*無法投区/神無月*

〜神も仏もあるのか、ないのか〜

*時事川柳三題=政談

(亡くなった人には申し上げにくいが)
●香田さん イラクにゃミッキーいませんよ

●橋本さん記憶にない はそらなかろう

●野中さん しりません はそらなかろう

●秋雲は 鯖か鰯か 鯛うろこ=一木

●丘メール 裏でにぎやか 俳句評=前鰤

●混浴も 紅葉も寂し一人旅=喋九厘

息子がまだ幼稚園児だった頃、
やって来た熊本県は球磨川から山あいに入った吉尾温泉の混浴一軒宿。
その昔、息子がはずかしがって入れなかった混浴。
先客の若いカップルに一緒に入ろと誘われたのに!

あれから8年の時が流れた今も混浴だった。
平日に一人で泊ると混浴露天風呂は貸し切り、一人占め。
でも、やっぱり一人ぽっちは寂しい。
湯の上の紅葉(もみじ)が一葉ハラリと舞い落ちる…

湯はかけ流し。微かに硫黄の匂い。
仲睦まじきご夫婦に恋人達におススメですゾ!
我らが丘23で性別を越え、混浴できる日はやって来るのだろうか?

*横浜への旅の句五句 平成16年10月12日〜16日=五六二三斎

メール句会に参加してくださったお二方有難うございました。

●秋晴れの離陸も間近空の旅
(福岡空港離陸寸前の句です。秋晴れの中の離陸は心もうきうきしました。)

●秋の聲お祭りマンボ五十年
(横浜に行く飛行機JALの機内音楽番組で、美空ひばりの「お祭りマンボ」をやって ました。昭和27年の歌だそうです!)

●紅葉狩山の吊り橋越えてなほ
(同じく、春日八郎の名曲「山の吊り橋」より、いただきでした。)

●タワーより関東平野秋高し
(10月15日は関東地方は快晴でした。ランドマークタワーという横浜で一番高いビ ルの展望台から、関東平野を見渡しました。富士山もきれいに見えました。まだ、冠 雪してませんでしたが、一週間後に初冠雪だったみたいです。)

●秋晴れの中華街のみ低い空
(中華街だけ人が多くて、空もどんよりに見えました。タワーから見ても、中華街だけ ビルの高さが低くて、別世界のようでした。)

*ラフランス山形2004年秋盛り=資料官

● 黄昏の霧の峠をつばさ行く
(山形新幹線は福島からは峠越え。昔の難所を難なく走りぬける。紅葉まではもう少し)

● 枯れ薄スイッチバックの夢の跡
(かっての難所奥羽本線板谷峠。いくつかのスイッチバックの駅も今はない)

● 秋雨に蔵王連山隠れてをり
(天候不順。何も見えない。おそらくあのあたりかと窓に額を)

● やまがたは果物がたり秋盛り

● 車窓から手に取るごとくラフランス
(ローカル線に乗れば果実畑の中をのどかに走る。左沢線)

● 秋の田をまだ緩やかなり最上川
(あの最上川も上の方は緩やかな流れ。列車はのどかに鉄橋を渡る)

● 一駅ごと淋しくなりき通学線
(賑やかだった車内も一駅ごとに静かに。左沢線)

● みのり田をコトコト走るローカル線
(山形県寒河江市。左沢線)

● 終着駅もうラフランス食べ頃か
(左沢線。終点の駅のホームにはラフランスが実っている)

● 仕事場の資料山積みそぞろ寒
(遊んでいるだけではない。天候不順で思いがけなく寒い思いをする日々)

● 蕎麦どころ座敷を囲み秋の昼
(東根市。昼は蕎麦が定番。蕎麦街道とも言われあちらこちらに旨い店がある)

● ただ広き農家の座敷の走り蕎麦
(西置賜郡白鷹町。看板もない農家の座敷で新蕎麦に舌鼓)

● 蕎麦どころ盛りの多さに驚きつ

● 垣根より金木犀の朝の風
(山形市。朝の散歩で町を歩くと家々の庭先から金木犀の香りが)

● 先輩と酒酌み交わす夜長かな
(山形市。久し振りの先輩と時間を忘れて歓談)

● 山寺の岩を抜け去る秋の風

● 山寺に蝉の聲なし秋深し

● ナナカマド赤く輝き城下町
(山形市。さくらんぼと間違えるような輝き。)

● なせばなる古人の教え秋の暮れ

● 城跡の暗き森影夕月夜
(米沢市。夕方の散歩帰り,西の空に細い月の姿)

● 朝霧の深き城跡ひとり行く
(米沢市。秋の天気の良い朝。盆地は朝霧が定番)

*残夜=スライトリ・マッド

嵐の日々の後
幾千の星の下
月が天空のレールを駆け上るとき
街角に佇む男を照らし出す
帰る家もなく
彷徨う一つの魂
目にはあふれる涙
水銀計がぐんと下がり
満月が夜の闇に映える
どれだけ歩いたろう
夜明け前
西の山の黒い稜線に残光を放ちながら月が沈むとき
再び訪れる寂寥と不安
男は歯を食いしばって立つ
東の島影から日がまた昇るのを待とう

*月祭/天使・堕天使篇=月下村

今年の個展のタイトルまたはコンセプトは天使と堕天使。
去年のイタリア旅行からずっと天使づいてるのだが、その関係の本を読んでると、なんだか堕天使にもすごく興味が湧いてきたのである。
HIERARCHY(階級)の語源は旧約聖書に於ける天使の階梯に由来している。
9段階、上から言うと熾天使=セラフィム、智天使=ケルビム、以下、座天使、主天使、力天使、能天使、権天使、大天使ガブリエルとミカエル。そして最後が可愛いエンジェル、ただの天使達だ。
ところが、最上位の熾天使の中でも一番神に近い熾天使長=ルシフェールが自分の力を過信して神に反逆し、階梯から地に落っこちて堕天使=悪魔となってしまったのだ。
ルシフェ−ルと発音すればなんだかちょっとオシャレな語感も伴うが、エル(神の意)の音を取られてルシファーになっちまったダメな奴だったんだ。 彼に盲従した全天使のおよそ三分の一が堕天使となり、地に舞い墜ちた。
ああ、では彼等のどこがダメだったのか?ここからが私の個人的な解釈になって申し訳ないのだが、おそらく、彼等の最大の欠陥はその空想癖にあったのではないか?未来や過去に想いを馳せる無意味で無駄な想像力である。
今、リアルタイムに目の前の現実を生き切るのが素晴らしき天使達である。昔の事や先の事の心奪われて取り乱してしまったのが彼等、堕天使達だろう。う〜ん、すごく身につまされる思いである。
「天使のように大胆に、悪魔のように繊細に」とは故黒沢明の言葉だったか、本当はこう行きたいのだがあまりにも繊細すぎるんよねえ〜(気が小さいだけか?)。
仕方ないじゃん!どうしても想像を膨らませてしまうんもんな。

■編集後記 『神も仏も〜〜』と言いたいぐらい、ますます終末観が漂う地球規模での忌わしき抗争や異変の数々。もはや立ち止まる術さえ見失われたかに思える世界事情ではありますまいか?
イラクもアフガンもイスラエルもチェチェンもアフリカ諸国、パキスタン以東、北朝鮮、日本まで含めた世界地図に明るい未来は到底予感できません。
ブッシュが再選され、強い力で世界を裁こうとする時代がこれからも続きます。戦後の政治家の中では珍しく人間味があるように見えた小泉首相さえも、何故か、旧聖書第1日目にルシフェ−ルに追従してしまったおろかな三分の一の天使たちのひとりに見えてきました。
神の意味を示す「エル」の発音が失われルシファーとなって地に墜ちた堕天使の群れが、今、世界を席巻しようとしているのかもしれません。レ・ミゼラブルか、嗚呼無情。
今、大切なのはまっこと利益追求よりも情操教育がなんとちゃう? マ・ジ・デ!
(中島 文責  06/OCT/2004)

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