*B部門入選作発表*


兼題『季語:七竈』『漢字:史』=全88投句(入選58句)

【特選】

一席
●昭和史の中ほどに生れ柿を干す=雪絵


◎秀、砂、茶○十、葱、紅、入△ス、久、香=20点
(秀子:季語の付け方が素晴らしいと思いました。 茶:「中ほど」は事実そのままなのでしょうが、「柿を干す」世代としては、そこが分かれ目のように。 十:「昭和史の中ほど」という措辞が巧い。 葱男:自分の家の軒先に吊す干し柿がいかにも昭和(^^) 香:我々はちょうど昭和の中程ですね。 紅:しみじみとしてしまいました。)


二席
●道なりにゆけば分校ななかまど=ラスカル


◎や、資○智、久△十、子、雪、入、喋=15点
(や:少子化時代の今も分校ありやなしや。 資:北国の分校の風景を想像しました。おそらく今は廃校になっているのでしょうか。 智:懐かしい景色。 十:鄙の景がうまく出ている。)


三席
●木の実降るこつんと歴史資料館=秀子


◎ま、遊○智、雪△朱、ス、香=13点
(ま:リズムが良く、明るく、童話の世界のようで、行ってみたくなりました。 遊:この句ほど擬音が響いている句はないと思う。 雪:まさにそんなところにありますね。 智:歴史資料館の古びた建物が見えて来る。 香:言葉の音の流れでいただきました! 朱:言葉のリズムが良いし寂しく広々とした歴史資料館の景色が見えます。)


三席
●凡庸な自分史だこと天高し=やんま


◎紅○ぼ、遊、秋、雪△十、秀=13点
(紅:穏やかな日々を過ごされてきたのでしょうね。季語から満足感が伝わります。まぶしいお句です。 ぼ:あっけらかんとして、いとおかし。 遊:まるで私が作ったような爽快感w 十:「だこと」にやられた。 雪:「天高し」がすべてを物語っているように思えました。 秋:抜けるような青空を見ながら、足元に目を落としちっぽけな自分を自嘲気味に顧みる。上を見ればきりがない。共感の句。 秀子:自分を突き放して詠むことはとても大事な姿勢だと思っています。ただ、櫂未知子の語り口がどうしても浮かんでしまう。「経験の多さうな白靴だこと」。)


【入選】

●月明や谷に貼りつく七竈=秋波
○ま、ラ、喋△十、智、茶、入=10点
(ま:貼りつくが、佳い表現でひかれました。 ラ:「谷に貼りつく」という表現が巧み。 十:山間の景がよく見えます。 茶:景が大きくてよく見えます。いい風情の日本画ですね。 智:中七谷に貼りつくで頂いたが、昼の景色の方が良いかも‥)

●くちずさぶ北大寮歌ななかまど=資料官
◎ス○紅△十、葱、秋、雪=9点
(紅:季語との距離がちょうど良いと思いました。 十:恵迪寮ですね。季語が効いている。窓から雪上へのダイビングする行事も有名。 秋:北海道で見たななかまどの紅葉はたしかに綺麗でした。 葱男:古山祐一とちゃうよね(^^))

●衰えし指にマニキュアななかまど=秀子
◎雪○ス、水△ぼ=8点
(雪:意表を突く面白い取り合わせです。 水:赤い色が元気の素ですね。 ぼ:俳諧味あり。ちょっぴりペーソスも。)

●ななかまど坂の小樽の多喜二の碑=資料官
○清、ぼ、朱△秀、紅=8点
(清一:小林多喜二の蟹工船を思い浮かべさせる句だ。 ぼ:多喜二の熱い血を七竈が体現しているよう。秀子:旅の思い出でしょうか。 紅:声に出して読むと、心地よい。ちょっと演歌ぽくて好みです。)

●物置の閂固しななかまど=まさこ
○秋、ス△遊、裕、資、修=8点
(秋:農家の古びた物置(納屋?)を連想しました。季語との取合せがいいと思いました。 遊:閂が効いていますよね。 裕:長く締めっぱなしの物置の横にななかまどが育っていたという光景。 資:冬支度の道具がある物置。半年振りに取り出そうとしているのですね。)

●アイヌの地にしたたる真紅ナナカマド=ぼくる
◎十、葱△ラ=7点
(十:「したたる真紅」という措辞が血の歴史をも髣髴させる。 葱男:アイヌと征夷大将軍のホントのところをよく知りたいです。  ラ:「したたる真紅」から、流血を思い浮かべました。)

●郷土史に母の父の名むかご飯=十志夫
○茶、香△ラ、資、久=7点
(茶:祖父をあえて「母の父」とした点が、かえって印象的に。季語もよいと思います。 ラ:とても誇らしいことですね。 香:誇らしいですね。むかご飯と言うのが、また、地味でありながら、今では贅沢でしょう。)

●郷土史の講師暮秋の石仏=遊歩
○清、裕△白、砂、茶=7点
(清一:詠者の祖父は郷士だったのだろう。零余子飯と合っている。 裕:臼杵の石仏を思い出しました。 白馬:郷土史と石仏の取り合わせが良いですね。 漢語ばかりで固いイメージですが、それゆえに頑なな「歴史家」の人柄が感ぜられます。)

●新月や歴史は夜に謀らるる=葱男
◎水○し、朱=7点
(水:なるほど。 し:説得力あります。 朱:意味深な世界観を端的に詠んでいて面白い。)

●すれ違ひに山の挨拶ななかまど=雪絵
○や、砂△ま、朱、葱=7点
(や:山歩きの挨拶はエチケット。 ま:きもちよい山のマナーがななかまどで一層気持ちよく感じられます。  葱男:気持ちいいですよね! 朱:ここはリズムも考えて「すれ違ふ山の挨拶」で良いのではないかなと思いましたが。)

●うそ寒や開拓史とは侵略史=ぼくる
○修△十、し、秋、久=6点
(十:言われてみれば、確かにそういう側面が。 秋:観念的な句ですが、今の世の中を思いいただきました。今世界に求められるのは、互いの立場を替えて考える想像力だと思う。 し:確かにそうですね。)

●涸沢を一気に目指す七竈=五六二三斎
◎智△や、葱、水=6点
(智:涸沢を一気に目指すで文句なく特選。 水:登山の途中のナナカマド。一瞬疲れを忘れる。 葱男:臨場感があります。 や:この季節はハイキングに最適。)

●吊るしたる鹿を解体ななかまど=修一
○秀、遊△葱、ス=6点
(秀子:上5中7のリアルな描写をななかまどの赤はしっかり受け止めています。 遊:豪快!! 葱男:迫力あるなあーW(`0`)W)

●根の深いいじめの歴史とろろ汁=遊歩
○久、修△ま、水=6点
(ま:いじめはいつの時代もなくなりませんね。とろろ汁が効いています。 水:深そう、、)

●湯の神を祀る温泉ななかまど=水音
◎し△子、遊、修=6点
(し:ななかまどに良く合いますね。登山しないと入れない秘境温泉をイメージしました。 遊:あったかそう〜〜〜。)

●枯蓮史跡の風にあるがまま=まさこ
○資△し、茶、葱=5点
(資:史跡の中の枯れた蓮の葉は風情があります。 し:枯蓮が史跡の風景に合っていますね。 茶:中七がいいですね。枯蓮の佇まいにしっくりきました。 葱男:中七にグッときました。)

●自分史の最終ページましら酒=葱男
◎裕△十、清=5点
(裕:最終ページが「ましら酒」が面白い。猿になっちゃう? 十:「自分史」の最終ページとは、シュールなテーマ。「猿酒」も効いている。 清一:最晩年を迎えているのだろうか。猿酒を飲みながらのちょっと淋しい気分。)

●十三夜バリトン凄む歴史劇=しゃが
◎朱△葱、雪=5点
(朱:バリトンが凄む…と言う中七が上手い。具体的でドラマチックな一句に仕上がってると思いました。 葱男:バリトンが凄んだら迫力あるでしょうね!)

●世界史の授業抜け出す穴惑=朱河 
◎ぼ○水=5点
(ぼ:世界史は権力史でもある、アイロニーが効いていて秀逸。 水:やっぱり抜け出すのは世界史の時間。)

●ななかまどいぶりがつことラオホビア=スライトリ・マッド
○ま、喋△ぼ=5点
(ま:ビールなのですね、深い味わいのビールといぶりがっこそれぞれ美味しそうですね。 ぼ:何とも贅沢な、お相伴にあずかりたい。(笑))

●ななかまど団地の朝は立ち話=水音 
○や、資△十=5点
(や:ゴミ捨て外交で盛り上がる。 十:なるほど。言い得て妙。 資:そろそろ冬支度の相談か。)

●残る蚊の微かに触れし史料館=清一
◎秋○し=5点
(秋:残る蚊、史料館、お膳立てとして上手くはまってると思います。中七が、弱った蚊や少し薄暗い館内の空気感を伝えて巧み。 し:寂れた史料館の雰囲気をイメージしました。)

●日時計は青銅の色ななかまど=ラスカル
○秀△や、朱、水=5点
(秀子:青銅の色と赤はよく似合っています。 や:芸術の秋来たる。 朱:大きな公園の古い日時計がとても愛おしい景色の中に在るんだなと感じる一句。 水:綺麗な色が想像できます。)

●眦に宿るわが史や金木犀=茶輪子
◎喋○ラ=5点
(ラ:「眦に宿る」という措辞に説得力があります。

●実石榴や父には父の歴史あり=裕
◎入△清、資=5点
(清一:石榴にも色々な形があるようにそれぞれの人生がある。 資:頑固な亡父と実柘榴の組み合わせが良い。)

●山影の迫る湖ななかまど=紅椿
○十、裕△メ=5点
(十:秋の暮とは言わずにその雰囲気を切り取っている。写生句の見本のような句。 裕:みずうみではよくある景ですが、落ち着きます。)

●忘るまじアイヌの哀史七竈=智雪
◎ラ△ぼ、葱=5点
(ラ:「忘るまじ」から、哀切の念が伝わってきます。 ぼ:共感しきりです。 葱男:句の内容にとても共感しましたが、上五の文法、合ってるのかな?)

●語られぬ史実携へ後の月=五六二三斎
○メ△遊、紅=4点
(遊:かたられなかった史実の方が多いんでしょうねぇ〜。 紅:「月はなんでも知っている」ですね。季語がいいです。)

●自分史の最終章を草の花=紅椿
◎始△智=4点
(智:最後まで市井の人。)

●女性史に合掌土偶おぼろ月=水音
○子、葱=4点
(葱:「縄文のビーナス」や「縄文の女神」が目に浮かびます。)

●全山を焼き尽くすかに七竈=智雪
◎白△喋=4点
(白:白馬:こんな光景に出会いたいです。)

●目瞑れば歴史の溝へ木の実落つ=十志夫
◎香△清=4点
(香:中七から下五への流れがすごいです。 清一:この場合の歴史は自分史のことだろうか。)

●行く秋や訛憎めぬ郷土史家=秋波
△清、茶、メ、香=4点
(清一:郷土史家だからこそ許されるのだろう。 茶:「訛憎めぬ」ではなく方言のフレーズにした方が面白いとも。題材がいいですね。 香:一途なおじさんが思い浮かびます。)

●改札を出れば古里ななかまど=十志夫
○入△秀=3点
(秀子:よくわかります)

●自分史の起承転結夜ぞ長し=資料官
○白○メ=3点
(白馬:秋の夜長にいろいろ想うこと多し。)

●真実と史実のはざま鵙猛る=紅椿
○朱△砂=3点
(朱:「鵙猛る」が良い。)

●大宰府の史跡巡りて秋時雨=香久夜
◎子=3点

●ななかまど里の鐘鳴るところまで=朱河 
◎久=3点

●ナナカマド三和土でじゃれる子猫たち=白馬
◎修=3点
(修:無邪気な子猫との取り合わせがユニーク。)

●胸の奥の火種大切ななかまど=秀子
△十、や、砂=3点
(十:幾つになっても恋ごころは抱き続けたい。 や:青春の残滓が燃えている。)

●八十路かな自分史綴る月の宿=ぼくる
◎清=3点
(清一:誰しもやがて生きていれば八十路となる染みゞとした佳句。)

●夕さりて赤い駄菓子屋ななかまど=朱河
△子、喋、メ=3点

●葉脈の夕陽に透けてナナカマド=やんま
◎メ=3点

●追ひつめらるる猫の跳躍七竈=入鈴
△裕、修=2点
(裕:掃いても掃いても積もる落ち葉を一生懸命掃くお坊さんが浮かびます)

●落人の姫の遺髪やななかまど=雪絵
△十、ラ=2点
(十:何やら歴史的な背景の存在を思わせて、ドラマチックな句。 ラ:「姫の遺髪」が切ないです。)

●風騒ぎ車窓を埋めるナナカマド=久郎兎
○子=2点

●神無月日本国史を読み返す=裕
○始=2点

●口開けて見る大空のナナカマド=やんま
○裕=2点
(裕:ななかまどは背が高いので、空と一緒になる構図が多いようですね)

●颯爽の言葉の響きナナカマド=久郎兎
○十=2点
(十:「颯爽」の言葉の響きという把握が新鮮。)

●七竈分水嶺を分かたずに=智雪
○香=2点
(香:分水嶺を調べました。どちらにも七竃が?)

●日の鳥のけふの食事はななかまど=修一
○始=2点

●ライチョウの歩みはのろし七竈=秋波
△ま、し=2点
(ま:ライチョウの黒っぽい色とななかまどが鮮やかで、ゆっくり歩く姿が目に浮かびます。 し:ライチョウを見てみたい!!歩みは素早いのかと思っていました。)

●イケメンも美女も素敵さナナカマド=遊歩
△始=1点

●谷川のせせらぎ聞こゆななかまど=裕
△始=1点

●本物の一次史料や冬隣=白馬
△入=1点

●史ちゃんへお元気ですか秋の花=喋九厘
△葱=1点
(葱男:史ちゃんって、リアル(^^))

●光秀の史実わずかに草の花=香久夜
△紅=1点
(紅:大河で、色々な光秀を見ましたが、季語から、「秀吉」の時の村上弘明さんを思いました。)

●モノクロの写真カラーにな丶かまど=スライトリ・マッド
△智=1点
(智:七竈だけ赤く細工されたモノクロ写真、強烈な赤。)

●歴史こそ基本と教へ秋の月=砂太
△秋=1点
(秋:その通りと納得しいただきました。)


B部門入選作〈back number〉

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