*無法投区/櫻月*

〜夢をまた巷に復す鐘朧〜


*おかふみ游俳倶楽部博多室見川白魚句会

白魚句会

平成十九年三月十八日 於室見川小春

連衆
砂太(すなた)/白川昌弘/老司(投句・選句)
葱男(ねぎお)/中島雅幸/鷹ケ峯(投句・選句)
スライトリ・マッド/森英子/かごんま(投句・選句)
男剣士(おとこけんし)/清武道秀/百道(選句のみ)
喋九厘(しゃべくりん)/栗原隆司/太宰府(投句・選句)
雪絵(ゆきえ)/川崎幸江/室見川(投句・選句)
五六二三斎(ごろにゃんさい)/原孝之/中洲(投句・選句)


天位
●球児球児遠投の弧に風光る=葱男
◎ ユ、ス、スマ ×オ、ゴ=9点

地位
●鳥帰る口約束もしないまま=雪絵
○ネ、ス、シャ △ゴ ×オ=7点

人位
●揚雲雀声の届かぬ人思ふ=砂太
  ◎ ゴ ○ユ ×ネ、オ、スマ=5点

入選
●電線の消えし街角朧月=五六二三斎
◎ネ ○スマ=5点

●大喰いのパンダのこども春の園(えん)=葱男
◎シャ△ス×ユ、スマ=4点

●あそこにも蕾桜のひそめ息=喋九厘
◎ オ×ゴ=3点

●花げんげ背に咲かせて黄八丈=スライトリ・マッド
○ゴ △ネ ×ユ=3点

●水温む土管伝わる音にさへ=スライトリ・マッド
○オ △ネ ×ユ=3点

●寝袋の木乃伊でござい春の昼=葱男
△シャ ×ス、スマ=1点

●寝ませふか杯重ね桜の季=喋九厘
△オ ×スマ=1点

佳選
●木蓮や一人芝居の雲ひとつ=五六二三斎
×ネ、ユ、ス

●三月の大地の粒やきららかに=スライトリ・マッド
×ネ、シャ

●睡眠を誘う妙薬春日向=雪絵
×ネ、オ

●峡(やまかひ)のこの道何処へ花辛夷=砂太
×シャ、ゴ

●青空や白木蓮の時の旬=喋九厘
×スマ

●行けども行けどもきりなき菜の花や=雪絵
×ネ

無選
●丘上を背にそぞろ行く春の川=五六二三斎

●山笑ひ過ぎて小焼の子ら帰る=砂太

※砂太(ス)葱男(ネ)スライトリ・マッド(スマ)男剣士(オ) 喋九厘(シャ)雪絵(ユ)五六二三斎(ゴ)

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五六二三斎: 当日は、春の川にふさわしく好天でした。待ち合わせの地下鉄の室見駅より、葱男部長、雪絵さん、喋九厘さんと歩きながら、室見川を渡り、いざ、会場の小春へ。室見川の川原にあります。既に、砂太先生、男剣士さんは到着。すぐに、スライトリ・マッドさんも駆けつけ、白魚の跳ねる踊り食いの皿の前で選句作業が始まりました。皆の句もなかなかの句が揃い、選に迷いました。
 今回は、葱男部長句が天位に。砂太先生は、「球児球児」を「新球児」にしては?とのことでした。
 地位句は、雪絵さんの句。「口約束もしないまま」というフレーズが泣かせますね。博多で句会をすると、上位に食い込みます。室見はホームグラウンドなので、今回も地元の強みだったのでしょうか?
 人位句は砂太先生句でした。私が天位を頂きましたが、弱い人に優しい句のように思いました。少し、今の世相を皮肉っているようにも感じました。
 当日は、俳句談義に花が咲き、飲み、食べ楽しいひとときでした。昼からの酒は効きますね。以上、ごろにゃんさいの感想でした。

葱男:小学校の頃に一度だけ踊り喰いをしたことがある。
生きたままの魚を飲み込むのが恐くて、じゃりじゃりと噛み砕くと、すこし苦い味がしたような記憶がある。
白魚句会の会場になった「小春」はその時期だけ臨時に営業をする簡単なプレハブの小料理屋で、「海の家」ならぬ「室見川の家」というところだ。

さすがは白魚喰いもベテランである砂太先生、家から食パンを持参して窓を開けて群生する百合鴎にむかって餌を放り投げる。これもまた春の風物詩か?(百合鴎は冬の季語だけど・・・)
ふたりそろったきもの美人も楽しそうに鴎の乱舞に見とれている。
よく晴れた川べりの小屋は温室のように暖かくて最高に気持ちいい。
そして、昼間から飲むビールは格別に旨い。
白魚のフルコースに箸をつけながらの気侭な句会は、あっという間に時間が過ぎ、最後には食べきれない踊り食いの白魚を川にリリースして(偽善者か!)、楽しかった宴会もそろそろお開きとなった。
帰り道、夕方の室見川をほろ酔い気分で歩いていると、今さらながらに博多の町の美しさと、同級生のありがたさが心に沁みる、そんな旅になった。


*惜別の田舎鉄道花曇り=資料官

4月1日をもって3つのローカル私鉄が廃止になった。くりでん,かしてつ,宮地岳線。宮地岳線は西鉄新宮-津屋崎間9.9kmの区間が廃止となり,線名のゆえんとなった宮地岳駅も廃止となったので名称も貝塚線に変更された。これらのローカル私鉄はこれまでこの「游俳倶楽部」にも何回か取り上げたのですが,惜別の念禁じ得ず再び紹介させていただきます。

その1  西鉄宮地嶽線 (福岡県)
西鉄宮地岳線は,貝塚-西鉄新宮間の貝塚線として新たなスタートを切ることになった。廃止区間は津屋崎方面への遠足の際に乗った記憶はあるものの,あまり馴染みのある路線ではなく,これまでまったく写真も撮っていなかった。
●菜の花や津屋崎ゆきの古電車

月が瀬


●五月晴れ津屋崎駅を折り返へす
●香椎から香椎へ向かふ風五月=資料官
(西鉄宮地嶽線  この線はあと一年で新宮から先が廃止になるとか。最後に乗ったのは何時頃であったろうかと思い返しつつ,香椎から津屋崎に向かう。終点近くなるとひたすら松林の中を横に激しく揺れながら走る。JR香椎からまもなく高架に移る西鉄香椎駅の間は松本清張「点と線」の世界。)                   游俳倶楽部*第二十二号


その2  鹿島鉄道(茨城県)
地元ではかしてつと呼んでいた。茨城県に住む友人に誘われて初めて乗ったのが昨年の5月。霞が浦の脇をのんびり走るのどかな路線。SLでも走らせて観光客でも集めればすばらしい場所になるのであろうが,残念ながらそういう余裕はまったくなかったようだ。かって夕張鉄道を走っていた小さなディーゼルカーが今でも当時の姿を見せてくれるのは大変うれしかった。

夕張


●かしてつの別れの走り春霞
●かしてつやさくら待たずに散りにけり
●村の駅はるか筑波もかすみけり
●菜の花や霞ヶ浦を渡る風

霞ヶ浦


●梅雨寒や霞ケ浦の無人駅=資料官  游俳倶楽部*第二十二号


その3  くりはら田園鉄道(宮城県)
かって栗原という名前の鉄道が国内にあるのかと驚嘆のお言葉を頂戴したまさにその鉄道。本人はさておき一昨年と昨年2度も仕事のついでに乗りに撮りに出かけた。実は昭和47年10月にあのシャベ栗と北海道に行く途中にふらりと立ち寄ったこともあったのだが,当時の記憶はすっかり消えうせていました。この游俳倶楽部にも二度にわたってしつこく取り上げたので,今回はその句を再披露するにとどめます。これでくりはらと言う名の鉄道は消えたのでした。

くりでん


●くりでんの最後の走り雁渡る=資料官  游俳倶楽部*第十六号

くりでん2


●村時雨抜けてくりでん到着す=資料官  游俳倶楽部*第二十八号
●みぞるるやくりでん送る老駅長


かごんま日記:" WATERS OF MARCH "= スライトリ・マッド

2007年4月2日

A stick, a stone, it's the end of the road
It's the rest of a stump, it's a little alone
It's a sliver of glass, it is life, it's the sun
It is night, it is death, it's a trap, it's a gun
The oak when it blooms, a fox in the brush
A knot in the wood, the song of a thrush
The wood of the wind, a cliff, a fall
A scratch, a lump, it is nothing at all
It's the wind blowing free, it's the end of the slope
It's a beam it's a void, it's a hunch, it's a hope
And the river bank talks of the waters of March
It's the end of the strain
The joy in your heart

*どんどはれ石割桜まだつぼみ
今日、NHKの朝の連ドラがスタートした。何気なくつけていたら盛岡が出てきてびっくり。かつて宮澤賢治も愛し眺めた風景。開運橋から岩手山をバックにした北上川。小岩井農場から見た一本桜と岩手山。ほんの夏のいっときだけを除き冠雪している山を毎日眺め・・。秋には鮭が遡上し冬には白鳥が訪れパンの耳を投げた川。懐かしく感じる。1989〜98年の9年間、盛岡市に住んでいた。駅の周辺の変わりようにも驚く。もう9年訪れていない。ドラマのタイトルの「どんど晴れ」は、岩手の方言だったとは知らなかったが、昔話の最後に出てくる言葉だ!以前、童話が好きで集めていて、日本の昔話の中でよく見た。「めでたし、めでたし、これでおしまい」を表す言葉で、他にもいろいろあって楽しい。
・とっぴんぱらりのぷ
・いきがぽーんとさけた、なべのしたがらがら
・どんぴこからりん、すっからりん
・これでむかしっこおわり
・これでそうろんべったりかいのくそ
・とーびんと
・えんつこもんつこさげすた
・がっさとうーさ
・そうらえばてばて
・どんどはらえ
「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが・・」で始まる昔話の最後を締め括るのがこれらの言葉たち!どれも「これでファンタジーの世界は終り。さあ現実の世界に戻ろうね」の意味なのだろう。

The foot, the ground, the flesh and the bone
The beat of the road, a slingshot's stone
A fish, a flash, a silvery glow
A fight, a bet the fange of a bow
The bed of the well, the end of the line
The dismay in the face, it's a loss, it's a find
A spear, a spike, a point, a nail
A drip, a drop, the end of the tale
A truckload of bricks in the soft morning light
The sound of a shot in the dead of the night
A mile, a must, a thrust, a bump,
It's a girl, it's a rhyme, it's a cold, it's the mumps
The plan of the house, the body in bed
And the car that got stuck, it's the mud, it's the mud
A float, a drift, a flight, a wing
A hawk, a quail, the promise of spring
And the river bank talks of the waters of March
It's the promise of life, it's the joy in your heart

*シナの砂春風に乗りジパングへ
ここ数日風が強く空を見ると、霞んで黄色っぽい。黄砂だ。前日に降った雨で洗い流してくれないかと思っていたら、先日ワックス洗車したばかりの車に泥水を被ったような跡。そういえば最近は雨水自体が汚れてる。やれやれだ。中国では砂漠化が進んでいて、偏西風に乗って砂が日本まで運ばれるらしい。少し前まで、黄砂は春の風物詩なんてのんきなことを言っていたが、最近はアレルギーの原因だとか、空気を汚染し環境破壊の一因となっているとか、すっかり悪者扱いに。それにしても、砂の粒が大陸からはるばる海を越えやってくるなんて自然の力はすごいなあ。

A stick, a stone, it's the end of the road
It's the rest of a stump, it's a little alone
A snake, a stick, it is John, it is Joe
It's a thorn in your hand and a cut in your toe
A point, a grain, a bee, a bite
A blink, a buzzard, a sudden stroke of night
A pin, a needle, a sting a pain
A snail, a riddle, a wasp, a stain
A pass in the mountains, a horse and a mule
In the distance the shelves rode three shadows of blue
And the river talks of the waters of March
It's the promise of life in your heart
A stick, a stone, the end of the road
The rest of a stump, a lonesome road
A sliver of glass, a life, the sun
A knife, a death, the end of the run
And the river bank talks of the waters of March
It's the end of all strain, it's the joy in your heart

*春雨や幾千年の森濡らす
鹿児島県の日本一の1つに降水量がある。屋久島の雨は林芙美子が小説「浮雲」の中で「月に35日雨が降る」と書いて有名になったが、年間降水量は約4500mm。2位の尾鷲より多い。ちなみに東京は1400mm。山上の屋久杉の森にはなんと9000mm前後の雨が降るそう。白神山地のブナ林とともに、平成3年、日本で最初に世界遺産に登録された屋久島の森は、この雨によって培われたもの。九州一の高さを誇る宮之浦岳(1935m)を筆頭に九州で8位までの山々が屋久島にはあり、1000m以上の山も40以上あるとのこと。冬には日本最南端の積雪地に。雨が多く降るのは、なだらかな稜線を持たず、海から一気に標高2000mへと屹立するような山が連なる地形のため。黒潮の海からの暖かく湿った風が山を登るほどに冷やされ、大量の雨をもたらす。写真でしか見たことがないが、いつか是非行ってみたいと思っている。

*" WATERS OF MARCH " by Antonio Carlos Jobim (1972) より引用


■編集後記
今月は票が分かれ、群雄割拠の様相ではあるけれど、ますます女性上位の 格差社会が広がって行く気配である。

ついに二六斎先生は、いつまでたっても言う事を聞かない、勉強もせず進歩もない部長に愛想が尽きたのか、選句さえ返してくれなくなってしまった。
俳句というものが人にとってどんな役割をしているのかは千差万別だが、「丘ふみ」は「丘ふみ」のカラーで、ゆっくりと歩んでいく事にしたい。

三句切れの兎も、洒落口の旅人も、電車や蝶の蒐集家も、それぞれにいろんな味があってそれなりに面白いのではないか。なーんちゃって自分の空想癖は棚に上げての無責任な発言ではあります。
ああ、昔なつかし植木等も青島幸男に次いでとうとう天国へ行ってしまいました。
無責任もホンダラッタホイホイもスイスイスーダララッタも忘れられてしまうなあ〜。
世の中、マニュアルばかりの管理競争社会で喰うか喰われるか、みたいですが、俳句ぐらいはそんなもんに縛られたくはありませんもんね。  

無法投区

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