*B部門入選作発表*


兼題『卒業』『漢字:声』=全84投句(入選62句)

【特選】

一席
●ジャガイモを茹でて潰して春の声=遊歩


◎し、修○十、や、ス△水、ま、朱、香=16点
(修:サラダになった?自在で新鮮。 し:なんだか楽しそうで、春の声が聞こえてきそうです。 十:そんな日常の繰り返しの中で季節は廻ってくる。 や:日々に季節は忍び寄るなり。 水:春の声 ではない季語があるかも。 ま: いろいろなものに春の声を聞きますが、ジャガイモを料理していて!なんだか良いですね。 香:こちら皮付きで煮っころがし、味の染み具合が難しくヒーヒー言ってました。)


二席
●鉄棒に沖見つめをり卒業子=ぼくる


◎遊、葱○久、ラ、茶△入=13点
(遊:それを見つめる視線は親か教師か、はたまた己自身か。 葱:足を掛けて逆さにぶら下がって沖を見ている、島の丘の上の学校の子を思いました。 茶:この先の将来を「沖」が暗示している。不安と希望が入り混じった心象を上手く俳句にできていると思いました。 や:遙かな未来見つめ回転。 ラ:寺山修司の句「ラグビーの頬傷ほてる海見ては」を想起しました。)


三席
●片恋を呑み込みしまま卒業す=ぼくる


◎清、メ○や△虹、十、秋、始=12点
(清:少年少女期の片恋は誰しも経験済み、離ればなれになる一抹の寂しさ。 十:淡い記憶ですね。別掲の「初恋と気づかぬままに卒業す」の句と対をなす。片や気づかず、こちらは気づいている。 や:あれやこれやと皆夢なり。 秋:ほろ苦い青春。でも時がたてば甘酸っぱい思い出に、もっと年をへればノスタルジーに変わる。類想はありそうな気もしますが、読む年代によって味わいの変わる句のように思います。)


三席
●校長が一番泣いて卒業式=ラスカル

 
◎ま、雪、香○智△入=12点
(ま:ありそうですね!記憶に残る式になりましたね。 香:微笑ましい光景ですね。被災地の学校などは、そうかもしれません。 智:こういう先生は信用できる。)


【入選】

●菜の花や真つ直ぐに立つ卒業子=葱男
◎智○裕、ま、ぼ△虹=10点
(智:菜の花と真っ直ぐが良く合っている。 ま:講堂に緊張気味に立っている姿が浮かびます。まっすぐに進んでほしいですね。 ぼ:田舎の卒業生、真っ直ぐ生きていくんだよ。 裕:卒業子の初々しさが菜の花とよく合っています。)

●卒業す極めしことは玉拾ひ=水音
◎ラ、秋△や、十、ま、茶=10点
(ラ:野球部員の補欠だったのでしょうか。何だか切ないです。 秋:それはそれで大切な熱い時間だった。ある種の自嘲、諦観をこめて。 や:忍耐と言う大切な事。 十:箴言俳句。努力はどこかで報われます♪ ま:極めたことがあると言い切れることが素敵です。 茶:野球部万年補欠といったところでしょうか。「玉拾ひ」さえ極められなかったテニス部の自分として拍手喝采です。)

●マドンナの鼻啜るこゑ卒業歌=葱男
◎資、ぼ○虹、清=10点
(ぼ:憧れのマドンナも普通の女の子だったんだあ。 虹:赤鼻のマドンナ。 清:どこにでもいるマドンナの生徒、その彼女も卒業式では涙に溢れる。)

●声宿す白木蓮のその一弁=茶輪子
◎虹○メ、喋△十、始=9点
(虹:仲間由紀恵のような声。 十:天向く「木蓮」の花弁は、まさに「声宿す」感じ。)

●制服をはみ出す腕よ卒業す=まさこ
◎裕○紅、ス、喋=9点
(裕:制服をはみ出す腕が育ち盛りの証、個人的には「腕や」の方がいいかも。 紅:ずいぶんと大きくなって・・。親ごさんの感慨が伝わります。)

●父の声聞いた気がする春の雷=やんま
○水、修△十、清、葱、ま、メ=9点
(水:春の雷だからこそかな。 十:雷オヤジの記憶でしょうか? 清:春の雷は音感が良いまるで亡き父の声の様だ。 葱:もうお亡くなりになっているのでしょう。 ま:ふっとそういう時がありますね。 修:少しドキッとした感じでしょうか。)

●甘き酒苦き酒知り卒業す=やんま
◎紅○雪、香△白=8点
(紅:大学生の卒業でしょう。青春の日々をお酒で語っているのは、下戸としては大変に羨ましいです。 香:酒で表現しますか! 白:学生時代よさようなら。)

●ヘルパーの声の高らか梅ひらく=雪絵
◎茶○資△水、清、香=8点
(茶:「高らか」へフォーカスを絞った点にいただきました。梅とヘルパーの取り合せもよいと思います。 資:年老いた親の笑顔を切り取ったような句。 水:明るいヘルパーさん。 清:ヘルパーは元気で今日も訪問、梅が咲いたと伝える。 香:ヘルパーさんの元気な声がいいですね。)

●産声やこの日この刻風花す=朱河
○遊、清、資△葱=7点
(遊:命の賛歌!・季語が秀逸。 資:初孫の誕生のその時を美しく記した。 清:産声を上げ母体から出た瞬間風花が舞う光景が浮かぶ。 葱:季語に物語が見える。)

●声失せし友の「不一」の墨麗らか=十志夫
○ま、秋、香=6点
(ま:ご友人への想いと、季語が良いですね。 秋:大病を患った方からの手紙でしょうか。下五から恢復とそれを知った安堵がわかる。うまい仕掛けだと思います。 香:その文字にいろんな意味があるのでしょう。)

●石鹸玉声上げ追う子見守る子=智雪
◎喋△虹、秋、朱=6点
(秋:リズムのよさで、子供らの元気さが伝わります。)

●卒業証書丸まったまま五十年=水音
○虹、紅△智、十=6点
(虹:開いてみる機会はとんとありませんね。 紅:そういえば、私のはどこへ? 智:先日の荷物整理がまさにそれ。 十:卒業証書の意味を考えさせられます。)

●風生忌声美しき人と居て=砂太
○葱、ぼ△雪、朱=6点
(葱:吟行句会の一コマかな? ぼ:きっと心も美しい。)

●用水路の水ごうごうと春の声=スライトリ・マッド
○十、入△裕、葱=6点
(十:雪解水でしょうか。「ごうごうと」のオノマトペがリアル。 裕:用水路の横に草花や虫を感じます。 葱:豊かな雪消水の麓の里でしょうか?)

●甦る木乃伊の声や春の月=しゃが
○水、秋、雪=6点
(水:春の月夜には不思議なことも起こる。 秋:ちょっとドキッの発想でいただき。意味は分かりにくいけど、春の月には怪しい力もあるのかも。)

●何もかも潤むばかりや卒業子=虹魚
◎ス○始=5点

●猫の声鯵の干物をむしる父=まさこ
○遊、入△秋=5点
(遊:何気ない家庭の懐かしく暖かい風景。 秋:景がよく浮かびます。この後どうなる?父親はむしった身をそのまま口に入れる?それとも猫に?なんかユーモラスな句。)

●榛の花てっぺんとりの鳥の声=入鈴
○智△ス、し、修=5点
(智:榛の花初めて知りました。 し:榛の花、垂れ下がって不思議な花ですよね。てっぺんとりが面白い。 修:とても地味なさりげない感じがいいと思いました。)

●桃咲くや千年先の鳥の声=朱河
◎久△遊、ス=5点
(遊:大胆な措辞に驚きました!桃の花が一挙に開いたようです)

●ウィルスの声なき声や月おぼろ=茶輪子
○久△ラ、修=4点
(ラ:タイムリーな句で、実感がこもっています。 修:ウイルスも生きてるんだ。)

●春光と共に聞こゆる樹々の声=虹魚
○メ、し=4点
(し:気持ち良さそうな景色ですね。山行きたい!)

●卒業す部室の壁に名を刻み=葱男
○水△清、メ=4点
(水:みんな覚えがあるに違いない。 清:卒業の証によくやる行為。)

●都府楼やふわりと一人卒業子=砂太
○裕△入、喋=4点
(裕:こんな気持ちになる時ありますよね)

●あなたから卒業します三十路前=秋波
◎白=3点
(白:母親としての踏ん切りでしょうか?)

●歌に知る平和の御魂卒業式=茶輪子
◎始=3点

●義太夫の声の響きや風光る=裕
○ラ△清=3点
(ラ:「風光る」という季語から、義太夫の声の美しさが分かります。 清:義太夫の独特の言い回しが春の陽気を誘う。)

●講堂を震わす校歌卒業す=雪絵
△裕、ぼ、喋=3点
(裕:震わすにはいろんな思いが入っているのでしょうね。 ぼ:昔の男子校だろう、男児かくあるべし。)

●小骨抜く毛抜きの先の春の声=まさこ
◎や=3点
(や:小さな事が我に大事(おおごと)。

●さくらさくら天声人語の憂鬱=資料官
◎十=3点
(十:編集子は何を憂いてゐたのでしょう。政治状況?コロナ?「さくらさくら」との対比が巧み。)

●下の子の母の背を越し卒業す=紅椿
△遊、や、資=3点
(遊:頼もしい喜び。 や:頼もしいとも危なっかしくも。 資:やれやれという気持ちが表れているようだ。)

●卒業歌地上を走る大牟田線=資料官
◎入=3点

●卒業式終へて始まるコンサート=修一
○葱△ラ=3点
(葱:こんな卒業式はいいですね。 ラ:「終へて」から「始まる」という展開が面白い。)

●卒業写真の塗り潰されてゆく記憶=十志夫
○修△資=3点
(修:もう、どんどん忘れていきます。)

●初恋と気づかぬままに卒業す=遊歩
△十、や、香=3点
(十:今にして思えば? 別掲の「片恋を呑み込みしまま卒業す」の句と対をなす。片や気づいている。こちらは気づかぬままに。 香:えー、そうなの? や:女子先生の紅き唇。)

●入り彼岸だみ声で売る鯛焼屋=秋波
△智、雪=2点
(智:物売りはだみ声でなくちゃ。)

●音声に導かれゆく朧かな=紅椿
△久、修=2点
(修:おんじょう、と読みました。)

●佐保姫の声染上ぐる鳰の海=清一
○し=2点
(し:佐保姫の声染上ぐるとはどんな感じなのかしら?イメージが美しいです。)

●卒園の歌も覚えず卒園へ=香久夜
△紅、ぼ=2点
(紅:バタバタと卒園、あの歌も歌えなかったのでしょう。 ぼ:こういう子もいてよい。可愛い。)

●卒業式マスクを外しハイチーズ=スライトリ・マッド
○始=2点

●卒業子に座右の銘を訊かれけり=ラスカル
○朱=2点

●卒業の授与の一礼時空超ゆ=久郎兎
○茶=2点
(茶:参列の保護者の視点でしょうか。感慨深いですね。)

●春動くなり山の声海の声=ぼくる
○紅=2点
(紅:山も海も少しずつ変わっていってるのですね。大きな景です。)

●春の雨音色つきのCコード=智雪
△ラ、し=2点
(ラ:「Cコード」という表現は初見です! し:楽器を弾かないのでCコードよくわからないけど、ロマンチックな感じ。)

●吾子の声待つニ分の一卒業式=修一
△久=1点

●鶯の声木霊する鞍馬山=清一
△裕=1点
(裕:この時期京都はいいですね。)

●閏日に決めし告白震え声=久郎兎
△喋=1点

●オクターブ上の声色春の興=虹魚
△茶=1点
(茶:音域のことをふまえると「声色」は微妙かとも思いましたが、春らしさでいただきました。)

●校庭にいつ声戻る桃の花=香久夜
△紅=1点
(紅:先の見えない不安。)

●声問も廃駅となり幾の春=喋九厘
△ス=1点

●さもなくば声なき声や猫の恋=メゴチ
△久=1点

●下萌や病禍の中の鳥の声=水音
△雪=1点

●白鳩や起立一斉卒業す=朱河
△茶=1点
(茶: 鳥が一斉に飛び立つ景との取り合せ。中七のきびきびとしたリズムがいいと思います。)

●すすり泣く声分け合うて卒業す=十志夫
△遊=1点
(遊:男には苦手なことかもしれない羨ましさ)

●卒業歌レミオロメンで泣く子らや=智雪
△し=1点
(し:卒業歌がレミオロメンですか!すごい!)

●卒業式帰宅途中の蕎麦屋かな=始祖鳥
△ぼ=1点
(ぼ:名残りを惜しんでいる光景が目に浮かぶ。)

●卒業式ひとの書きたる送辞よみ=修一
△智=1点
(智:昨今の政治もそうなんじゃ‥)

●卒業生答辞代表蓮尾君=資料官
△始=1点

●初恋の想ひ出胸に卒業歌=清一
△資=1点

●窓口の声のにこやか春の風邪=紅椿
△水=1点
(水:風邪ならいいよね。)

●夢の世の声ぞと鳥の告ぐる春=砂太
△葱=1点
(葱:今の世相を思います。)

●ロッカーの名札をはづし卒業す=雪絵
△メ=1点


B部門入選作〈back number〉

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