*無法投区/雁来月

〜銀巴里の余韻を鳴くやちっち蝉〜


*62歳になって何故だか生け花を始めてしまいました=久郎兎

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*宗匠 急襲!=葱男

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ギフトショーの翌日、仕事の打合せがキャンセルになったのでアポなしで宗匠のご自宅に押しかける。
持参した寿司と日本酒でのっけから俳句の話。
今月の丘ふみのノミネート句を見せて、酔いに任せて選句していただいた。
私はぎゃくに宗匠の「めじろ遊俳クラブ」の今月のゲラ原稿を読ませてもらい、それぞれに気になった句についてあれやこれやと議論をする。
それがめっちゃ楽しいのだ。

「葱男さんの句はいつも情に流され過ぎている、七割八割言うところを五割六割にしなきゃだめ」
「自分が好きな句ばかりとってちゃダメ、キライな句を取りなさい。苦手なところに踏み込んでいかないと句柄は広がらない」
「オリジナリティもチャレンジもない俳句なんて、いくら良くても作る必要はない、なぜなら俳句は文学であって、習い事ではないんだから。」

などなど、本当に極端な宗匠である。
いくら酒が入ってるとはいえ、こと俳句のことになると真剣勝負の顔つきに変わって、いくどもいくども自分の選句に目を落として、
「よし、だいたい間違ってない、これでよし、です。」
と手渡してくれた清記表を見ると、驚いたことに天位句4句のうちの2句が俳句経験のない、若いゲストさんの句でした。
さすがにポエジーだけに溺れることなく、その向こうにあるオリジナリティとチャレンジだけををこの人は見つめているのである。

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*基礎生物学雑感=五六二三斎

ハイジャン男は、明日、基礎生物学の試験を行う。

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問題は、予告通りの五者択一問題だ。学生諸君に、早く管理栄養士の国家試験の方式に慣れてほしいからだ。そして、その問題の解き方だが、間違いを正確に指摘し、解説を加えるまでになってほしいと思っている。

例えば、一例を挙げよう。

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問1 遺伝暗号表を見ると、同じ縦の列、特にUUUで始まる列には、同じ性質のアミノ酸が並んでいる。

これは、正しい。UUUはフェニルアラニンというアミノ酸を選んでくる。UUAになるとロイシンになる。二つのアミノ酸の性質はさほど変わらないのだ。

要するに、遺伝暗号の3文字目の塩基が何に変わっても、選んでくるアミノ酸が側鎖が同じ疎水性の性質を持っていれば、作られるタンパク質の性質も大きく変わらないことが分かってきた。

生物は、まかり間違って、突然変異を遺伝子DNAが起こしても、その影響をなるべく少なくしているというわけだ。

生物は本当に上手く出来上がっている。

しかし、そう上手く行かない場合もある。例えば、鎌状赤血球貧血症の場合には、ヘモグロビンという酸素を運搬する赤血球の中の赤い色をしたタンパク質(血液の赤い色はすべてヘモグロビンだ。)を構成するβ鎖の6番目のアミノ酸が、グルタミン酸からバリンに変わってしまう。そうすると、グルタミン酸という水に溶けやすい形から、水に溶けにくいバリンになることで、タンパク質分子同士がベタベタくっ付く形となり、ヘモグロビン分子の団子が出来てきて、赤血球の形が円盤状から、鎌形に変形してしまうことになる。そして、その赤血球は、毛細血管で詰まってしまい、貧血が起きるのだ。

問2 ヒトの進化は止まっている状態だ。

答えは間違い。ヒトも実は見えないだけで進化を続けている。北京原人は今いるか?クロマニョン人は今いるか?現在、これらの原人はいない。淘汰されたか、今の人類に進化していったと考えられる。

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これらの原人は、現在の人類の祖先だろう。進化を目にするためには、10万年〜100万年くらいの長い時間を必要としている。人類の歴史が記録され始めて、数千年、これでは、進化を見ることは出来ないのだ。コンピューターの得意な人が生き残り、コンピューターの出来ない人が子孫を残すことが出来ないと仮定しよう。そうすると、人はコンピューターの得意な人に進化していくことになるはずである。

問3 ミトコンドリアの外膜は、好気性細菌の細胞膜に由来する。

答えは誤り。元々、細菌の細胞膜は一重膜だ。ミトコンドリアの祖先である好気性細菌が真核細胞に寄生する時に、真核細胞の細胞膜が好気性細菌を飲み込む形で取り込んだと考えられ、ミトコンドリアの外膜は、細胞膜に由来している。

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こんな具合で解説を加えながら、勉強してみてはどうだろう?一朝一夕にこのようになれなくてもいいが、段々それらしくなって行ければ良い。

学生の皆さんの健闘を祈る。

「解説を加へて自信夏深し」

ハイジャン男のブログ


* 夏惜しむ混み合ふ高原列車かな=資料官

●18きっぷ抱えてダッシュ夏の駅
●逝く夏やむかし青春18きっぷ
●芙蓉咲くワンマン列車の運転手

 高原列車といえばJR小海線。小淵沢‐小諸間を走るこの線にはJRグループ鉄道最高地点(1,375m)があり,JRで一番標高が高い野辺山駅(1,345m)をはじめ甲斐小泉から松原湖までの9駅が標高の高い駅ベスト9に入っている。今から43年前の昭和46年の秋,国鉄の「信州均一周遊券」という優れものを手にして長野県内を撮影旅行した時に小海線78.9?km を乗車した。当時はまだ小海線を始め中央西線や飯山線にも蒸気機関車が走っていた。宿には1回も泊まらず夜行列車の深夜乗換と駅のベンチの寝袋で夜を過ごした。

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(左)1968年10月
高校の修学旅行の時,小諸駅にて小海線のC56
懐古園に行かずに駅の横でじっと列車を待った

(右)小海線野辺山付近を走るC56牽引貨物列車
八ヶ岳がくっきりと顔を出すのどかな高原風景

この夏に久し振りに小諸駅から小海線に乗車した。小諸駅はしなの鉄道とJR小海線の分岐点,平成9年10月に開通した長野新幹線は小諸を通らず少し南に佐久平駅ができたので小諸駅には特急列車が来なくなった。新幹線開業前は頻繁に特急列車が発着していた小諸駅の長いホームと広い構内は今でもそのままである。昭和44年10月の修学旅行で懐古園側から見た風景とはそんなには変わっていない。
小海線の二両編成のディーゼルカーは小諸を出ると佐久平の田んぼの中を浅間山をバックにことこと走る。観光客らしき乗客はさほど多くはなく,太宗は地元の人々である。佐久市の中心である中込駅を出て小海駅を過ぎると,周囲の風景は山岳地帯に変わってくる。やがて信濃川上から一気に八ヶ岳山麓に上り詰めるとここからは高原野菜の畑を走りぬける高原列車。思わず昔流行った「高原列車」♪を口ずさみたくなる。JR最高地点にある野辺山駅に着くと雰囲気は一転。列車めがけた「にわか鉄子」のカメラの放列,標高最高区間(野辺山‐清里間のみ乗車)だけに乗車するバスツアーのご一行,青春18きっぷ等の雑踏でのんびりとした高原列車のムードは吹っ飛んでしまった。さらに清里,甲斐大泉,甲斐小泉と停車のたびに乗客は増え車内は超満員,終着駅小淵沢に到着すると短い二両編成のディ−ゼルカーから乗客がどっとホームにあふれ出た。小淵沢ダッシュ開始,乗車予定の特急あずさ24号との連絡時間も短く,若者たちに負けず速足で階段を駆け上った。

* *

(左)
2014年8月
広い構内がそのまま残った小諸駅
長いホームはそのままだけど,やって来る列車は皆短い編成
懐古園に向かう跨線橋ができている

(右)
45年前の風景 1969年10月の小諸駅
上野行き急行信州が到着

* *

(左)2014年8月
佐久市の中心的の中込駅
上下の列車がここで交換


(右)2014年8月
途中の八千穂駅で小淵沢からやって来たハイブリッド車二両編成と交換
5分ほど遅れてやって来た

*

2014年8月
まもなく野辺山駅高原野菜の畑の中を疾走する
ここまではまだ車内も落ち着いていた

* *

(左)2014年8月
JR最高地点にある野辺山駅
ここから車内は混雑開始

(右)2014年8月
車窓から,野辺山‐清里間にあるJR最高地点の標識
あいにく八ヶ岳は雲の中

*

2011年10月
大カーブを小淵沢に向かって下る
本来のんびりと車窓に没頭する場所であるが
満員列車からの乗り換えに頭は混乱
最後はあわただしく下車するはめに

●猫じゃらし風に吹かれて小海線   丘ふみ游俳倶楽部 八十七号


【編集後記】

2日から7日まで東京。
最初の三日間はギフトショー、6日は「ホットロード」を観たあとに宗匠宅を急襲してホットな俳句談義を夜中まで。
7日は「丘ふみ」関係者が12人も集まって「銀座吟行句会と懇親会」がありました。
その様子は近いうちに別便の号外で詳しくご報告します。
待ちきれないという方は下記の十志夫さんのブログ「俳句と主夫の間で」に「銀座吟行」でちょこっと紹介されていますのでどうぞ。

楽しかった〜!

 (文責 葱男)

■風信




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