*無法投区/文月*

〜宝物ひとつふたつと終ふ夏〜


●破れ蚊帳 ツルとカメとが入るなり=前鰤

高校時代、誰か(どうしても思い出しません)から謎かけを教えてもらいました。
「破れた蚊帳とかけて目出度いととく・・・その心は・・・・ツルとカメ(吊ると蚊 メ!)が入る」でした。

●風死してフーテンのまたひとり逝く=月下村

私が学生の頃に人気のあった漫画月刊誌に「ガロ」「COM」があった。
そのころ、つげ義春、古川益三、樹村みのり、高野文子等とともに活躍していた漫画家「永島慎二」氏が亡くなった。
「漫画家残酷物語」や「フ−テン」等の代表作がある。
風狂、瘋癲、風来坊、フーテン、今どき流行らない呼称だが、60〜70年代に共感をもって支持していた人達の像が「フーテン」という言葉の中に収斂する。
寅さんも加えていいかもしれないが、最近、自分の周りの尊敬すべき風天が次々と亡くなってゆく気がする。
桂枝雀、山尾三省、高田渡、そしてあの杉浦日向子さんがつい最近亡くなられた。(主な著作に「百日紅」「風流・江戸雀」「百物語」「二ッ枕」など。)

フーテンが基本線にある私にはフーテンが亡くなるのが一番寂しい。
いろんな考え方やキャラクターがあっての世の中ではないか!
グローバルスタンダード、能力主義、拝金主義、競争社会から半歩はずれて、自分なりの生き方を楽しんでいられる人が好きだ。チャレンジする事は、眼を輝かせて生きる為には人間、絶対に必要不可欠なことである。ただし、「負けるが勝ち」ってことも許容できる懐の広さも持ち合わせたおじさんになりたいものである。
自分の狭い度量で人を敗残者だときめつけるなよ、ってところである。
そうじゃないと、「俳句」なんてやってられまへんよん。
江戸の風流を愛し、風変わりな妖怪達との素敵な恋に生きた日向子さん、さいなら・・・
●大江戸の恋ひし雀に夏終わる=月下村

●能登恋路盛夏を待たず廃駅に=喋九厘

また一つ旅心をくすぐる駅が消えて行きました。
石川県は能登半島。のと鉄道の「恋路」駅です。国鉄能登線が第三セクター鉄道で運営されてました。
九十九湾の漁村に沿う美しい路線でした。輪島への路線も消え、能登半島奥への鉄道はすべて消失です。
北海道の廃止線で瀬棚線にも美利河(ピリカ)という駅がありました。
アイヌ言葉でズバリ「美しい」の意味です。
山の中の何もない無人駅でしたが、駅名にひき寄せられました。
もう消滅して20年が経とうとしています。

「おかどめ幸福」くま川鉄道の駅です。
「幸」「愛野」島原鉄道の駅です。
「真幸」JR肥薩線の駅です。「幸崎」は日豊本線です。
何かを探しに九州ローカル線の旅にでも出掛けましょうか?

●目覚めれば満月冴える熱帯夜
●夏ギラリ積乱雲に酔芙蓉
応募作以外にゴニャゴニャ失礼します。
游俳の皆様、携帯での返信が五名様までなので、返事も出さず失礼しております。


*蝶句5句=五六二三斎

 この夏、空梅雨だったこともあり、ミドリシジミ類、オオムラサキなど多くの蝶を初 めて採りました。5月に愛宕山で同好の銀行の部長さんと会い、意気投合!1つ年上 で、最近また蝶集めを始めた方!朝3時半に集合して、夜明けは久住で迎えました。
4回おつきあいしました。現在、92種まで到達!日本には、249種います。北海 道や沖縄にしかいない蝶もあり、近場でこれだけ集めればまあまあです。

●夏の蝶ダーウィニズムの果つる先
夏の蝶の未来はどうなるのだろうか?議論はダーウィンの自然選択説に向きました。

●カシワの木雨風しのぐ夏の蝶
カシワの葉には、ハヤシミドリシジミがいました。久住のカシワの林にはたくさんい ます。7mの長い網で、梢の葉をたたくと、飛びだします。また、止まったところを 網でかぶせます。雨の合間をぬって採集しました。

●中年の夢叶ひけり夏の蝶
小学校、中学校時代に蝶採りをしていました。中学時代からスポーツを始めた関係で 長く中断!40年くらいの歳月が流れて、遂に念願のミドリシジミを採りました。感 激で手が震えました。

●夏の空クヌギ林のオオムラサキ
オオムラサキも初めて採りました。昔は、親が車を持ってない時代ですから、そんなに遠出できずに採れずじまいでした。オオムラサキの食樹は、エノキなのですが、クヌギ林で生息!樹液を吸って生きています。クヌギの梢に止まって、他の雄とはなばなしい雌の取り合いをやっています。飛ぶ姿はまさに鳥のようで雄大でした。

●アカガシの梢に光る夏の蝶
背振山にキリシマミドリシジミを採りに行きました。輝く黄緑色の宝石のような蝶で す。裏の翅は白っぽく見えます。


*2005年 夏草や石炭列車の夢の跡 筑豊編=資料官

*鉄道少年探偵団北九州鉄道巡礼の旅(7月9日土曜日)
写真集出版を記念して鉄道少年探偵団8名は(1名途中から合流)北九州を一周する「北九州鉄道巡礼の旅」を行いました。博多駅に集合して特急「ソニック」で小倉まで,各駅停車に乗換えて鹿児島本線起点の門司港へ。九州鉄道記念館を見学して,雨のためにやむを得ず門司港駅の待合室でビールを飲みつつ,全員リクエストの折尾駅の「かしわ飯」で昼食会。
鹿児島本線を黒崎まで下り,そこから筑豊電鉄に乗り換えて筑豊直方までの「小さな旅」。私も今回で始めて筑豊電鉄を全線制覇することが出来ました。寂しい炭鉱の町であった直方の街中を通り抜けて,JR直方駅へ到着。一同が蒸気機関車を追い掛け回した筑豊線を冷房が効いた快速電車で下りました。あの黒々と尖がったボタ山が今は夏草に覆われた丸い山に変身,一同時代の流れを感じた次第。今は篠栗線がメインになり,かっての蒸気機関車のメッカ冷水峠越えの路線は寂しいローカル線になってしまいましたが,桂川でテ゛ィーセ゛ルカーに乗換えて念願の冷水越に挑みました。少年たちは列車の先頭と最後部に別れてかぶりつき,少年時代にタイムスリップしてきました。
終点原田で鹿児島本線に乗換えて博多に向かいました。途中南福岡では寝台特急はやぶさ号に追い抜かれましたが,メンバーの1〜2名はホームに出てこのシーンをカメラに収めていました。
その後,天神界隈で出版祝賀会の祝宴を挙げて散会しました。

●山笠やまた新幹線の人となり
●旅立ちの駅は博多ぞ夏の朝
●缶ビールソニックに揺られ旅立ちぬ
【注】特急ソニック(博多⇔大分)883系のこと
●折尾駅弁当売りの日焼け顔
【注】折尾駅の東筑軒のかしわ飯は九州を代表する駅弁の一つである
●それぞれの三十年の夏門司港駅
●門司港やひと雨過ぎて日傘あり
●ひとり入る駅前食堂かき氷
●日盛りや変わらぬ流れ遠賀川
●炎天の終着駅に降り立ちぬ
●直方の寂しき老舗や水羊羹
●炎天の人影なき駅の広さかな
●夏草や人も山も丸くなり
【注】山はボタ山
●単線の列車一両扇風機
●うっそうと峠の脇の夏木立
●少年の思い出集う夏の駅
●佐賀平野白いかもめに雲の峰
【注】特急かもめ(博多⇔長崎)は白い885系を使用中である
●雲の峰白い特急駆け抜けり

平成17年7月31日
中 楯  潔


*かごんま日記:" LET'S TURN IT ON " = スライトリ・マッド

7月29日
●熱帯夜最終バスの笛の音や
雨の日も晴れの日も毎日、朝6時ぐらいから夜の10時ぐらいまで、決まった時刻になると笛の音が鳴り響く。市バスの終点で、バスの誘導をしている音だ。昔のバスは2人乗務員がいて、車掌さんが降りてバスの誘導をしていたが、今の路線バスはどれもワンマン化してしまった。鹿児島の市内には、道路事情のため運転手さんだけではUターンできないバス停が5箇所ほどあって、専任の人を雇い、バスの誘導をしているらしい。人呼んでピッピのおっちゃん。バスが来たら笛を吹き、それ以外のときは、木陰で本を読んだり、居眠りをしたり、通りがかりの人たちとおしゃべりしたり、バスが出るまで一服中の運転手さんにつきあったりしている。道路の上にある神社の森が斜面に続いていて、その木々の落ち葉を掃くのも仕事の1つ。誰かが「笛のおじさんのようなのんきな仕事がしたい」と冗談に言っていたが、大雨の日でも傘も差さずにバスを誘導しなければならないし、鹿児島とはいえ真冬となると相当冷え込む。真夏も然り。大 変な仕事だ。ピーッと長く吹くと、バスがバックを始める。ピピッ、ピピッと短く吹くとバックオーライ。ときどき変な音色の笛が聞こえるが、そのときは新米の交代要員だったりする。もし道路が広く周回できる場所だったら、ピッピのおっちゃんもいないし、笛の音も聞こえないはずだ。市も余計な人件費を払うこともない。この一見無駄に思えるようなおっちゃんの存在なのだが・・・。朝の渋滞時、車列に入れそうに無いときに、親切に車を停めて入れてくれたり、いつもにこにこと挨拶してくれることが実に爽やかで、屋根瓦に草の生えた築50年の傾いた民家の一角にある詰め所とともに、周りの風景にすっかりなじんだ存在なのだ。おっちゃんがいないと、きっとさびしく思うだろう。

●夏のジャザ海の向こうにはじけ跳び
ジャザとはダンスと筋トレの運動。かっぱえびせんみたいなもんで、やめられない、とまらないの状態がずっと続いている。最近の曲でゾクゾクしたのは"Waiting for Alegria"だ。クライマックスのところで汽笛の音が入る。窓の向こうに見える海の世界へ跳んだ。

●夏帯に微笑む母の写真かな
夏帯は、母から送ってもらったもの。母は最近すっかり、着物は着なくなったが、お茶をやっていた頃の着物姿の母は凛としており記憶に残っている。最近着物を着ることに挑戦中の私は、母にもう着ない着物や帯を譲ってもらえないかと頼んだのだ。日本人なのに、自分にとっては、着物はまさに異文化の世界で、着付けを習いに行くたびに、面白い発見がある。

●おすそ分け心も躍る西瓜かな
西瓜は隣の老夫婦が食べきれないからどうぞと言われ、遠慮なくもらったもの。お付合いの産物。冷蔵庫に入りきらないので、しばらくそのユーモラスな姿で台所の床にごろりと転がっていた。ジャザ、夏帯、西瓜。この3つの共通点はやはり人生に無くてもいいようなことだ。無くても生きていけるが、ある人にとっては重要な意味を持つようなもの。そう言えば、月下村ちゅん葱部長が1年前遊俳倶楽部を起ち上げたとき、いみじくも言った言葉が確かこれだ!「俳句を作るという、こんな人生に無駄なことを敢えてやろうではありませんか!」その通りだと思う。『お楽しみはこれからだ〜!』これって誰が作ったキャッチコピーだろ?うまい!って感じ。たくさんの無駄でわくわくするようなことをやってみたい。大安吉日

Let's turn it on, and get everybody thinking, thinking, thinking,
Let's turn it on, everybody song and dancing, dancing, dancing,
Let's turn it on, all the people got to get the right impression
Turn it on, turn it on, turn it on
Why don't we turn it on and let's stop everybody fighting.

Let's get it on, let's get everybody jumping,
Let's get it on, and get everybody stamping,
Let's get it on, all the people got to get the right impression,
Let's get it on, turn it on,
And let's get everybody dancing.

Let's turn it on, yeah
Nobody is giving it up, yeah, yeah, everybody is living it up, yeah
Everybody is living it up, living it up, let's turn it on,
Yeah, nobody is giving it up, everybody is living it up, yeah,
Everybody is living it up
Let's turn it on, turn it on, yeah
Dancing, dancing, dancing, dancing
Let's turn it on, and get everybody swinging,
Let's turn it on, get right into that lovely feeling,
Let's turn it on, yeah, come on all you people get together,
Turn it on, turn it on, and let's get everybody dancing.

Turn it on and get everybody happy,
Let's turn it on, let's make everybody happy,
Let's turn it on, come on all you, all you happy people together,
Turn it on, yeah, turn it on, turn it on
Let's make everybody crazy!

*"LET'S TURN IT ON" by Freddie Mercury(1985) より引用


■編集後記
文化と総称されるもの、歴史的建造物や伝統的な祭事、習慣、遊び、道具、有形なもの、無形なものでも何にしても、時代に取り残されてゆくものを今に残すべきかどうか、その答えはそれが必要なものかどうか、ではない。そのものに夢を抱き続けている人間がどれだけ多く存在するか、である。
不要、無能なものにどれだけ多くの人が愛情を注いでいるか、という問題である。その愛情は、当の人間がそのものとどれだけ深い付き合い方をしてきたか、という事でもある。深く付き合ってもいないものに愛情は抱けない。
時間とはそういうものだろう。歴史とは、物語とはそういうものだろう。もし誰かが不必要になったものを何の躊躇いもなく消去できるとすれば、おそらく彼はそのものを使用していただけで必要とはしていなかったに相違ない。
使用するだけで、何も必要としない人生とは、また、寂しい人生である。
あなたはどんなものを愛し、深く付き合ってきましたか?
(中島、文責。)

無法投区

創刊号 第二号 第三号 第四号 第五号 第六号.新年号 第七号 第八号 第九号 第十号 第十一号