*無法投区/寝覚月*

〜遠距離を色なき風とおもひしや〜


*砂太の現代俳句選

「空飛ぶマンタ」:杜 アトム

第一部 
恋猫や若先生の診察日
雛納め人の恋しき夜となれり
空仰ぐ我も土筆も大地の子
第二部、
聖画売る礼拝堂の春日影
交易の船の絵巻も朧なる
虫喰ひのゑくぼに見えて古雛
第三部、
大土佐の沖に海猫舞ふ桜東風
鋸目立て賑ふ市の花の下
闘犬の傷癒しゐる遅日かな


*私と読書=砂太

「俺、本読むねん」「小説をいっぱい読むねん」井上靖の随筆だったと思うが、随分昔によんだ文章の一節である。場面は、第二次世界大戦の後半、東京発大阪行きの列車の中である。当時は戦時色一色で大学生ですら、読書もままならない時代であった。夏休み帰省中に、日頃読みたいと思っていた本を心ゆくまで読もうという、この学生の願望がしみじみと伝わって来て、胸がつまった事を思い出す。
 私にも活字に飢えた時代があった。終戦直後の数年間である。教科書の文字に墨を塗って、まるでクロスワードパズルのようになったもので授業を受けたり、新聞紙のような理科の教科書の驚いたりした時代である。私自身、京城(今日のソウル)からの引揚者で、帰り着いた母の故郷がまるで片田舎、手軽に良い書物を得ることは困難であった。(嘘のようだが新聞がまとめて届いていた)初めて書物らしい量と型をしたものを手にしたのは、中学の教科書であった。嬉しかった。一週間で読み終えた。続いて国語、理科、その外読み得る教科書は全部、約一ヶ月半位かかって読了した。高校に入った後も、教科書を読む週間は捨てなかった。(勉強ではなく読書として)。この時代から活字に対する抵抗感が無くなったような気がする。読めるものは何でも読む。面白く読む、そんな感じで読み続けて来た。そして今は、あまり先を急がないで、嗜むように読むようになった。
 この様に、私の読書の習慣は、活字の不足から来る飢餓感を補うことから始まった。
読者はどうであろうか。恵まれ過ぎた情報の中から何を得ているのであろう。読む人は数多く読んでいるようだが、読まない人は全く、という状態が予想されて少しばかり心配である。活字による情報や情緒がより心に残る、と感じる私にとって、現代の音や、映像や、色彩の溢れる時代より、活字欠乏症の貧しい時代が、読書にとって望ましいような気がするには負け惜しみであろうか?

草粥や若く貧しくありしこと  砂太    


*これが京都句会/宴会じゃ!=葱男

京都句会
何よりも好評だったのが、この飲み、食べ放題、2000円ぽっきりの句会/宴会である。
まずはお料理のラインナップ。
キッシュ3種、ミートローフ、カツサンド、ポテトサンド、クロワッサンサンド、鳥の唐揚げ、海老チリ、大根とつくねの煮物、おから、万願寺唐辛子のたいたん、きんぴら、黒米のおにぎり、きわめつけは山形の芋煮です。 次ぎはお酒。
ごろにゃんさんからの冨乃宝山と友人持参の吉兆宝山がガッチャンコ。ワインはブルネッロをはじめ、丹波ワインの白の新酒も含め5本、大徳寺名酒「雪紫」、グラッパもあって、ビールは2ケース。
27人の参加で、どうだ!!!

句会は今回、残念ながら「丘ふみ倶楽部関西支部」からは僕ひとりの参加でしたが、がんばりましたよ〜!以下、京都句会の結果発表です!

●隣室に椅子を引く音夜寒かな       真弓
◎か、御○和、分、葱、佳=8点
●表札に母の名残る秋燈          葱男
◎分○信之、佳、御、信頭、電=7点
●秋草のかたみの絹をきんちゃくに     分葱
◎ひ、真、映○信頭=7点
●風琴の足踏むごとに十三夜        葱男
○信之、和、分、佳、御、信頭=6点
●秋深む運動場の小石より         佳音
◎葱○和、ひ、電、映=6点
●楽しくてふらふら風船かづらかな     電車
◎佳○か、信之、ひ=5点
●秋霖や地蔵の傘のけむりたる       信之
◎信頭○葱、ひ、御=5点
●紅葉ちゃん 皿に残りて ソロ舞台     信頭火
○分、葱、真、電=4点
●風に招かれ秋蝶に生まれけり       佳音
◎福、電=4点
●「嘔吐」からいちまいの貌シュプレヒコール 分葱
◎和○か、葱=4点
●残る蚊の 一直線に ふいに落つ     和彦
○か、真、信頭=3点
●上品に染めたる髪や秋深む        信之
○映、御、真=3点
●大鍋の小を兼ねたる小春かな       真弓
○和、電=2点
●お針子と呼ばれし時代末枯るる      ひびき
○分、真=2点
●ぽっくりの音曳く路や寝待月       御主火
○信之、佳=2点
●文豪の愛し別荘小鳥来る         ひびき
○か=1点
●深呼吸金木犀が肺の中          電車
○ひ=1点
●冷ややかに ただ独りある 金星の矜持  和彦
●値引きして テレビ並びし 秋葉原     信頭火
●秋霖や紫深き京の里           御主火


*暑い10月=喋九厘

あかさたな秋饒舌とじじぜぜぜ
兼題の『あいらぶゆ』と併せ、秋の夜長に言葉遊びをしてしまいました。

じょうぜつとじじぜぜぜ
爺爺是是是?ぜぇーぜぇーぜぇー?時事是是是?
皆様の評価やいかに?

いゃー、それにしましても当地、九州の10月は暑かった!
月末まで日中はTシャツ一枚でOKなのでした。
それでもコスモスはちゃんと咲き、そろそろちりぬるを!です。
上山田廃線跡の築堤に沿って植えられたコスモスの可憐な姿が、今年は特に印象的でした。
これは来春に公開予定です。

あちこちそうついて、夕焼けの空を見上げれば
腹減りぬ秋刀魚に見ゆる鰯雲
鰯もお高くなりました!


稲

毎度の携帯写真は我が家のベランダ稲のその後です。
11月1日現在の姿ですが、見事稲穂も色付き、しっかり実も入り刈り取り間近です。
是非、試食をとモクロンでいます。
右下は10月に入り発芽のスイカ。成長は続けていますが、これは収穫には至らんでしょう。
右上は先の台風で全滅に見えた朝顔。再成長を始め、11月に入り小振りながら白い花を連日開花させております。

暑い10月でした!


*2006年  秋たけなわの伊勢詣で=資料官

●秋天下二階特急伊勢路行く
(名古屋から伊勢志摩に向かう定番は近鉄特急。二階建ての名車ビスターカーが君臨していたが,最近はアーバンライナーとか伊勢志摩ライナーとかさらに豪華な特急電車が活躍中である。という私が乗ったのは最新伊勢志摩ライナー23000系,黄色い特急でした。)

●秋晴やをとこ一人の伊勢詣で
(たまたまやって来た伊勢市への5日間の出張,これはお伊勢参りの良いチャンスといそいそと出かけました。快晴の秋の日,初めてのお伊勢参りは,外宮(豊受大神宮)から内宮(皇大神宮)を順に参拝。全国からお伊勢参りの人の列が続く。)

●秋入り日パンタグラフのシルエット

●秋の暮れ近鉄電車の軋む音
(伊勢の町を夕方歩いていると近鉄電車が頻繁に行き過ぎる。泊まったホテルの窓からも電車の行き交う姿が眺められなかなか寝付かれなかった。)
近鉄

●秋の宿うどんの汁の黒きこと
(名物伊勢うどんで夕食を済ませる。たまり醤油の真っ黒いタレをまぶして食べるが,さほど辛くもなく柔らかいうどんが旨い。)

●秋冷の朝伊勢外宮ひと回り
(今回は伊勢への長旅,二日目,早起きして仕事前に伊勢外宮を参拝する。休日の昼間と違い静寂な杉木立の中をとぼとぼ歩く。参拝は早朝に限る。)

●露の橋渡りて神のふところへ
(三日目,またまた早起きをして今度は伊勢内宮を参拝。露にぬれた宇治橋を滑らぬようにそろりそろり歩む。橋を渡れば神の国だと心あらたまる思い。)

●五十鈴川右も左も薄紅葉
(五十鈴川の両側はほんのり色付き始め。)

●玉砂利の落葉踏み締め伊勢詣で

●内宮の木漏れ日落ちて落ち葉掃く
(玉砂利の道をざくざく音を立てて内宮に向かう。ここも早朝は団体旅行の列はなく静寂な神の国。朝日が差し落ち葉が輝く。)
内宮

●秋寒の赤福本店奥座敷
(伊勢内宮は朝5時から参拝出来るので,この店も5時から店を開けて参拝客を待つ。280円のお茶と赤福餅3個食べて朝食代わり。広い座敷は我々だけの世界。おはらい町の中で店を開いているのはここだけ。)
座敷き

●秋寒や赤福餅のかまどかな
(名物の赤いかまどのお湯が参拝客へ振舞われるお茶に使われる。山口誓子は「この家に福あり燕巣をつくる」の句を詠んだ。赤福本店のそばのおかげ横丁には「山口誓子俳句館」がある。)
誓子




かごんま日記:"KEEP PASSING THE OPEN WINDOWS" =スライトリ・マッド

2006年10月21日(土)

This is the only life for me
Surround myself around my own fantasy
You just gotta be strong and believe in yourself
Forget all the sadness 'cause love is all you need
Love is all you need

*チェストーやみっかん坂に秋のてふ
ここのとこ、お天気のよい日が続く。もう1ヶ月以上雨が降らない。今日も快晴。朝洗濯物を干していると、近くの道路から、わいわいがやがや。何だろう?3階の屋上から見てみると、リュックを背負った人たちが、たくさん歩いているではないか。妙円寺詣りだ。道路に数週間前から看板が立っていた。10月22日が妙円寺詣りの日とあったので、てっきり明日のことだと思っていて、今日か ら歩く人がいるとは知らなかった。鹿児島に住んで5年目。鹿児島の3大祭りの一つである妙円寺詣りに一度も参加したことはない。明日の日曜日は、コーラスの県の合唱祭と重なっていて、今年も妙円寺遠行は無理だなあと決めていたが・・。よし今から行ってみよう!急遽、家の中を片付けながらi-Pod、飲み物、財布、筆記用具、句帳、タオル、日焼け止めのクリームに手袋、帽子・・
等々準備。9時23分自宅を出発し合流。急勾配の水上坂(みっかんざか)を上ったとき、目の前に見たことのない色の蝶がひらひら。
右手を伸ばすとなんと止まった。きれい。羽を合わせてたから蝶々かな。左手で携帯を出し写真に撮ろうとしたら逃げられた。

Do you know what it's like to be alone in this world
When you're down and out on your luck and you're a failure?
Wake up screaming in the middle of the night
You think it's all been a waste of time
It's been a bad year
You start believing ev'rything's gonna be alright
Next minute you're down and you're flat on your back
A brand new day is beginning
Get that sunny feeling and you're on your way

Just believe - just keep passing the open windows

*ひとびとに元気をくれし龍田姫
この2日間で約3,000名の人たちが妙円寺詣りに参加するらしい。熊本から朝の4時半に家を出て来られたおじさん。毎年仲良しの女友達でおしゃべりを楽しむのだというおばさまたち。1年も前からこの日のために体調を整え、参加できることが健康のバロメーターだと仰る78歳のおじいさん。きつくて不機嫌な子どもを励ましながら行く若い父親。犬と歩く人。マラソンする人。携帯で話しながら歩くお嬢さんたち。それぞれの楽しみ方があるよう。私は好きな音楽を聴きながら景色を眺める。無人販売所の野菜が安い!買いたいがまだ先が長いのでやめる。金木犀、赤のまま、櫨、ススキ、萩、セイタカアワダチソウの辛子色もきれいだな。田んぼはほとんど苅田原。今から刈った稲を干すのだろう。稲架が組んである。のどかな風景。12キロくらいの地点から足の小指が痛くなる。靴 擦れだ。休憩所で絆創膏をもらい貼るが痛い。普段運動しているし大丈夫だろうと高を括っていたが、やっぱりちょっときつい。でも足は動くし、がんばる。

Do you know how it feels when you don't have a friend
Without a job and no money to spend?
You're a stranger
All you think about is suicide
One of these days you're gonna lose the fight
You'd better keep out of danger - yeah!
That same old feeling just keeps burning deep inside
Keep telling yourself it's gonna be the end
Oh get yourself together
Things are looking better everyday

Just believe - just keep passing the open windows

*天高し四百年の思い縷縷
妙円寺詣りの起こりは、はるか406年前の旧暦9月15日の天下分け目の合戦関が原の戦いに遡る。徳川の東軍と豊臣の西軍が美濃の国で戦い、徳川軍が優勢に終わったのは有名な話。豊臣方であった島津氏17代太守島津義弘公の艱難辛苦を偲び、その剛勇を称えて、薩摩の武士たちが関が原の合戦の前夜の日に鹿児島・伊集院間の往復40キロを甲冑に身を固め、夜を徹して義弘公の菩提寺である妙円寺に参拝したことが始まり。今でも小学校の秋の鍛錬遠足などの伝統行事にもなっている。妙円寺と言うものの、現在そのお寺はない。明治2年の廃仏毀釈で妙円寺が廃寺され、その後に建立された神社が徳重神社だ。国道206号線沿いにヤジロウの墓があったが、ヤジロウも歴史上大きな役割を果たした。マラッカでフランシスコ・ザビエルに出会い、日本行きを決心させたという人物。インドのゴアで日本人として初めてキリスト教の洗礼を受け、故郷である鹿児島にザビエルを案内して上陸したのが1549年。時の領主島津高久と会見し宣教の許可を得る。ヤジロウの墓は田んぼの傍にある小さな石造りの簡素なお墓だった。

This is the only life for me
Surround myself around my own fantasy
You just gotta be strong and believe in yourself
Forget all the sadness 'cause love is all you need
Love is all you need

Just believe - just keep passing the open windows

*爽かや少年の笑み休憩所
あちこちに丸に十の字の幟の立った休憩所が設けられていて、疲れを癒してくれた。水、熱いお茶、冷たいお茶、甘酒、焼き栗、大学芋、塩ラッキョウ、梅干、隼人瓜の漬物、黒砂糖、・・・ボランティアの人たちによる手作りの飲み物やお菓子。有難い。伊集院の町に入ると通りがかりの地元の方たちが「こんにちは」「お疲れさま」と声をかけてくれる。ゴールの徳重神社に近い休憩所でお菓子をすすめてくれた中学生の少年の白い歯がさわやかだった。神社にお詣りし、帰りはJRにする。いつも元気印の私だが、さすがに今日は足が棒に。すると伊集院駅の裏の広場に足湯が!日置の天然温泉「花水木」のお湯を運んできたとのこと。次の電車の時間まで足湯に浸かる。極楽の15分間!伊集院駅から15分ほど電車に揺られ14時36分鹿児島中央駅に到着。20キロ踏破できてうれしかった。

*" KEEP PASSING THE OPEN WINDOWS " by QUEEN(1984) より引用


■編集後記
個展の真っ最中、東京行きの準備をしながらの、やっと第27号発刊です。

今回の二六おじさんの文章には打たれました。
自分をすこしせつなく、静かにさせてくれるもの、自分自身の言葉を奪い、音のない世界に一瞬、時間が止まる瞬間、「美」がひらひらと舞い降りてくる。
神が其処に降りてくるという表現をよくしますが、それは不意に向こうからやって来るものなのでしょう。
「こちらから」では何も起こらない、「むこうから」やってくるものに、人は感動するのかもしれません。

いや、俳句の話なんだけど、なんだか、すべてに通じるやうな・・・。

東京句会、じぇったい、面白いけん、「旧暦是日々好日」の高月美樹さん。
http://www.lunaworks.jp/
「はるもにあ」主宰の満田春日さん。
http://www.haiku-harmonia.com/
俳句喫茶店「つぶやく堂」の御主人、やんまさん。
http://otd11.jbbs.livedoor.jp/tubuyakudou/bbs_plain
も参加やけんね! すっご〜〜い!
(中島、文責。)

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