*無法投区/文披月

〜セザンヌの構図にめまひ新松子〜


* もうだめですか?=ひら百合

もうだめです。(9月2日受信、それも、いつもは使っていないPCアドレスに投句されていたので、気がついたのは5日でした。 どうも、文字化けの問題がなかなか解決しませんね。 編集子)

A部門
青瓢知らぬ顔なり棚の陰
(葱:嬉しいもんですよね、知らぬ顔。)

行く友と線香花火一つずつ
(葱:先日友人から三河の最高級線香花火を頂きました。 光って、はじけて、友情が長続きしますように。)

レースかな虫に食われし瓜の花
(葱:あの模様って虫に喰われたの? ちゃうんちゃう? 獺祭いなあ〜。)

B部門
皮付きのジャム用虫食い林檎もぐ
(葱:自家製ジャムと庭のハーブティーで朝食、いい感じ。)

行く季節買って来てみる水瓜かな
(葱:水瓜って西瓜の事?)

洋梨は置いて熟らすと子に習い
(葱:あの腰まわりがなんとも美味しそう!)


* 白髪鴨の歌=葱男

いつもの時間に と君は云う

気まぐれに煙草を吸う
罪悪感を舐めるように いがらっぽい日常を確かめるように
朝でも昼でもかまわず夜にして カーテンを全部閉め切って
グレゴール・ザムザの殻のなかに閉じこもって
煙草を吸う

いつもの場所で と君は云う

ジャズは・・・だいっきらい!
それは前から感じていました
月曜日はもっともっと嫌い
冷たい心は君も僕もおんなじです
いつもいつもいつも 100まで数えてみる
1、2、3、4、5、6、7
しだいに苦しくなってきて51、52、53、54、55
55から向こうは分からない
だからなんのイメージも持たずに数え続ける
96、97、98、99、100
ああ 生きるのってややこしい

青い花なら好き と君は云う

眠ってしまえば夜は短いけれど 夢の総量と夜明けの一瞬を比べてみて
君はどちらかを大切だと思ったことがあるだろうか
もしあるなら どちらが大切だと思っただろう

お酒が飲みたい と云う君

もうすぐ終わりが来ます 
「時代の忘却」という名前のお酒があるの知ってる?
いつも紅の下着をつけて いつもいつも不思議な言い回しをする 可愛らしい乙女のようなお酒です
飲んでみませんか

もうイヤ! そう君は叫んだ

物語は消えてしまう のか
新しいストーリーは次回に巡ってこない のか
まわりまわって古い古い繰り返しの日々がつづくだけ なのか

君の白髪は 君の黒髪よりも 君の匂ひがしました
君のにおひは 水仙の花の匂いのようでした

※この歌は、17歳の詩人「一木正治」君の詩へのオマージュとして創られたものです。
彼の原詩が知りたい方は公転周期クリックして下さい。


*不忍池の蓮の花=資料官

海外旅行に向かう家族のポーターとして早朝京成日暮里駅まで出かけた。せっかくここまで来たので,そのまま上りの京成電車に乗り上野駅に向かった。
8月18日の「〈なを〉の部屋」の蓮蓮蓮(不忍池の蓮の花)に触発されて,仕事に行く前に見に行こうかと思っていたので,ちょうど良いチャンス到来。駅を出ると雨が降り出し迷ったけど,このまま出勤しても早過ぎるし,とにかく歩き始めた。
夜明けから時間が経過していたので噂の「ポン」という蓮が開く音は期待していなかったが,蓮の葉にはポタリポタリと雨だれ,葉にたまった水がザーッとこぼれる音,葉の下の方からは水鳥のばちゃばちゃという音が聞こえてきた。 池のあちらこちらにピンクの蓮の花が咲いており,ゆっくり眺めながら不忍池をぐるっと周って東京メトロ湯島駅に向った。雨に降られたけど,まあ気分の良い朝。

●今朝咲きし蓮の花とも顔合わす
●しのばずに雨だれ落ちて蓮ひらく
●雨だれの音響く時蓮ひらく
●蓮の花あたり一面水の声











蓮といえば異国の企業戦士蓮尾さん。この夏休みは帰国せずヨーロッパでバカンスとか。もう一人永井さんもインドネシアでの単身赴任は3年過ぎたか。この歳になってご苦労様です。

●成田行き電車見送り蓮の花
 


かごんま日記:「海へ来なさい」= スライトリ・マッド

2008年8月26日(火)

*秋めきて迷子の子がめよつだ浜

海へ来なさい
海へ来なさい
太陽に敗けない肌を持ちなさい
潮風にとけあう髪を持ちなさい
どこまでも 泳げる力と
いつまでも 唄える心と
魚に触れる様な
しなやかな指を持ちなさい
海へ来なさい
海へ来なさい
そして心から 幸福になりなさい

民放のMBCテレビのニュースをつけていると、ウミガメールという文字が目に付く。鹿児島県はウミガメの産卵地の全国一なのだ。MBCでは、ウミガメプロジェクトとやらを立ち上げ、来年3月にウミガメの特集番組を放映予定するらしい。ナビゲーターに島唄の歌手、元ちとせが出るそう。それに向けて県内各地のウミガメ情報を集めているのだ。今日、寄田(よっ だ)のナオさんという投稿者から「今朝、浜を散歩していたら、方向を見失ったウミガメの赤ちゃんがうろうろ。海に戻してあげました。無事に大きく育って帰ってきてね!」のメールが寄せられたとのこと。鹿児島県は全国3位の約2,600kmの海岸線延長を持ち、砂浜が比較的多い。県内のウミガメの産卵の半数は屋久島の浜が占めているが、本土の吹上浜、長崎鼻、志布志湾などにもウミガメの上陸が見られる。先週も薩摩川内市の幼稚園児らがウミガメの赤ちゃん放流会の様子をニュースでやっていたが、子どもたちの手に乗せられた子ガメたち。微笑ましい光景ではあったが、カメは本来、孵化した後、夜のうちに海に帰っていくものらしい。明るいと鳥や蟹などに襲われたり、方向感覚を失ったりと、危険がいっぱいな のだ。人間サマの都合で、昼間に放流されるカメさんもきっといい迷惑だろう。

*秋の海三十年後また会おう

風上へ向える足を持ちなさい
貝がらと話せる耳を持ちなさい
暗闇をさえぎるまぶたと
星屑を数える瞳と
涙をぬぐえる様な
しなやかな指を持ちなさい
海へ来なさい
海へ来なさい
そして心から 幸福になりなさい

ウミガメは、脊椎動物。ヘビ、ワニ、トカゲなどと同じ爬虫類。甲羅を持っているのはカメだけ。肢と頭は甲羅の中に完全には引っ込められない。前肢はヒレ状になっていて船を漕ぐオールの役割をする。陸ではのろいカメさんも、海では結構速い。ウミガメの種類は世界で7、8種類あるらしいが、日本ではオサガメ、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ、ヒメ ウミガメの5つが見られるそう。日本に上陸し産卵するのは、ほとんどがアカウミガメで、アオウミガメがわずかにやって来るとのこと。肺呼吸のため海に潜っていられるのは、15〜30分。眠っているときは1時間以上も潜ることも。もっぱら海で生活し、産卵のときだけ、大昔と同じように陸に上がると考えられている。卵は呼吸しており、水中では死んでしまう。 カメの祖先は、2億年前の中生代、湿地にいたプロガノケリス。海へ生活の場を広げ、ウミガメとなった。水中で交尾をし、産卵のため、陸地に上陸するが、やってくるのはメスのみ。
生態はまだ謎の部分が多く、屋久島うみがめ館(大牟田一美氏代表)では、ウミガメに標識をつけ、その生態を解明しようとしているそう。現在わかっていることは・アカウミガメの寿命は70〜80年で人間と同じぐらい。ちなみに一番の長生きがゾウガメで150〜200年。万年も生きない!・20〜30年かけて大人になる。・アカウミガメの甲羅の長さの平均は90cm、体重95kg。アオの方が少し大きく1m、100kgを超すものも。・アカウミガメは肉食でアオウミガメは草食。・最速オサガメの時速は約40km。・産まれた子ガメは2、3年かけ太平洋を黒潮に乗ってアメリカ西海岸へたどり着く。・大人になったら生まれた場所に戻ってきて産卵する。・1シーズンに3〜6回産卵し、1回につきピンポン玉の大きさの卵を100個以上産む。・産卵のとき泣くと言われるが、本当は海で飲み込んだ塩分を体の外に出す穴が目頭にあり、それが涙に見えるのだそう!・大人になれるウミガメの確率は何と1/5000!これは自然界の淘汰の法則だからやむを得ないが、温暖化による珊瑚礁の減少や、砂浜の侵食は人為的なもの。ウミガメに住みよい環境を与えてあげられたらいいのになあ。

*「海へ来なさい」 by 井上 陽水(1979)より引用


■編集後記
 記念号の客人として投稿を依頼していた宗匠から早くも原稿が届いた。
いろんな仕事が重なっている時だったようで、こちらが9月20日までという期限をつけたものだから、先の予定を前倒しまでして書いて下さいました。「丘ふみ」個人個人の句に対しては、実に率直に、真剣に、深い愛のこもった素敵なコメントを戴きました。(4日の夜は他の原稿や「め組」句会の清記とも重なって、徹夜をして「丘ふみ記念句集」の原稿を仕上げてくれたみたいです。)

各個人へのコメントは発刊の時のお楽しみにして公表はしませんが、締めくくりの文章の中から「グリコのおまけ」を一行だけ、抜粋してみんなにプレゼントしましょう。

「14名の作品を概観してきて、続けることの意味を思います。皆さんがこれからも、楽しい思いで句作に遊んでほしいと切に思います。これは他人には内緒にしてほしいのですが、俳句の上手、下手に意味があるのではありません。誰がどれだけ俳句の芽ぐみを味わい尽くしたのか、が大事なことだと思います。」

シングルモルトの大ファンである26宗匠らしい、深い、含蓄のある、土に海草の香りがするようなお言葉でした。
感謝、感謝。

(文責 中島)


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