十:香水とエレベータの組み合わせは多いが、漢方薬は初めて見た 。 清:エレベーターの中で匂う漢方薬は喉薬であろう。 修:高齢化社会なのだ。)

●香水を貰へるをんな買ふオンナ=智雪
◎水△紅=4点
(水:女性を二通りに分けてしまった! 紅:残念ながら、一度も香水を貰った事がありません。)

●再会や彼の日の香水の香り=まさこ
○始△十、紅=4点
(始:幸せそう。 十:脳裏でなく、鼻腔の記憶ですね。 紅:ドラマがあります。)

●十薬や予後の散歩の恙無し=やんま
○久△葱、五=4点
(葱:健康のありがたさ。)

●飲み忘れの薬の山や半夏生=水音
◎ラ△秋=4点
(ラ:何気ない句ですが「半夏生」が利いていると思います。 秋:病も峠を越すと、つい…。)

●やや強き香水の波クリムト展=資料官
◎智△十=4点
(智:如何にもクリムトが好きそうな、身なりの良いご婦人方の一群が目に浮かぶよう。 十:絵から流れてくると感じたのか、見物人のそれなのか、やや不明ですが、多分、観客の香りでしょう。)

●行ってしまひけり香水の香を残し=ぼくる
◎白=3点
(白:破調が効いていますね。)

●香水やウソと真実かき混ぜて=遊歩
○メ△砂=3点

●香水や精神科医の眼の揺らぐ=水音
○遊△資=3点
(遊:リアリティーの極致。 資:香水と医者の組み合わせの句の中では一番。)

●香水や背伸びしてみる京女=五六二三斎
○子△喋=3点

●十薬の小花お詫びのやうに咲き=ぼくる
○ラ△智=3点
(ラ:「お詫びのやうに」という比喩がユニークです。 智:繁殖を疎まれ、葉は煎じられ、お詫びのように花が咲く‥ちやほやされる観賞用の花と何と違うことか‥。)

●十薬を抜きし軍手や雲走る=茶輪子
○喋△久=3点

●仏壇にちょつとおしゃれな香水瓶=資料官
◎ス=3点

●薬院の平面交差梅雨の風=香久夜
○水△五=3点
(水:部活をサボって映画を見に行ったあの頃。 資:1975年に消えた懐かしい風景だけど,梅雨の風がピンと来ない。)

●山の辺の光の香水傘地蔵=喋九厘
○メ△裕=3点
(裕:中八ですが、光の香水 という表現が素敵です。)

●いつとなく薬忘れる滋養かな=始祖鳥
○ス=2点

●陰翳礼賛甘きゲランの香を残し=朱河
○ま=2点
(ま:谷崎文学にゲランはふさわしいと感じます。)

●鏡台に残る香水四畳半=白馬
△清、裕=2点
(清:外出した祖母の部屋だろうか、香水の香が残る。 裕:最近は鏡台も減りましたね。)

●薬袋に医師の指示メモ青葉木菟=十五
△や、砂=2点
(やんま:納豆を避けよ)

●薬降る笑ひ絶やさぬ卒寿かな=清一
○喋=2点

●怪我の無き薬指にも薔薇の棘=久郎兎
△虹、遊=2点
(遊:恐ろしく美しい人生。)

●香水や指輪の女医の聴診器=清一
○虹=2点

●香水をそつと一滴客を待つ=香久夜
○子=2点

●五月雨や数字書かるる漢方薬=スライトリ・マッド
△智、水=2点
(智:私もツムラ68番のお世話になっています。)

●修復の城のクレーン十薬よ=スライトリ・マッド
○ま=2点
(ま:十薬の一見よわよわそうな可憐な花は、実はとても強く、お城の修復を毎年茂って見守っていますね。)

●十薬を揉んでニキビに被せたり=白馬
○始=2点
(始:事実なら面白いが。)

●毒(プワゾン)とふコロンを纏ひ逢ひにゆく=朱河
○砂=2点

●レジを打つ藍の浴衣の薬剤師=まさこ
△子、資=2点
(資:薬局で是非お目にかかりたい)

●六月を溜めて琥珀の香水瓶=智雪
○裕=2点
(裕:六月を溜めて 琥珀色がいいです。)

●朝露のオーデコロンや青蛙=喋九厘
△葱=1点
(葱:青蛙はオシャレな生き物ですね。)

●香水の清く明るきトイレかな=修一
△ラ=1点
(ラ:下五の展開に意外性があります。)

●香水やそしてああしてこうなりき=やんま
△ぼ=1点
(ぼ:一読、ニンマリ(笑))

●香水を纏ひ今宵はパリジェンヌ=虹魚
△ラ=1点
(ラ:女優になったような気分なのでしょう♪)

●香水を四つ試してデビューする=五六二三斎
△ラ=1点
(ラ:何にデビューするのでしょうか。興味津々(笑))

●五月闇特効薬の夫に欲し=紅椿
△村=1点
(村:逆も言われているかもとユーモラス。)

●十薬の干されて枯れてそれからを=砂太
△茶=1点
(茶: 異端者の悲しみの風情に。)

●十薬のにほひを犬の鼻先へ=メゴチ
△清=1点
(清:犬は十薬を厭がる、わざと近づける悪戯、一寸可哀想でもある。)

●十薬や太田光の眉間皺=十志夫 
△村=1点
(村:その通りで季語もいい。)

●夏風邪の薬代わりにあおる酒=裕
△始=1点
(始:病気のときに酒はいけない。)

●半夏雨百薬の長辛口で=やんま
△秋=1点
(秋:鬱陶しい日はキリッといきたいですよね。)

●百薬の長を過して正覚坊=白馬
△茶=1点
(茶:過ぎたるは及ばざる、ですね。) ●星涼し媚薬の如きアンタレス=朱河
△メ=1点

●短夜に薬の整理箱の奥=久郎兎
△秋=1点
(秋:私も先日やってました。これいつの?みたいな薬が色々押し込んであって。)

●目薬をたつぷり注すや梅雨曇=清一
△喋=1点


B部門入選作〈back number〉

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