*B部門入選作発表*


兼題『季語:新茶』『漢字:衣』=全87投句(入選63句)

【特選】

一席
●嘘つきの嘘は真実蛇の衣=十志夫


◎ス、茶、朱、智、し〇水、砂△始、遊=21点

(茶:ウロボロスの蛇。パラドキシカルですね。こういうの割と好きです。  朱:確かにそうですね、これは上手い取り合わせ、秀句。 智:困った事に‥。 し:妙に納得!!  水:なるほど。 始:誰か?と連想します。 遊:真実味が満載。)


二席
●花は葉に吾が吾でありし白衣脱ぐ=雪絵


◎清、水、ま、香○村、メ=16点
(清:白衣を着る仕事をしている詠者の決意がよく表されている。 水:リタイアですか。季語により充実した現役時代だったと推察されます。 ま:お疲れ様でした。中七、胸に迫りました。 香:引退を決意されたお医者様の心境ですね。 村:一日充実した労働の作者が見える。)


三席
●小夜更けて浴衣の糊のなじみけり=葱男


○ス、茶、ぼ、香△資、紅、し=11点
(資:糊に着目したところがすごい。すっかり出来上がっているのでしょうね。 茶:はじめは糊が効いていたのが、緊張感がほどけた。ちょっとエロティックな感じに。 ぼ:旅先でしょうか、落ち着いた句。 香:浴衣を実際に着た方の感覚ですね。 紅:上五がいいですね。 し:ふとした実感がある句でいいですね。)


三席
●ベランダにはためく産衣聖五月=ぼくる


◎や○資、し△ス、朱、砂、ま=11点
(や:来る風どれも新しき風。 し:ちっちゃな産衣が”はためく”のがいいですね!気持ちがわかります。 朱:爽やかな写生句。 ま: なにげない景ですが産衣が聖五月が響き合い、元気な赤ちゃんが浮かびます。)


【入選】

●水筒の新茶をふふむ峠かな=修一
◎ラ、紅○喋△十、ス=10点
(ラ:新茶の概念に囚われていないところがよいと思います。 紅:水筒の中の新茶がとても新鮮です。緑に囲まれた峠の景が見えてきて、気持ちの良い風まで感じます。 十:「新茶」によって峠の所在地を想像させる点がいい。)

●脱衣場の一服長き釣忍=朱河
◎葱、十○や△虹、秋=10点
(葱:いいですね、のんびりして。 十:愛煙家なら至福の時間なのでしょうね。釣忍もいい。景鮮明。 や:風鈴のりん時に乱れる。 秋:最近は喫煙場所を探すのも大変。)

●走り茶の香り漂ふ宇治十帖=清一
◎遊○紅△子、裕、智、修=9点
(遊:伝統とスピード感がいい調和。 紅:品がありますね。 裕:源氏物語を読みながら走り茶 いいですね。 智:宇治在住としては、この句は頂きたい。 修:色いろ想像させられます。)

●母の忌や今も箪笥の夏衣=資料官
○や、雪、裕、秋△朱=9点
(や:瞼の裏に何時も母あり。 雪:同じ経験しています。 裕:実家の和箪笥もこんな感じでした。 秋:箪笥を開ける。亡きお母様に思いを馳せるひと時をうまく表現していると思いました。 朱:母の句を私はあまり採らないけれど、甘過ぎず良い句かと。)

●蛇の衣もう一度解く問題集=秋波
○十、水、朱、智△雪=9点
(十:季語との取り合わせが巧い。 水:いつでも進化できる。 朱:問題集に再び向かう姿勢の脱皮する蛇との取り合わせが成功。 智:季語が良く効いていると思う。)

●眼の玉の跡を残せし蛇の衣=清一
○裕、五△虹、ス、ぼ、修、し=9点
(裕:ちょっとグロテスクな蛇の衣、一瞬ぞくっとします。 ぼ:たしかに、たしかに。 修:不思議だけど本当にそう。 し:へ〜目の玉の跡が残るんですね!見てみたいです。)

●青紫蘇の衣からりと揚がりけり=スライトリ・マッド
◎子△久、十、ぼ、修、五=8点
(十:紫蘇の天婦羅の衣を剥がさないで揚げるのは難しい、主夫の実感。 ぼ:美味しさう。 修:音もリズ厶もいい。美味そう!)

●新茶汲む古女房となりにけり=ぼくる
◎裕△資、雪、紅、水、智=8点
(裕:こういう風に齢を重ねたいです。 資:新と古のうまい組み合わせ。 紅:穏やかで、落ち着いたお句です。 水:毎年新しくなるお茶がうらやましい。 智:さりげない丁寧な暮らし。)

●広縁を揺るる日の斑や新茶汲む=十五
◎修○紅、ぼ△朱=8点
(修:私が今頂いているよう。 紅:とても巧みです。 ぼ:平穏な日々のひととき。 朱:爽やかな一景。)

●封筒を鳴らし新茶の届きけり=十志夫
  ◎村○清、ス△葱=8点
(村:シンプルな措辞で実感が伝わる。 清:新茶が封筒に入れて送られて来た嬉しさの余りに振って見る詠者。 葱:封筒をふると、中からサッサっと茶葉の音が聞こえてきます。)

●奥八女に卑弥呼伝説新茶の香=五六二三斎
○子、葱、修△雪=7点
(葱:邪馬台国の謎、盲目の宮崎さんでしたか、歴史的浪漫がありますね。 修:八女茶の味が深まりそうな句。)

●仏壇を手仕舞ふ話新茶汲む=資料官
○久、朱△茶、香、秋=7点
(朱:落語の一場面のような興味深い句。 茶:少子高齢化の一風情ですね。「新茶」にちょっと救われます。 香:うちも、その話しています。)

●気紛れな5月や上衣の所在無し=香久夜
◎久、秋=6点
(秋:本当に昨今の気温の上下といったら。)

●結局は昭和つ子なり古茶新茶=やんま
◎ぼ○資△ラ=6点
(ぼ:そうなんだよねえ、共感。 ラ:よく分かります。分かりすぎる、かも?)

●古茶新茶寺の隣に住み古りぬ=十五
○雪、茶、智=6点
(茶:季節は巡り、歴史は繰り返す。だが、変わらぬものも。 智:住み古りぬが好きです。)

●銭湯の開く三時の夏衣=朱河
△子、村、始、砂、智、ま=6点
(村:中七で切ったらさっぱり感が増すのでは? 始:前時代的な魅力。 智:早風呂を浴びて、夏の宵の楽しみはこれから‥。 ま:毎日一番に来ているのでしょうね。)

●脱衣所の柱は真竹滝の音=ラスカル
◎五○遊△紅=6点
(遊:とても情緒のありそうな温泉宿を思いました。高そうだけど。 紅:露天風呂でしょうか。行ってみたいです。)

●幾度の挫折の果てや新茶汲む=やんま
○虹、秋△水=5点
(秋:新茶の甘みもひとしお。語感もいい。 水:今の穏やかな生活が垣間見えます。)

●淹れ方を毎度説く母新茶の香=水音
△や、村、茶、ま、メ=5点
(や:家伝そもそも祖母に始まる。村:おいしい新茶の香りがただよう。 茶:口やかましいようではあるけれど、そんな母への親しみが伝わってきます。 ま:私も何度も聞いた覚えがあります。)

●更衣シルバー席が空いてゐる=紅椿
○喋△ラ、十、五=5点
(ラ:作者の「まだシルバー席に座るような年齢じゃないぞ!」という声が聞こえます(笑) 十:老人は坐りたくない。若者は坐れない、その結果・・・(笑)。)

●風薫る衣透けたる生春巻=水音
◎喋○十=5点
(十:タイ式春巻きのスケルトンの感じを巧く捉えた。季語もあっている。)

●紳士売り場の「メタボ」マネキン更衣=まさこ
◎始○久=5点
(始:発想が面白いですね。)

●野心家の我をあらわに更衣(ころもがえ)=遊歩
◎砂○虹=5点

●小説に挑む尼僧の更衣=清一
○葱△喋、五=4点
(葱:寂聴さんでしょうか?)

●ばあちゃんの好みし色や藍浴衣=裕
○ま△や、香=4点
(ま:藍浴衣佳いですね、涼しげで深みがあって。おばあちゃんへの愛を感じます。 や:赤い鼻緒が素足に絡む。 香:藍の浴衣、私も好きです。)

●緑蔭に憩ふ白衣の実習生=ラスカル
◎雪△香=4点
(雪:遠い遠い日の自分に重ねて読みました。 香:これから先が大変そう。)

●ればたらの別な生き方衣更=やんま
○砂△久、し=4点
(し:人生も衣更できたら良いですね。たらればではなくればたらですか?)

●新しき茶箱に詰めて夏来たる=久郎兎
〇メ△喋=3点

●異国一人雑踏をゆく夏衣=しゃが
○清△裕=3点
(清:世界を巡る放浪の旅まるで山頭火の様に。 裕:雑踏の中で結構目立っているかも。)

●更衣ミントを摘んでリモンチェッロ=しゃが
○ま△秋=3点
(ま:爽やかで美味しそうで更衣によく合っています。)

●霧香る五木の新茶届きけり=修一
○ラ△子=3点
(ラ:霧の香りがする新茶、飲んでみたいです。)

●衣更ふ鏡の中に古稀の母=紅椿
◎資△し=3点
(資:鏡の中が良い。いつまでもお元気で。 し:しみじみ母を見る気持ちが伝わります。)

●夏衣箪笥に秘める権利証=始祖鳥
△清、村、遊=3点
(清:良く薄物の箪笥に土地建物などの権利書を入れる事がある。 村:更衣の時に再認識したか。 遊:盗人に見られたらヤバそう。)

●夏衣の中一人だけの学ラン=スライトリ・マッド
○ラ△始=3点
(ラ:うっかりしたのか、それとも頑固者なのか(笑) 始:本当に学ランがあったら。)

●はためける令和の文字や新茶聞く=紅椿
◎虹=3点

●赤土を熱き新茶で観戦す=メゴチ
○五=2点

●更衣まだ靴下は履いてをり=白馬
△ラ、裕=2点
(ラ:些細なことですが、それも一つの発見かもしれません! 裕:あるあるという感じです。)

●更衣よりも先取りクールビズ
○村=2点
(村:現代風俗に納得。)

●串カツの衣外れし鯉のぼり=葱男
△久、遊=2点
(遊:旅の空なのだろうか、空の色まで見えそう。)

●新茶淹るる夫婦湯呑や無風の夜=入鈴
△葱、水=2点
(葱:いつもは夫婦風が荒れていそう! 水:「無風の夜」なんですね。)

●涼しげにくまモン白くま衣替え=喋九厘
○子=2点

●店頭の新茶の幟古茶を買ふ=久郎兎
○遊=2点
(遊:親近感がわきます。)

●常滑の急須ちんまり新茶かな=茶輪子
△ぼ、し=2点
(ぼ:ちんまり味を良くするそうな。 し:常滑焼でいただきました!!)

●女御更衣その大御時こそ我ら=入鈴
○始=2点
(始:不可解な魅力。)

●農薬を使わぬ工夫新茶かな=遊歩
○始=2点
(始:なるほどと思えます。)

●肌色を上から染むる更衣=十志夫
〇メ=2点

●母に菓子新茶を添へて祝ひけり=香久夜
△や、メ=2点
(や:誕生パーテイ孫と曾孫と。)

●水出しの新茶の透ける船の旅=まさこ
○修=2点
(修:船旅をしているような気分なんだ!)

●短夜の葬り(はぶり)黒衣の黒真珠=朱河
△十、遊=2点
(十:黒衣の黒真珠がリアル。 遊:気迫と鬼気迫るような美。)

●伊勢参終えて飲みたる新茶かな=裕
△清=1点
(清:恒例の伊勢参り新茶の香りも一際引き立つ。)

●衣擦れのジューンブライド父こわばる=まさこ
△十=1点
(十:下句が面白いけれど、俗っぽさがやや気になる。)

●衣擦れを遠くに聞きて躍る胸=白馬
△虹=1点

●古茶新茶母の繰り言聞きながら=秋波
△メ=1点

●新茶の香恋ひて絵葉書走り書く=しゃが
△茶=1点
(茶:海老で鯛を釣る方式なのでしょうか。「恋ひて」が理由なのかちょっとわかりづらいですが、共感はできます。)

●知覧嬉野新茶合戦八女星野=喋九厘
△砂=1点

●中山道わがふるさとの新茶かな=遊歩
△喋=1点

●ひととせの急ぎ足なる新茶かな=雪絵
△清=1点
(清:旅の途中で新茶を頂いた様な光景。)

●振り切りし衣笠打法汗は空に=十五
△葱=1点
(葱:分かる人には分かる。)

●宝瓶の備前と新茶まりあーじゆ=スライトリ・マッド
△資=1点


6月4日に虹魚さんから投句がありました。

〆切に遅れたことには大いに同情の余地がありましたが、すでに編集が大幅に進んでいて、作り変えるには大変な作業が必要でしたのでやむなく選外といたしました。

〆切後の投句、選句は編集の手間が大きくずれることになります。できる範囲で再編集を行っていますが、あまりにも大幅な改訂が必要な場合は今回のように、句会に反映されないこともありますので、ご了承ください。


【選外】

●夏衣着こなす古きスタアかな
△葱
(葱:羅の似合う昔の女優といって、枚挙に暇がないが、嵯峨美智子、若尾文子、岩下志麻、山本富士子、藤純子、、、。)

●日の本の日の匂ひ立つ新茶かな
△葱
(葱:「日」の重なりに工夫。)

●短夜や舞台衣装のまま逝きぬ
○葱
(葱:宝塚の香月弘美さんの舞台事故をおもいだしますね、以前の始祖鳥さんのブログ(元・「つぶやき館」)に名リポートがありましたが残念なことに今はブログ自体が削除されています。あまりにも衝撃的な事件でした。 1958年4月の花組公演での出来事、舞台から奈落へのセリに飛び移った彼女のドレスの裾がシャフトに巻き込まれ、体が真っ二つに切断されるという大事故だったそうです。)


B部門入選作〈back number〉

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