*B部門入選作発表*


兼題『山桜』『漢字:時』=全87投句(入選62句)

【特選】

一席
●クレヨンのぽくんと折れて目借時=ラスカル


◎砂、裕、智、メ、紅、朱○清、ま、喋、ぼ、虹△十、し、茶、ス、葱=33点
(裕:「ぽくん」がいいですね。目借時によく合っている。 朱:「ぽくん」と言うオノマトペの成功だと思います。 紅:「ぽくん」がいいですね〜!季語も付かず離れずだと思います。 智:ぽくんと折れてで頂きました。 清:目借時には無意識にクレヨンを折るときがあるだろう。 ま: ぽくんと折れて、がとても感じが出ています。 十:頻出する句材だが、「ぽくん」にやられた。 し:目借時と絶妙に合っていると思います。ぽくんがいいですね。 ぼ:オノマトペも季語の斡旋もいい。 茶:「ぽくんと」というオノマトペがかわいらしく。蛙にぴったりです。)


二席
●囀りやメキシコ色の皿時計=しゃが


◎十、ラ○香、秋、紅、朱△ぼ、智=16点
(十:「メキシコ色」の措辞が秀逸。 ラ:聴覚と視覚の融合、見事に決まっています。 香:明るいリビングに大きな窓。メキシコ色がいいですね。 紅:こちらも◎にしたかったです。中七が素敵。 秋:にぎやかな絵柄なのでしょうね。 ぼ:音、色、形が巧みに読み込まれている。 智:メキシコ色の皿時計が好き、季語が動くかも。)


三席
●反転のバスは始発に山桜=紅椿


◎雪、遊○十、修、葱△香=13点
(雪:山桜が咲くにふさわしい光景ですね。 遊:単に情景を読んでいるという以上に時代の希望を感じました。 修:十:なるほど、納得の句。 香:山の光景でしょうが、考え方を変えてみなさいっと、言われてるような。)


【入選】

●老いし吾に秘密基地あり山桜=ぼくる
◎葱○久△砂、ま、ラ、雪、裕、メ、遊=12点
(葱:この基地はおそらく山の中ではなくて、「大人の隠れ家」では? ま:そうですか!子供だけではなかったんですね、発見です。 ラ:いつまでも童心を忘れない作者に敬服。 遊:尊敬!!)

●大阿蘇の心一樹の山ざくら=資料官
◎ま、茶○香、ス△十=11点
(茶:「大」と「一」との対比。大きな景の句だと思います。十:大景と熊本県人の気概が伝わってきます。 香:大きく構える阿蘇の山々が見えます。 ま:阿蘇への想いが強く伝わってきました。)

●野仏の頭を撫づる桜影=まさこ
◎子、し○裕、智△清=11点
(し:撫づる桜影が素敵な発想ですね。とても惹かれました。 裕:頭を撫づる というのがいいですね。 智:風に揺れる桜の枝が見えました。 清:野仏のいつもと変わらぬ姿に花弁が舞う。)

●廃線の歪む鉄路や山桜=雪絵
○始、修△久、資、入、ス、メ=9点
(修:長い時間が見える。山桜がやさしい。 資:列車は来なくとも毎年山桜は咲く、そういう風景が心にしみる。)

●山桜 いま・ここ・われ の命かな=ぼくる
◎清○子、喋△雪、秋=9点
(清:時間は存在しないが、「いま・ここ・われ」との鋭利な感覚を山桜に託す。 秋:少し思弁的かとも思いましたが、今の不安な状況の中、自分の気分と呼応しました。)

●北窓を開き時計の針合はす=ラスカル
◎資○十△紅、虹=7点
(資:春になって動き出す、その動作をうまく表現。 十:理屈には合わない二つの行為の一致。春らしい取り合わせ。 紅:景が見えて、納得です。)

●錫杖の音漂はせ山桜=やんま
○し、水△裕、五、遊=7点
(し:錫杖の音を聞いてみたいです。山桜で景色がとても華やかになりますね。 水:山の深さ、静けさをおもいます。 遊:修行。)

●小六の漢字ドリルや目借時=紅椿
◎久△清、十、雪、五=7点
(清:休校で漢字ドリルを手伝う祖父母とにかく眠い。 十:昨今は大人にも難しいのでは?)

●すれ違ふこの世とあの世桜時=智雪
◎香○紅△喋、五=7点
(香:死が身近になってくると実感します。 紅:そんな感じがしますね。季語が動かないと思います。)

●つくし摘む時差出勤の話など=紅椿
○ラ、雪、水△十=7点
(水:人込みを離れて安全な場所で交わす不穏な会話。 ラ:気が滅入る話ですが「つくし摘む」で少し救われます。 十:「時差出勤」の句が二つ並んだが、こちらの突っ放し方に軍配。)

●山腹に光抱くごと山桜=入鈴
◎ぼ○ス△メ、葱=7点
(ぼ:ケレン味のない、気持ちのよい句。)

●天国はあの世にひとつ山桜=葱男
◎虹○入△香=6点
(香:何か安心させられることばです。)

●初蛙柱時計の振り子ゆれ=遊歩
◎修○智△ス=6点
(修:田舎にぽつんと一軒家。 智:ありそうな嘘。)

●花冷や駅は無人の時刻表=朱河
○砂、メ△子、修=6点
(修:白っぽい時刻表と花冷えが通い合う。)

●春眠や時空を超えし獏がゐて=秋波
○砂、し△虹=5点
(し:夢には獏ですね。時空を超えてくるなんて面白い。)

●遠眼鏡遠く近くに山桜=秋波
◎喋○資=5点
(資:とおめがねという古風な言い回しが良い)

●山桜おらぶが如き読経かな=修一
○朱、五△香=5点
(朱:おらぶが如き、で読経の大きな響きと山桜がリンクして景色を大きくしていると思いました。 香:いろんな節回しがありますが、激しいですね。途中で吹き出さないように。)

●木の芽時眉間に皺を寄せる癖=まさこ
○雪△ぼ、秋、水=5点
(ぼ:春愁か、ナイーブな作者を想像。 秋:本当に悩ましい季節です。 水:木の芽時は特にそうなりますよね。)

●末法の世に寂然と山桜=清一
○ぼ、秋△遊=5点
(ぼ:はい、自然にはかないません。 秋:今の世の気分とよく合っていると思います。寂然がいい。 遊:釈迦の教えがコロナに聞くかどうかの瀬戸際?)

●霾ぐもり時差出勤のオフィス街=資料官
◎秋△ま=4点
(秋:今はまさに。季語もいい。 ま:まさにこの春の景ですね。)

●時駈ける少女の髪や春一番=久郎兎
◎始△子=4点

●時疫(トキノエ)の会話行き交ふ目借時=朱河
○ま△茶、入=4点
(ま:時疫トキノエ、初めて知りました。 茶:「時疫」という措辞をしりませんでした。この言い回しが季語にしっくりきました。)

●時の字の由来思ふや花の寺=久郎兎
○資△し、秋=4点
(資:確かに時の字の中に寺がある。 し:どんな由来なんでしょう。花の寺でゆっくり考えたい。)

●時計店にあまたの異音冴返る=ラスカル
◎ス△清=4点
(清:デパートの時計売り場を通るときの様子だろう。)

●漢江(ハンガン)のダムに万朶の山桜=裕
○ラ、茶=4点
(ラ:漢江のダムという具体性がよいと思います。 茶:中国らしい雄大な景に「万朶」を合わせた点にいただきました。)

●一時の夢の後先飛花落花=やんま
◎五△砂=4点

●美山より生れし水音花の時=葱男
◎水△智=4点
(水:美しい 美しすぎる。 智:美山、水音、花、綺麗な取り合わせ。)

●山桜憂き世の国を散りゆけり=朱河
○五、メ=4点

●思い切り鳴らす神鈴朝桜=まさこ
△裕、朱、紅=3点
(紅:先日、思い切り鳴らしてきました。。)

●開花宣言します我が家の山桜=スライトリ・マッド
△十、始、修=3点
(十:ユニークな口語調が効いています。 修:何だか楽しい。口語体のよさ。)

●聞く人もなく時の鐘遅日かな=茶輪子
○虹△ま=3点
(ま:確かに毎日、何とはなしに聞いていたような。巧く表現されましたね。)

●じいちゃんのラテ分け合うて富士桜=しゃが
○始△喋=3点

●時止まるやうにすみれの花の砂糖漬=スライトリ・マッド
○始△ラ=3点
(ラ:食べてみたい!)

●時は今ながれ淀みて花筏=喋九厘
○子△清=3点
(清:花筏が時の淀みの中を流れゆく。)

●春一番時空歪めし風見鶏=やんま
○清△久=3点
(清:パンデミックで歪んだ時の流れの中を風見鶏がいつもと変わらず動く。)

●山桜明るく咲けど淡く見ゆ=香久夜
◎入=3点

●山桜揺るる喋れば喋るほど=虹魚
○遊△ラ=3点
(遊:とても静かな景色になりました。 ラ:山桜も、楽しげな会話に参加したいのでしょう。)

●海を経て能古の島なる山桜=砂太
△資、入=2点
(資:博多湾に浮かぶ山桜。)

●時間割すべて変更さるる春=香久夜
○久=2点

●春泥や骨壷三つ時刻む=香久夜
○遊=2点
(遊:どういうわけか郷土の画家・熊谷守一の絵を思い浮かべました。)

●奉る荒神様に山桜=喋九厘
△始、水=2点
(水:荒神様とはきっと奥様のことですよね。)

●根に足取られとられして山桜=入鈴
○葱=2点

●朦朧と滲む桜や吉野山=智雪
△資、し=2点
(資:雨の日の吉野の桜を上手く表現できている。 し:横山大観の世界ですね。)

●山桜神南備山の暮れかかる=修一
○茶=2点
(茶:「神南備山」の響きが景に歴史を添えているように思いました。) ●山桜けんかの訳は忘れゐし=雪絵
△始、ぼ=2点
(ぼ:そう、自然の力ですね。)

●山桜トロッコ列車がやって来る=資料官
○入=2点

●山桜人波消えて色は濃く=メゴチ
△十、虹=2点
(十:理屈に合わない不条理性がいかも俳句的な把握。)

●時刻表ぽつねんとして春の宿=茶輪子
○裕=2点
(裕:今年は秘湯の宿なんかこんな感じなんでしょうね。)

●鳩時計春曙に鳴き忘れ=清一
△久、朱=2点

●アマビヱの現わる時勢春の雷=しゃが
△修=1点
(修:日本の人魚はじめて知りました。春の雷とぴったりです。)

●近江路にゆかりの武将山桜=茶輪子
△水=1点
(水:近江路には山桜が良く似合う。今阪本あたりが賑わっていますね。)

●海峡に異国の船や山桜=秋波
△智=1点
(智:稲佐山でしょうか‥)

●寒村の正午の時報弥生尽=智雪
△子=1点

●五時に鳴るチャイムの塔やチューリップ=雪絵
△葱=1点

●三味線の音に乗り帰る山桜=五六二三斎
△喋=1点

●時として牙むく地球春嵐=メゴチ
△紅=1点
(紅:まさに今。早い終息を願います。)

●春の闇私が愛に変わる時=遊歩
△砂=1点

●百円バス降り時迷ふ花の昼=水音
△朱=1点
(朱:席題は「山桜」なので厳密には採れないのですか田舎道ののんびりした春昼の景色が詠めていると思いました。)

●臨時のテロップ春昼を壊しけり=十志夫
△茶=1点
(茶:「壊す」という擬人的な言い回しと二段切れがいいと思いました。)


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186号・清記に白馬さんの句が洩れていました。
白馬さん、大変申し訳ありませんでした。
あらためて、ここに白馬さんの投句分を掲載いたします。

●麗らかや時々刻々に変わる空=白馬
(葱:春の空は移り変わりが早いですね、雲が走るように東へ流れていきます。)
●ひとり行く道の果てなる山桜=白馬
(葱:今年は「花見自粛要請」のおかげで、ひとり散歩の花見も多かったようです。)
●牡丹雪時空をよぎる重力波=白馬
(葱:電磁波が地上を飛び交う時代ですが、5Gと言われる周波数の短い電波は人体にも影響があるようです。)

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