*B部門入選作発表*


兼題『季語:金魚』『漢字:地』=全89月投句(入選62句)

【特選】

一席
●掬はれて路面電車に乗る金魚=雪絵


◎砂、遊、紅、智○清、入△資、葱、村、十、ま、裕、し=23点

(遊:ストーリーが見える。シーンが見える。 紅:とても癒されました。金魚の第二の人生に幸あれ。 資:金魚も長旅だ。夏らしい風景。 智:今後の金魚のストーリーが見える。長屋の縁側に吊るされてそう‥ 清:金魚掬いで金魚を沢山取った子どもの笑顔が見える。 葱:ゆらゆらと揺れている様子が愉快! 村:夏らしい景。 十:金魚は乗りたくなかったのだろうけれど(笑) ま: 掬われた金魚の向かう先はどこでしょうか。 裕:金魚が旅する感じですね。 し:路面電車に乗る情景がなんだかおかしい。)


二席
●地方紙の歌壇俳壇夕端居=資料官


◎香○ラ、五、朱、水△葱、十、入、紅、ぼ=16点
(香:香:夕端居、いい言葉ですね。マンションではもう味わえないですが、昔を思い出します。 ラ:何気ない句ですが、とても巧く纏まっています。 朱:手馴れた上手い一句。リズムが良いし、多くを語らずとも静かな夏の夕暮がありますね。 水:じっくりと新聞を読む男性ですね。 葱:ささやかな日常の喜び。 十:たとえローカル紙でも自分の名前を発見すれば嬉しいもので自慢したくなる。 入:青森や那覇市の日曜版を思い出します。 紅:「地方紙」がミソですね。載っている可能性大です。 ぼ:入選確率高し。さあどうだったか? )


三席
●年老いて女優金魚の顔となる=水音

 
◎葱、白、裕○智△茶、ぼ、始=14点
(葱:面白い!派手な化粧にびっくり顔! 桂木夫人??  白:目は相変わらず大きくて。お化粧もして。 裕:面白い。妙に引っ掛かりました。 智:失礼ながら、やすらぎの刻の大空まゆみさんを思い浮かべました。 茶:まさに、動じないけど、臆病な金魚にぴったりかと。 ぼ:「やすらぎの道」のあの人か。面白い。 始:はてそんな女優いたかな、やや無理があるかも)


三席
●とろとろと生きてをります屑金魚=十志夫


◎ぼ○白、秋、し、朱△紅、始、雪=14点
(ぼ:自画像か。なんだか身につまされます。 白:身につまされます。 秋:上五が面白い。掴みどころのない暮らしぶりが金魚に投影されて。 し:とろとろとに共感しました。笑 朱:金魚すくいの金魚は小赤と言うのですが屑金魚とも言うのですか、初めて知りました。 紅:上五が効いています。 始:最近あんまり金魚は見ない、奈良は産地ですが、奈良の方かな。)


【入選】

●蝦夷の夏教科書にない地理歴史=秋波
○砂、葱、水△白、ぼ、し、喋、朱、香=12点
(葱:文字を持たぬアイヌの歴史のことでしょうか? 水:アイヌのこととか?冬は雪に閉ざされていても夏にはそこかしこに見えてくる。 白:蝦夷のことをもっと知りたい。 ぼ:開拓とは、侵略でもある。 し:私も興味あります。 朱:蝦夷の夏を持ってきてからの後半に説得力が生まれた作品。 香:旅して初めて知った?)

> ●肉球に地の熱眼球に青田=スライトリ・マッド
◎入、水○十△遊、香=12点
(入:エメラルドグリーンの目をしたノラちゃんのことでしょう。 水:同じ球でも熱を感じたり色やら風やらを感じたり。 十:猫の視点。肉球、眼球のリフレインが巧み。リズムもいい。 遊:猫の目から見た風景か? 香:おもしろい着眼点。)

●寺多き博多古地図や山笠終はる=雪絵
◎五○紅、香△砂、葱、十、入=11点
(紅:博多の歴史を感じます。 香:やはり、故郷の祭はいいです。 葱「:山笠(やま)終はる」がしみじみと心に。 十:山笠終はる、の季語が効いている。 入:余韻に浸るに古地図とは、粋です。)

●空と地と私の間草いきれ=遊歩
◎子○や、し、修△紅=10点
(や:今年はどんな夏になるやら。 し:草いきれ、難しそうな季語が上手く表現されていると思いました。 紅:面白い発想ですね。)

●地ビールのラベルに郷の偉人たち=葱男
◎ラ○紅△砂、資、五、雪=9点
(ラ:どんな偉人なのかと想像出来る楽しさがあります。 紅:郷土が誇る人達なんですね。)

●流木の木地のま白や雲の峰=まさこ
◎村○子、ぼ△水、雪=9点
(村:色の同一感が気になるが乾ききった木ともくもく成長する雲の取り合せは印象的。 ぼ:イメージが鮮明。 水:流木のマットな白、海の青、空の青そして際立つ雲の輝く白。)

●地獄絵の焼け跡にただ鳳蝶=しゃが
◎秋、ま○白=8点
(秋:京アニの惨劇には言葉もありません。 ま: これは最近の現実の火災現場の絵ととりました。ただ鳳蝶が効いています。 白:被爆地の鳳蝶---。悲しい現実。)

●地を蹴って夕焼雲とハイタッチ=虹魚
◎メ、雪△入、喋=8点
(雪:そんな衝動に駆られる夕焼雲、メルヘンですねー 入:豪快過ぎて何故か△になりましたm(_ _)m)

●金魚売りロバのパン屋の後を追い=始祖鳥
◎朱△資、ラ,子、や=7点
(朱:郷愁の一句。両方とも「音」があるわけでゆっくりな動きと共に心の元風景。 資:昭和30年代の風景,なつかしい。 ラ:ロバのパン屋、懐かしい〜♪ や:集客効果がありそう。)

●向き合へばとぼけた顔の金魚かな=しゃが
○村、裕△ラ、白、修=7点
(村:見ていて時を忘れる。 裕:大きなお世話ですよね。 ラ:作者もまたとぼけた顔のような(笑) 白: 面白い着眼ですね。)

●青芝の足裏ふうわり浮く心地=まさこ
○砂、メ△葱、修=6点
(葱:「初恋や青芝の穂の無重力」という句を詠んだ記憶があるが定かではない。)

●巾着の金魚虚ろな眼して=虹魚
◎始○五△秋=6点
(始:巾着とはやや懐かしい。 秋:少しくたびれた巾着なのでしょうか。着眼が面白いと思います。)

●子の恋を知らぬふりする金魚かな=朱河
○村、香△白、遊=6点
(村:複雑な親の心境と関わりない金魚の取り合せの面白さ。 香:金魚の無表情に託す? 白:本当は金魚も知っている。 遊:女親だろうなぁ〜)

●地引網掛け声引きて夏の浜=メゴチ
◎や○子△香=6点
(や:これが本当の夏です。 香:大きな声が聞こえます。)

●出目金を入れて華やぐアルミ椀=葱男
◎修△入、メ、朱=6点
(修:アルミ椀も水も波立ってピカピカ光っています。 入:アルミの銀色に黒出目金でしょうか、涼しく頂きました。 朱:金魚すくいの一景ですよね、アルミ缶が良い。)

●一人居の眠れぬ夜や金魚の眼=ぼくる
◎清△入、秋、水=6点
(清:家族は泊まりがけで出掛け、詠者が一人金魚に話しかけている佳句。 入:言葉よりも眼差しが欲しい時って有ります。 秋:金魚は眼を開けてるけど寝てるのかな。 水:なんだか不気味で、怖いですよね。)

●紫陽花の毬と地蔵の頬触るる=ラスカル
○虹、ぼ△智=5点
(虹:「毬」が可愛らしい。 ぼ:おお、微笑ましい! 智:鞠と頬が触れるなんて素敵な表現。)

●激辛のメニューの並ぶ金魚かな=紅椿
◎十○喋=5点
(十:真っ赤な唐辛子、ハバネロなどと、金魚の赤を重ねたところがユニーク。攝津幸彦風。)

●頬寄せて更紗和金のビオトープ=まさこ
○資、虹△し=5点
(虹:いわさきちひろの水彩画が浮かぶ。 し:夏らしいオシャレなビオトープを想像しました。)

●路地裏へ誘なはれたる遠花火=紅椿
○資、秋△裕=5点
(資:路地裏から何気なく見える花火の風情のあること。 秋:音だけの花火。何となくうら寂しく蒸し暑い空気感まで伝わります。 裕:都会では多い光景です。)

●蘭鋳や時をゆるりと伝記本=十五
○茶、修△入=5点
(茶:歴史観や時代性を「蘭鋳」「伝記」で取合せたのは秀逸だと思います。 修:蘭鋳との取り合わせがいい。 入:ランチュウって歴史を感じますモン。)

●蟠りなき天地の阿波踊り=五六二三斎
○遊、裕△葱=5点
(遊:爽快な気分になりました〜? 裕:阿波踊りの抜けるような明るさがいいですね。 葱:阿波踊りには、確かに「わだかまり」はない。)

●うつし世を歪んで見せる金魚の眼=清一
○智△虹、喋=4点 (智:金魚鉢のガラスを通してこの世を見ると、歪んで見えるのかもしれない。)

●金魚玉ひるがえる尾に小夜透けて=秋波
◎し△虹=4点
(し:小夜透けてがとても美しいです。)

●金魚鉢待ちくたびれた待合室=資料官
△葱、村、十、水=4点
(葱:金魚鉢を置いてくれているだけ良心的な病院ですね。 村:口語表現があっている。 十:誰しもが経験する実感ですね。 水:「病院は待つのが仕事」と思っていても、、仕方ないのでじっと眺める。)

●地下たび重し十薬のふんぷんと=紅椿
○茶△入、ま=4点
(茶:暑い中の草むしりか、建築現場か。いずれにせよ取合せがよいとおもいました。 入:ふんぷんとという擬態語はあるの? ま:十薬の匂いが立ち込めているなか、地下足袋重しがとてもリアリティがあります。)

●地下で鳴るエレキギターや遠花火=十志夫
○清△村、入=4点
(清:地下ではエレキギター、遠くで花火の音平和な一日。 村:季語は音でないほうがもっと上五中七がいきそう。 入:息子のバンドを聴きに行った四半世紀前がありありと。)

●名人の破れポイにも乗る金魚=智雪
◎資△修=4点
(資:名人の技が目に見えるよう。すばらしい観察)

●夕焼や丸き地球に水平線=ラスカル
◎虹△砂=4点
(虹:奇をてらわずに情景を大きく詠み込んで好感。)

●蟻地獄天国に浮く雲白し=やんま
○十△清=3点
(十:天国と地獄。蟻の視線で見たところが面白い。 清:地獄と天国の対比が良い。)

●金魚飼う玉にフサモと江戸情緒=智雪
◎茶=3点
(茶:「フサモ」をカタカナにしたためメリハリが生まれ、まさに江戸の風情に。)

●死刑台ちらついてゐる金魚鉢=五六二三斎
◎喋=3点

●甚平や地質学者の鋭き眼=白馬
○始△ラ=3点
(始:意味はなんだか不明だが、雰囲気は出ている。 ラ:甚平と学者のミスマッチが面白い。)

●地下街の古本まつり扇風機=十五
○雪△ま=3点
(ま: むっとするような古本の匂いが扇風機の生あたたかい風に乗ってくるようです。)

●吐き出せる己があぶくを食ぶ金魚=葱男
○遊△五=3点
(遊:生きてゐる金魚なり。)

●日盛の上野の山や地獄の門=資料官
〇入△十=3点
(入:地のお題でこれってまいりました。 十:西洋美術館のロダンの作品。地獄と日盛が呼応している。)

●人にみなひとつの生地竹落葉=十五
○ま△朱=3点
(ま:確かにそうでした。竹落ち葉が近すぎず響き合っていると思います。 朱:季語の選択が成功。生地、と言う言葉が少し他にも在るような気がして更に推敲されればと思いました。)

●夕焼けに触れてヨットの地球かな=砂太
○葱△遊=3点
(葱:壮大な冒険と風景。 遊:若大将の歌声が聞こえる。)

●湧き起こる「大地の歌」や大夏野=ぼくる
○ま△虹=3点
(ま:北海道の広々とした夏野では思わずこの歌を歌いだすのが大げさではない気がします。)

●雨粒をパクッと金魚話出す=入鈴
○メ=2点

●生きものの気配に跳ぬる金魚かな=スライトリ・マッド
△五、智=2点
(智:察しの良い金魚。餌が欲しいのか‥)

●金魚死す逢魔刻(オウマガトキ)のさみしさに=朱河
△清、入=2点
(清:可愛がっていた金魚の死、黄昏時に淋しさが募る。 入:言葉一つ一つが強く、この感覚をもう少し俳味に変えるとどうでしょうか?)

?金魚すくい疲れて寝る子の目に涙=秋波
△子、裕=2点
(裕:涙の理由が気になります。)

●腰を振るキャットウォークの金魚たち=水音
○ラ=2点
(ラ:キャットウォークという発想がユニーク。)

●魚屋が金魚売りをり昨日今日=砂太
○始=2点
(始:本当なら面白い、でもまだ見たことはない。)

●少子化のフリマ売らるる金魚鉢=茶輪子
△や、秋=2点
(や:言い値に値切る交渉上手。 秋:今日的な景ですね。)

●地形図の凸や凹やら雲の峰=水音
○喋=2点

●地下鉄の深き階段風死せり=朱河
△清、茶=2点
(清:幾重にもなった都心の地下鉄の無風状態。 茶:長きではなく「深き」が効いてます。)

●日の影の路地に迷うや金魚売り=喋九厘
○や=2点
(や:片影求め路地から路地へ。)

●ビルの窓地球を燃やす大夕焼=香久夜
△メ、水=2点
(水:派手に燃え上がっているかのようなビル。)

●生きものの気配に跳ぬる金魚かな=スライトリ・マッド
△五=1点

●一刻の天下取りかな金魚見る=虹魚
△茶=1点
(茶:確かにそんな気分になります。)

●憂いなく泳ぐ金魚をつかみとり=始祖鳥
△入=1点
(入:つかみとるのは主の手でしょうか?罪悪感あり。) ●炎昼や違ふはどちら地図アプリ=茶輪子
△や=1点
(や:最新版には又も高層ビル群。)

●地上波のチャンネル僅か夏休み=茶輪子
△メ、智=2点
(智:田舎の民宿に行った時の事を思い出しました。)

●地ビールで乾杯したるクラス会=ラスカル
△十=1点 (十:地ビールが田舎のクラス会を彷彿させる。)


●地球から見渡す果てにかぐや姫=喋九厘 △子=1点

●出目金とマジな顔してにらめっこ=メゴチ
△始=1点
(始:その現実があるとは思いにくいが、もしやあるかもと思わせる。)

●白地図に国境ふたつある溽暑=十志夫
△清=1点
(清:国境がふたつ、内戦が続いているアフリカの国であろうか。)


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