*B部門入選作発表*


兼題『季語:曼殊沙華』『漢字:髭』=全85投句(入選62句)

【特選】

一席
●山里に血の通ふごと彼岸花=秋波


◎ラ、雪、入、葱○智△紅、修、裕、メ、水=19点
(ラ:「血の通ふごと」という比喩が巧み。 入:ドローン空撮のような景と奥深い里への愛情が浮かんできます。 葱:そういう故郷の景色をもう一度取り戻したい!! 雪:見事な喩えだと思いました。 智:血のイメージはあるが、彼岸花の畦道を血管に見立てたのは見事。 紅:中七で、景が見えてきます。 修:緑に目の覚めるような紅だ。 水:俯瞰的に見ると血管のように見えるのでしょうね。)


二席
●口髭とおぼしきものを捨案山子=紅椿


◎香、朱○入、葱△や、秀、雪、ま=14点
(香:やはり、実際に見られたんでしょうね。おもしろいです。 朱:中七の表現が上手い。着眼点も面白いと思いました。 入:生き生きと捨案山子を捉えている。 や: 泪とも見ゆ鳥の糞あり。 秀:俳味たっぷり。 ま:捨てられた案山子にも髭があったのですね、ちょっと寂しい発見ですね。 葱:アート案山子か?)


二席
●彼岸花母に報告したき事=香久夜


◎大、ぼ、紅○資、清△秋=14点
(ぼ:さらりと素直に表現しているが、思いは深い。 紅:「彼岸花」の斡旋が成功していると思います。ドラマ性のある、心に響くお句です。 資:一本の彼岸花のある墓前で報告でしょうか。 清:墓の横に咲く彼岸花、若くして亡くなった母に報告する詠者。 秋:どんな事?)


【入選】

●反る蕊の先まで力曼殊沙華=秀子
◎十○ス、修△智、し、入、秋=11点
(十:なるほど、納得させられます。 修:たしかにピンピン。力が秀逸。 智:曼珠沙華の力強さを詠んだ。 し:あの細い蕊の先までピンとしている様子が分かります。 入:あの跳ねっかえりは蕊の効果だったんですね。 秋:作者の監察眼!)

●校正記号朱く撥ねたり曼珠沙華=十志夫
◎水○茶、入△香、し、喋=10点
(水:視覚的に面白い。 茶:花弁の姿が確かに。発見の妙だと思います。 入:昭和の校正は赤鉛筆でした。全く同じ朱赤。 香:そこまで発想を飛ばす!? し:校正記号の朱と曼珠沙華、面白い取り合わせですね。でも分かります。)

●曼珠沙華の犇めいてゐる古戦場=ラスカル
◎し○遊、裕△ぼ、香、雪=10点
(し:戦場に犇めいていた死者が曼珠沙華になったようですね。犇めいてゐるが凄みがあります。 裕:死に花ともいわれる花と古戦場、戦死した魂が彷徨っているかも? ぼ:死者の怨念かも。)

●虫の音やぴくぴく動く猫の髭=清一
○や、秀、し、雪△メ=9点
(や:余白に秋の声の漂う。 秀:衒いのないいい句だと思います。 し:虫の音と猫の髭がとてもよく響き合っていて、可愛い。猫も虫の音に反応するのかな?)

●群れ咲きてどれもひとりや曼珠沙華=ぼくる
◎資、メ○し△秀=9点
(資:曼珠沙華もそうですが、人の世もしかり。 し:人間もこんな感じで、深い句ですね〜。 秀:「曼珠沙華一塊りの孤独かな」と似てますが、私はこちらを頂きました。ただ「どれもひとり」は推敲の余地があると思ってしまいました。)

●姥捨の山まで白き曼珠沙華=五六二三斎
◎裕○大、喋△ま=8点
(裕:白い曼殊沙華が哀れに美しい世界です。ま:白い花がずっと続いている景はさぞ美しいでしょうね。美しいだけに悲しい。)

●地底には戦の記憶曼殊沙華=秀子
○香、朱△十、智、入、葱=8点
(朱:よくある曼珠沙華の発想だと思いますしよく似た句が今回も出てますが「地底には」と一般的にせず「産土(うぶすな)は」とかの方が引寄せて成り立つような気もします。 十:「地底より落ち武者の声曼珠沙華」とどちらにするか迷いました。 智:あのおどろおどろしい感じは戦の記憶なのか‥ 入:古戦場の景が浮かびます。 葱:いかにも!)

●貧乏神の髭湿らすや温め酒=しゃが
◎遊○ぼ、朱△入=8点
(ぼ:発想が面白い、想像句なのにリアルな感じあり。 朱:諧謔味があって面白いです。 入:先日鎌倉を舞台にした貧乏神(一泯?男優さん))

●舗装路はここでおしまい曼珠沙華¬=水音
○十、雪、葱△久、紅=8点
(十:此処から先は「死出の道」という感じですね。 葱:なぜか「やすらぎの郷」を思い出しました。 紅:はっきりと絵が見えます。)

●馬肥ゆる髭伸ぶる吾のややこしさ=入鈴
◎久○香△喋、水=7点
(香:老年に差し掛かる男の憂鬱? 水:ほんのり自身への苛立ちが。)

●髭伸ばし砂漠の国に咳ひとつ=裕
◎秀○紅△ラ、遊=7点
(秀:これ大好きです。もう若くはない一人の男が見えます。 紅:季語が冬で、ちょっと気が早いかなと思いますが、この雰囲気、とても好きです。 ラ:砂漠の「大」と、咳の「小」の対比が鮮明。でも「咳」は冬の季語です。)

●柿簾くぐりて髭の大男=秀子
◎ス○遊△大=6点

●子規の忌に萌やしの髭根むしる妻=大
◎秋○喋△秀=6点
(秋:ささやかだが何気ない日常の有難さ。子規も病床にあって律の立ち働く姿を目で追っていたんだろうか。 秀:「子規の忌に」の「に」が違ってたら、私的には特選級。この「に」の使い方はどうしても、説明になってしまうと残念でした。)

●長き夜に髭の遺影に問ひかける=久郎兎
◎清○大△や=6点
(清:亡くなった父上に対する愛着の念だろうか、夜長だからこそ。や:父の叱咤の声突き刺さる。)

●似顔絵の口髭ぴんと敬老日=紅椿
○ラ、メ△ス、五=6点
(ラ:「口髭ぴんと」に敬意が感じられます。)

●曼珠沙華大悲の風に身を委ね=清一
◎五○子△修=6点
(修:うーん仏様はありがたい。)

●ごましほの髭整へる夜長かな=雪絵
○五△ラ、遊、裕=5点
(ラ:「ごましほの」がリアルです。)

●廃れゆく小さき集ひや曼珠沙華=十志夫
◎喋○メ=5点

●父に次ぐ馬上の風や曼珠沙華=香久夜
◎ま○久=5点
(ま:すがすがしい風の広い原をお父様と二人で走った時の想いが強く感じられます。曼殊沙華が印象的ですね。)

●髭ぜんまい秋の正午を刻みをり¬=スライトリ・マッド
◎茶○ま=5点
(茶:兼題からぜんまいの髭を思いつかれたのは、自分ではなかなか。 ま:しっとりと心地よいお句です。中七がぴったりですね。ぜんまいがないと時は刻まないのですね。)

●髭ダンス真似し昭和や秋夕焼¬=茶輪子
◎や△紅、雪=5点
(や:ただ手放しに夜を楽しむ。 紅:髭ダンス、今でも踊れますよ。)

●髯面のセピアの写真秋燈=やんま
○久、資△メ=5点
(資:仏間にある亡父の写真をふと見上げた。)

●人まばら墓地に今年も彼岸花=メゴチ
◎子○修=5点
(修:無理のない表現がすばらしい。)

●曼殊沙華ちょうど程よき認知症=遊歩
◎智△久、五=5点
(智:中七下五素晴らしい。)

●曼珠沙華百万人と行く浄土=五六二三斎
○紅、智△入=5点
(紅:今年ならではのお句。 智:成る程そんな感じ。 入:彼岸花にこういうイメージあります。)

●十分に起立してをり曼珠沙華=雪絵
○や、清=4点
(や:前へ習え!の声高らかに。 清:どれも真っ直ぐに立っている曼珠沙華に対する挨拶句。)

●初恋はをなご先生曼珠沙華=やんま
△大、十、ス、修=4点
(十:あるある俳句のひとつ。そんな先生も、「もはや喜寿か傘寿」と言ったら身もふたもない(笑) 修:拓郎の夏休みの世界。)

●ハンサムと言はれるをんな曼殊沙華=秋波
○ま△茶、久=4点
(ま:曼殊沙華がそのハンサムウーマンを表していますね。 茶:ユニセックスな彼岸花との取り合せとしていいなと思いました。)

●曼珠沙華五百羅漢の笑ひ顔=資料官
○子△や、朱=4点
(や:笑い皺など目尻飾ざれる。 朱:既視感はある取合せですが…頂きました。)

●曼殊沙華休館中の能楽堂=裕
◎修△清=4点
(修:対照の美の発見。 清:コロナ禍で休館中の能楽堂、早く再開して欲しい思いの詠者。)

●曼殊沙華われ男根を持ちにけり=遊歩
○秀△大、喋=4点
(秀:ちょっとぎょっとしましたが、これは、いやらしくない、清々しいです。)

●曼珠沙華一塊りの孤独かな=智雪
○十△ぼ、清=4点
(十:言われてみれば、確かにそんな感じがします。 ぼ:確かにそういう雰囲気あり。 清:野に咲くぽつんと一本の曼珠沙華、孤独を感じさせた。)

●空虚さを埋める刺青や狐花=しゃが
○秋△十=3点
(秋:取合わせが面白い。 十:観念句ですが、入れ墨と曼珠沙華があっている。)

●黒猫の髭はお守り稲光=水音
△子、ス、ま=3点
(ま:そういわれれば、なるほど!と思えます。)

●数独のこんがらがつて曼珠沙華=雪絵
○水△香=3点
(水:感覚的にこの取り合わせはわかります。 香:そう、ぐちゃぐちゃになって。)

●地底より落ち武者の声曼珠沙華=ラスカル
○五△秋=3点
(秋:血のように紅い花からの連想でしょうか。)

●止まり木の髭の横貌夜半の秋=智雪
○ぼ△資=3点
(ぼ:映画のシーンみたいな、ムードあり。)

●猫じゃらし七変化するダリの髭=しゃが
△子、五、智=3点
(智:ダリの髭は思いつかなかった‥)

●もやしの髭残さず取りし秋彼岸=香久夜
○ラ△入=3点
(ラ:几帳面な性格の方なのでしょう。 入:例年より準備に余裕のあるお彼岸だったのでしょう、気持ちの良いお句です。)

●九月尽シガーの匂ふ無精髭=朱河
△十、茶=2点
(十:カウンターバーの一角が似合いそう。 茶:葉巻ではなく「シガー」としたところが、無頼なイメージによりつながるように思います。)

●口髭の尖りて文化の日なりけり=十志夫
△朱、葱=2点
(葱:最近、そんな形の髭を見ません。 朱:口髭が尖る…だけでは少し物足りないものを感じるのですが推敲されてほしいなと思う句です。)

●ずぶ濡れの傘の向かうの曼殊沙華=まさこ
○裕=2点
(裕:傘立てにたった今到着した人の傘が、その向こうに真っ赤な曼殊沙華、絵になります。)

●だらり帯ゆらゆら舞ふや曼珠沙華=大
△裕、清=2点 (清:赤い曼珠沙華が舞妓の様に思うとの奇抜な表現。)



●抽斗の奥まで燃やす曼珠沙華=茶輪子
○水=2点
(水:良く分からないけど心に何かしこりがある。)

●ひつぱり抜く藷の髭根や子らの声=まさこ
○茶=2点
(茶:小学校の頃、学校の菜園で芋採りをして、揚げたてを食べるという、ただそれだけで一日の授業とした担任先生を思い出しました。ああいう教育を取り戻さないと。)

●火祭りや煩悩焦がす曼珠沙華=大
△子、十=2点
(十:炎と花の赤が呼応している。)

●ほの昏き横穴墓群曼珠沙華=水音
○秋=2点
(秋:ほの暗い墳墓群と日を浴びて咲き誇る曼珠沙華。ともに彼の世を意識させるトーンの中での明と暗、生と死の対比が見事です。) ●曼殊沙華のらは野良でも生きたしと=入鈴
○ス=2点

●顎ひげの白きいつぽん秋湿り=茶輪子
△資=1点

●唐国にあるてふ青の曼珠沙華=スライトリ・マッド
△し=1点
(し:青の曼珠沙華すごい。とても興味をもったので調べたらこのようなのがありました。”青い彼岸花と位置づけられている中国原産の花は『リコリス・スプリンゲラー』という名前の花です。 和名はムラサキキツネノカミソリ(紫狐の剃刀)です。” 実際はどうであれ、興味をそそられる句ですね。)

●綺麗になつた教へ子や狐花=清一
△葱=1点
(葱:教師の特権ですね!)

●さみどりの茎はすべすべ曼珠沙華=修一
△ラ=1点
(ラ:花でなく、茎に着目した点がユニーク。)

●蟷螂の首を傾げる無精髭=五六二三斎 △清=1点 (清:かまきりにも白い髭の様なものがついているが、かまきりのような顔をした人を描写。)

●髭面に惚れし山頂秋高し=ぼくる
△し=1点
(し:これホントにあるある!!山で輝く男もいる!笑)

●マスク下伸び放題の髭の秋¬=喋九厘
△入=1点
(入:コロナならではの、後に思い出となりますように。)

●まんじゆしやげ里山までは一直線¬=紅椿
△遊=1点

●曼珠沙華終(つい)のくれなゐ賜りぬ=朱河
△資=1点

●曼殊沙華約束反古にされにけり=裕
△水=1点
(水:釈然としない思いを抱えている。)

●虫の夜の女に髭を擦りつける=葱男
△茶=1点
(茶:春とは違う、ウェットな秋の交わり。どこに擦り付けようかな(笑))

●名月や髭のポアロの脳細胞=修一
△紅=1点
(紅:口髭と言えば、ポアロですよね!)

●山近き秩父の棚田曼珠沙華=資料官
△ぼ=1点
(ぼ:兜太の句へのオマージュ。昨今はヘソ出している子もいまい。)


B部門入選作〈back number〉

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