*無法投区/霜月*

〜災い転じて 福と成すぞ〜

●ハラヒラと服脱ぎ捨てるイチョウかな=犬公方信久(セクハラ)

●独り寝の 居間にとどろく我がイビキ 睡眠妨害 文句も言えず=前鰤

*丘ふみ同窓会=久郎兎

11月は丘ふみ同窓会の月。天神のガーデンパレスであったので、その時の句。
丘ふみ同窓会で、小学中学の友に出会い、よく話しました。ちょっとした誤解やワダカマリを乗り越えられて、さらにもっと親しくなったことは、大きな喜びでした。価値ある時間を過ごせました。ありがとう。

●徘徊は 月いちバーチャル 同窓会
●親不孝 天神裏の 厄払い
●天神に 出るもおめかし 一張羅
●天神で 逢うは嬉しき 旧き友

*友の芸祭 五句=五六二三斎

平成16年11月17日から22日まで続いた「友の芸祭」は大感激でした。
私のこの五句では、語れない素晴らしい一時でした。

●落葉舞う しのだの森の ひとり芸
●帰り花 心にしみる 友の歌
●友の声 落葉がひとつ 画廊わき
●新聞を 飾る我が友 冬日和
●堕天使の 人生これや 神の留守

*のぞみは西へ2004年晩秋=資料館

この秋2回ほど「のぞみ」で西へ。2列であるし富士山が見えるからいつも山側の席を求める。見慣れた風景であるが新たな発見がある。時間が許す限り飛行機には乗らないことにしている。

● 雨あがる 窓のかなたに富士冠雪
(東京は雨でスタートしたが小田原近くなり雨は上がり冠雪した富士山が姿を見せる)

● 石部屋の安倍川餅食いし 夢見つつ
(静岡あたりは居眠りタイム。安倍川もちの老舗の「石部屋」の店先でほうばる夢を)

● 車窓から 県下一斉運動会
(天気になって良かった。通り過ぎるあちらこちらで運動会が開催されている)

● うとうとと 秋の浜名湖波しずか
(浜名湖を渡るあたりが大阪までの道半ば。昼寝もこのあたりまで)

● 木曽長良つぎは揖斐川 地理暗記
(名古屋を過ぎると濃尾平野。順番に大きな川を三本渡る。)

● 東より難なく越せり 古戦場
(天下分け目の関が原も一気に通り越しトンネルを越えれば関西圏へ突入)

● 目覚めれば 湖東三山秋深し
(山側に座っていると見えない。)

● 秋澄みて山近づきし 滋賀の湖
(米原を過ぎれば比良山系がどんどん近づく。比叡がはっきり見え出すと京都も間近)

● 一瞬の瀬田の唐橋 京間近
(よほど注意して見なければ瀬田の唐橋は見逃してしまう。そろそろ琵琶湖も見納め)

● 秋惜しむそれぞれの顔 京の駅
(秋の京都の駅は観光客でにぎわう。車窓からは上りホームの満足しきった顔が列車を待つ)

● きらきらと明石海峡 船一つ
 (やはり明石海峡は山側の席からは見えないが通路越しにちらちら見ると淡路を向こうに海は輝き船が一つ)

● 心して追わねば見えず 白鷺城
(やはり姫路城もボーとしていると通り過ぎてしまう。姫路駅通過の直線でのぞみはスピードを最大限に上げる)

*その1 小倉のりかえ大分行き
● まだ明るい 別府の海の秋の暮れ
(17時過ぎると東京はもう暗いけどさすがに九州はまだ明るい。別府湾沿いを走ると終着駅大分は間近。東京から7時間結構遠いなあ。)

● 秋の海 かなた由布岳ホーバー行く
(しかしながら帰りは時間もなく飛行機で帰京。空港へ別府湾をわたるホーハ゛ークラフトに乗った。海のかなたに由布鶴見)

*その2 新大阪のりかえ鳥取行き
● 晩秋の人なき駅にてすれ違い
(田舎の町にも特急列車は止まり列車交換)

● 山も秋 トンネルの先はさらに秋
(山を越すと鳥取は更に秋深く寂しさを感ずる)

● 秋時雨 ただ白き波日本海
(秋の時雨,窓からは白い日本海の波が見えるだけ)

● 秋の虹 伯耆大山姿見せ
(時雨の季節。雨が止み虹が見えたかと思うと,ようやく伯耆大山が姿を現した)

● 白き湯気 赤く変わりし松葉カニ
(11月6日は松葉かに解禁。ふたを開けると真っ赤に変わった蟹の足がゴロゴロ)

*随想=平百合

芸術って何
大衆受けと、後世まで残るということ・・・・

誰が書いた句かわかると、選句に影響する?

絵をみて、ゴッホが描いたかとわかった後で感動に差があるか?
この二つは逆の場合だけど、・・・・。

やはり何か発表するときはみんなに認めてほしいと思う
多くの人の共感を得たい
人を感動させたい
感動してほしい
どうやったら感動させられるか考える
そこに妥協や、迎合がないか

ゴッホに感動するのは、彼の描き続けたエネルギー
生きている間に認められなくてもあれだけ描きつづけた
描かずに居れなかった
それがすごい

絵の良し悪しは別にして
(いいのとそうでもないのと当然ある)
誰も評価しないのに、あれだけ描き続けられるものだろうか
そこに凡人は感動してしまう

もちろん生きている間に認められた天才もたくさんいる
だから、認められたからといって悲観することはないんだよ

そして、認められないからといって、
がっかりすることもないってわけよ

*ある小春日和の午後に=スライトリ・マッド

期末試験の3日目、いささか退屈
試験監督は後ろに陣取るに限る
窓からは運動場をはさんで小高い山の斜面の中腹に、車体にNANOHANAと書かれた黄色い電車がガタンゴトンと音を立てていく
一瞬目を閉じる

時は戦国、室町の世
京の都に、上京という地あり
西陣に住みける絵付け師、盧生ちゅん之介
働き者の女房おリカとともに、つましくも幸せな日々を過ごしておった
この男、酒好き、女好き、歌好き、琵琶でブルウス、絵を描いたりの毎日
その大胆なる絵柄、花鳥風月処など風雅なるもの描いておれば無難なものを
なんと、薩摩に上陸せしと云ふキリシタンバテレン、フランシスコ・シャビエなる
青い目の毛唐(それもウィンクした)やら裸体のエインジェルやらを着物に描いてしまったから、さあ大変
仏教界からは総すかん、すんでのところで焼き討ちの目にも遭いそうにもなったが
しかし珍し物好きの殿様に目をかけられ、少しずつ注文もふえてきた
ある日の午後、殿様からご褒美にもろうた下総佐原のふさおとめに酔いしれ
一杯が二杯、「月にむらくも〜♪はなに風〜♪ぺんぺん」と
二杯が三杯に
いつのまにやら、うとうとと・・・

カツカツコンコン、ズンズンヅカヅカ
何か近づいてくる
聞いたことのない音
「うおう、見たこともねえ姿じゃが、なかなかええのお」
黒のタイツにハイヒール、ピンクのビスチェで
靴音合わせ行進してくるぞ
よく見ると、いりりん、しゃんぐりら、あそゆみ、たんじゅん、まるたん、ももんがで・・「ありゃりゃあ」
目をこすって見ると偽いりりんの、うちのおっかあまで
「うー、目が回る〜。助けてくで〜!おリカー!」
「あんた、また昼間っから飲んだんだろ。しようがないね。いいかげんにしておくれよ」と横っ面をぺしっとひっぱたかれたちゅん之介であった

※お見知りおきの関東勢の女性陣、勝手に名前使って、お許しあれ!ふさおとめをノックアウトしたい部長でなく、ふさ(昔は)おとめ(だった)にノックダウンされかけてる部長もいいんではないかと!?ス・マ

*丘の上(へ)に=月下村

福岡での楽しい夜を重ねている時も、心の奥底に瞬間、此処にはいない、幾人かの同窓の顔が浮かぶことがあった。
西川君ひとりではない。天災の所以でもなく、様々な人生模様の中でこの場所に来れなかった人の事を思うと、今の自分がどれほどの幸せを抱いているのかが痛切に理解できた。その幸せは不意に涙が落ちるほどに鮮烈に悲しくもあった。
何人かの友とは実に35年振りの再会であった。説明できないほどの歓喜の交響楽が体の中を血とともに巡っていた。
そして、今だに再会を果たせない幾人かの友があることを思い起こして、彼等のために幽かに祈った。
人間、実に35年をかけて届くものがあるとするなら、これから何年が過ぎようとも光が差し込む未来は決して簡単に否定されるものではない。

去年、安藤君が奇跡のように記憶してくれていた歌をリメークして、今回の個展のオープニングパーティーで謳った。
その歌詞をわが同窓のすべての魂に捧げたいと思います。

***

誰が命の意味を知るの? 暗い深い闇に閉ざされた夜も やがて朝日が昇るときに すべての命の 光りが見えるのさ
生きてることの訳も 死んでゆく理由も ただ命の香りの中で 漂っているのが人生さ
誰もがひとりじゃない けれど孤独を囲っている この体を流れる赤い河も いつかは空へ帰るのさ
本当のことは誰も 言わないけれど 答えは風の中に 木々を渡って吹き過ぎてく
たとえあなたに 会えなくとも 心に大事な場所がある
熱く燃える命の限りに いま すべてのものが 此処にあるのさ 此処にあるのさ 今を生きている  あなたを愛してる 今を生きている 今を生きている

■編集後記
今年もあとひとつきで終わろうとしている。全体から見れば、この1年、はっきり言って何ひとつとして良いことのない地球であった。
ただ、私個人にとっては同窓の友と契りを結べた事が、何にも優る、おおきな人生の御褒美であった。
もう、特定の個人を裁いたり、揶揄したり、差別したり、憎んだりしたくはない。
〜すべて裁きの時代をこえて、彼を赦したもう〜
あなたと私がいて、(栗ちゃんじゃないけど)裸になって露天風呂にでも入ってみるがいい。どこにいがみ合う理由があるだろうか?
あなたも私もそこに在る紅葉や山と同じように、木蔭から顔を出した小鹿のように、ただの「人間」という自然物のひとつにすぎないではないか。
私は故アラファトさんの可愛らしい笑顔を、理由もなく愛することができた。理由もなく愛することは、理由もなく憎むこととは全く異なることだと思っている。
今年、亡くなった人すべての精霊に哀悼と感謝の意を持ちたいと思います。(中島、文責。)

無法投区

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