*B部門入選作発表*


兼題『季語:泉』『漢字:色』=全84投句(入選60句)

【特選】

一席
●月も星も入れて泉は音立てず=秀子


◎清、十、子、茶、香、メ○葱、朱△水=23点
(清:泉に映る月や星静かにこんこんと湧く泉幻想的な風景が漂う。 香:入れて、の擬人化が凄い。 茶:上五の「月」「星」と複数にしている点が、より静寂を際立たせていると思います。 十:月と星を「映し」でなく「入れて」としたところが巧み。 朱:音立てずの下五が良いですね。 水:確かにこんこんと湧き続ける。 葱:「入れて」が上手いですね!)


二席
●ぎんいろの孤独な海月ばかりなる=朱河


◎し、水、五○秀、や、ラ△入、ス、香=18点
(水:幻想的だけど、コロナ下の人々の様子? し:この海月が自分のことのようで心にささる人は多いと思います。ぎんいろが効いていると思いました。 秀:海月はそれぞれに孤立して群れてるんですね。孤独な海月が銀色だとは、どなたの発想でしょう!! や:誇り高きが己が身上。 ラ:自分の句かと錯覚してしまいました(笑)つくづく共感です! 香:海月が沢山いても孤独を感じる。銀色がいいのでしょう。)


三席
●滝落ちるいつさいの色消ゆるまで=秀子


◎葱、遊○し△紅、雪、喋、香、始、五=14点
(葱:中七はまさに無我の境地か、一気に読み下す一句一章の俳句の真髄でもある。 遊:大自然のエネルギーに迫る気迫。 し:いつさいの色消ゆるまでがとても詩的でいろいろな思いを読み取れる句だと思います。 紅:豪快な滝が見えてきます。 香:相当落差のある滝のようです。)


【入選】

●色褪せし辞書の背表紙花卯木=雪絵
◎や○清、秋、香△智、資、メ、水=13点
(や:親子二代で広辞苑を愛用している。 香:卯の花、沢山落ちてる、あれですね。秋:正統派なつくり。取合せがいいと思う。 清:手垢の染み込んだ辞書の背表紙卯の花の香が窓から入る。 智:季語との取り合わせが良い。 資:花卯木の白との対比が良い。 水:背表紙は色あせるけれども、これは毎年清楚な白い花を咲かせる。)

●泉まで来て乳母車眠りけり=やんま
◎砂、朱○清、智△資、茶=12点
(朱:これは本当に秀句だと思いました。眠りけりの下五が巧み。 清:泉辺が赤ん坊の癒やしの場所よく眠る。 智:好きです。 資:いろいろな光景が想像できて面白い。 茶:赤ちゃんだけでなく、お母さんも一休みという景が、見事に擬人化されています。)

●芍薬の色を残して崩れゆく=水音
◎秀、喋○十、智△ぼ、し=12点
(秀:芍薬の散り際の潔さ。だからこそあの鮮やかな色が鮮明に残るのですね。 十:中7のレトリックが秀逸。 智:姿が見えるよう。 ぼ:中七下五の措辞が上手い。 し:ドラマチックな表現ですね。)

●頂へ力を貰ふ泉かな=五六二三斎
◎ぼ○ま、し△子、茶、紅、ス=11点
(ぼ:登山の喜びが、泉でクローズアップ。 し:素直な泉の句だと思いました。登山をするのでよく分かります。 ま:余計なことは一切言ってないのですが、情景が気持ちよくわいてきます。 茶:素朴な措辞がまた力強く、登山の一歩一歩を踏みしめるようです。 紅:さぁ、あと一頑張り。登山途中の泉の水はさぞや美味しいことでしょう。)

●金雀枝の黄色と暮らす二人かな=十志夫
◎ま○葱、茶、裕△入=10点
(ま:派手さはないが明るい黄色の花が二人の人生に色を添えているのですね。二人かなと言い切ったところが良いですね。 裕:金雀枝を植えたくなりました あえて黄色を言わなくてもいいような。 茶:「黄色と暮らす」の中七が効いていると思いました。 葱:穏やかな老夫婦の和やかな日常が感じられる。)

●黄泉の国見てきたやうな黒揚羽=智雪
○十、修、メ△ぼ、水、遊、朱=10点
(十:黒揚羽のイメージってまさにそんな感じですね。 修:急に現れふっといない蝶。ぼ:黄泉という手があったんだ! 水:黒揚羽には異界から来たような感じがあります。 遊:鬼気迫る幽玄の美。 朱:真夏の大きな黒揚羽って確かに不穏な存在に見えますよね。)

●湧泉の祠に白き五円玉=久郎兎
○茶、雪、入△清、葱、秋、五=10点
(茶:「白」に一票!光の加減でしょうか。神々しさが宿っています。 清:湧き出でる泉の中に月の光に輝く五円玉を見出す。 葱:水質にもよるのでしょう、酸性度の高い湧水なのでしょう。 秋:周囲の静けさ、緑陰などの情景まで浮かびます。素朴な民の信仰心と思いたいのですが、あるいは今風な心霊スポットなのでしょうか。句のきれいさでとりましたが、「色」が入っていないので減点で△です。)

●泉汲む父に珈琲淹れる朝=資料官
◎裕○水、遊△智=8点
(裕:こういうことを父にしたかった。 水:一日が楽しくなりそうな朝ですね。 遊:親子の深い情愛と手間をかける豊かな時間。 智:優しい何故か息子さんと思ったり。)

●媼三人(ミタリ)極彩色のあつぱつぱ=朱河
◎智○ス△茶、雪、修=8点
(智:あっぱっぱで決まり! 雪:圧倒されそうな景色!ですね。 茶:大らかな大先輩方に学ぶことは多く、「あはは」とつい。 修:受容いたします。)

●褐色のタヒチの女ダリア咲く=智雪
○秀、紅△葱、ぼ、雪、し=8点
(秀:ゴーギャンとダリアは似合ってる。 紅:すぐに絵が浮かびました。 葱:ゴーギャンの絵を思い出す、ダリアの黄色がいかにも南国の島の女によく似合う。 ぼ:ゴーギャンの絵か。ダリアが似合う。 し:ゴーギャンの絵を思いました。ダリア合いますね。)

●誰そ彼のうすむらさきへ泉湧く=朱河
○砂、資、喋△ま、メ=8点
(資:誰そ彼のが良いですね。 ま:美しい景です。どんなところなのか行ってみたい。)

●島々を望み枇杷の実色づきぬ=ぼくる
○や、始、五△ラ=7点
(や:旅という漂泊に生きる、芯は淋しい。 ラ:情景が目に浮かび、心がほのぼのとします。)

●梅花藻の泉しづかに泡生まれ=入鈴
○紅、修△や、ま、香=7点
(修:じっと流れを見ているような気がしてくる。 紅:梅花藻はまだ実物を見た事がないのですが、下5が発見ですね。 や:木漏れ日浴びてきらりきらりと。 香:梅花藻、また見に行きたいです。)

●泉湧く生まるる星の無尽蔵=雪絵
◎資△十、ま、遊=6点
(資:夜の泉に写る天の川でしょうか。泉の天文との組み合わせが巧み。 十:湧き水が新しい星の誕生のごとくとは詩的な表現。 遊:自由なイメージと漢字の幸せな出会い。 ま:泉は長い歴史を知っているのですね。)

●かわせみの瑠璃色矢となりひらめけり=秋波
○水、始△子、喋=6点
(水:確かにこんな光景を見ました。)

●行人の眼のなかの泉かな=清一
◎ス○ぼ△喋=6点
(ぼ:一人旅のロマン。)

●護摩行の火の色に染む玉の汗=しゃが
○ぼ、秋△葱、ラ=6点
(ぼ:熱気が伝わってくる臨場感あり。 秋:臨場感。熱気が伝わって来そう。 葱:野球の新井選手が毎年キャンプ入り前に修行する映像を見るが、確かに精神を鍛えられそう! ラ:熱気と迫力が伝わってきます。)

●沢蟹や泉水よりも麗しき=喋九厘
◎久、修=6点
(修:季重なりなんて気にしない。蟹がより生き生きと見えてきた。)

●棄てられしキャベツの芯の真珠色=ラスカル
◎雪○ま△久=6点
(雪:何気ない日常の大きな発見です。しっかりお料理をされているんでしょうね。 ま:よく観察されていて、確かに真珠色ですね。)

●湧泉に身を任せをり鮎の群れ=久郎兎
◎入△十、裕=5点
(十:まさに解禁の景ですね。 裕:産卵に戻ってくる頃ですね、鮎はきれいな湧水が好きと言いますよね。)

●木々騒ぎ蛇の目の色空の色=入鈴
○喋△秀、修=4点
(修:蛇に魅入られてしまいそう。 秀:このままでは、やや3段切れっぽくで、ぶつぶつしてますが発想が好きです。)

●芍薬の陰の血の色女寺=智雪
◎秋△五=4点
(秋:駆け込み寺でしょうか。中七の生々しさでドラマ性が出ました。)

●ドクターカーの黄色眩しき夏に入る=秋波
○雪△秀、ラ=4点
(秀:これは、新幹線のドクターイエローのことですよね。ドクターカーでググると人相手の救急みたいだし、ちょっとそこが曖昧かな。 ラ:「眩しき」に実感がこもっています。)

●鳥どりに教へらるるや泉みち=入鈴
◎始△朱=4点
(朱:ヘンゼルとグレーテルみたい。)

●万緑の中や色無き風渡る=やんま
○香、メ=4点
(香:緑一色の様子が強調されています。)

●紫陽花はいま哀切の色となる=ラスカル
◎紅△葱=4点
(紅:「哀切の色」にやられました。紫陽花が動かないと思います。 葱:「哀切の色」とは!涙した紫陽花の時の思い出がありました。)

●色深き日傘を翳す尼僧かな=清一
○久△や=3点
(や:純白では無い。)

●斧その他晴子の匙も泉湧く=秀子
○朱△十=3点
(十:一読して難解。飯島晴子「泉の底に一本の匙夏了る」を踏まえているのでしょうが、「斧」の意味するところは「イソップ物語」? 朱:佳いですね、飯島晴子へのオマージュですね。)  

●時疫除けの紅色濃ゆき江戸風鈴=まさこ
○ス△資=3点
(資:アマビエの江戸風鈴ですね。江戸川区で作っています。)

●つまと並び洗ふ器や泉湧く=茶輪子
○遊△入=3点
(遊:羨ましい、見習いたい。)

●初夏の豆腐に添へしキムチの色=まさこ
○ラ△遊=3点
(ラ:白と赤の対比が鮮明で、色彩感覚豊かな句。 遊:目に鮮やか、美味しそう。)

●母の日の色香漂ふ古女房=メゴチ
○裕△始=3点
(裕:のろけにも聞こえます。)

●百色の塗り絵保護色の雨蛙=水音
○久△秋=3点
(秋:発想の飛び方が面白い。なかなかマネ出来ないワザです。)

●ぷくぷくとつつつとつつと泉沸く=十志夫
○資△砂=3点
(資:ひらがなのう音が効果的。)

●もんどりを打つて流るる泉かな=五六二三斎
◎ラ=3点
(ラ:もんどりを打つ泉! 泉の句として、類想は一切無いでしょう。)

●我が肩に暗き貌ある泉かな=修一
○砂△や=3点
(や:自画像の顔如何に描がかむ。)

●泉涸る歩きつづけて元の場所=修一
△清、久=2点
(清:夢の中で泉を探し回る様子。)

●泉より岩魚生まれて渓流に=喋九厘
△久、始=2点

●色紙の兜を前にテレトーク=久郎兎
△紅、メ=2点
(紅:それぞれのご家庭の様子が垣間見えて、楽しいそうです。)

●十七才金色の夏始まりぬ=葱男
△秀、智=2点
(秀:17才の夏こそは金色であってほしいですね。例えコロナに翻弄される日々であろうとも。 智:誰もいない海♪)

●泥水を泉と思うわがこころ=始祖鳥
△ス、修=2点
(修:経験ないけど水のないところではと思います。)

●パステル色に膨らんで飛ぶシャボン玉=裕
○子=2点

●翡翠色に梅の煮ゑたり自粛明け=まさこ
○入=2点

●ホテル街背高き薔薇の色競ふ=遊歩
△秋、裕=2点 (裕:そうなんですか?)

●南阿蘇泉辺にある無人駅=資料官
○子=2点

●身のうちの透きとほりゆく泉かな=ラスカル
△清、砂=2点
(清:泉によって洗われる心象風景。)

●山陰のここに幸あり泉あり=ぼくる
○五=2点

●赤土にポピー点々無垢の色=葱男
△裕=1点
(裕:生まれたばかりの仔馬が見えます。)

●泉汲む酒井駒子の少女たち=葱男
△十=1点
(十:固有名詞は鑑賞の解り難さから、読み手によって賛否が二分されますね。)

●泉辺に憩ふキリストの孤愁=ぼくる
△清=1点
(清:パンデミックの中キリストがもの思いに耽りながらも祈る。)

●泉湧くかつて長篠古戦場=紅椿
△茶=1点
(茶:泉は長い歴史を知っているのですね。)

●疎なる人色褪せぬさつきかな=五六二三斎
△修=1点
(修:「さよならだけが人生ならば」カルメンマキなつかしや。)

●唐草の風呂敷の色聖五月=スライトリ・マッド
△葱=1点
(葱:ミスマッチな取り合わせが面白い!)

●君と来てふと振り返る泉かな=始祖鳥
△子=1点

●草笛の奏づふるさとセピア色=雪絵
△砂=1点

●地(ぢ)の人にそつと教はる泉かな=紅椿
△し=1点
(し:秘密めいていて、どんな泉なのか見てみたくなります。)

●富士に雨やがて三島の泉かな=資料官
△十=1点
(十:手堅いベテランの句で、まさに「ザ・俳句」の趣き。)


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