*無法投区/雪待月*

〜銀幕の時雨となりし名画館〜


*いずくへか消えにし謎の投句なり=メゴチ

メゴチです。こんばんは。
おかしいと思いつつほったらかしていた自分が悪いのですが
今回は選句の案内がなかったのですよ!
30日の1:17に投句したはずだったのですが・・・
届いてなかったようで・・・

A 枯葉舞う日なたと日かげ明と暗
(葱:虚無僧の明暗いかに寒修行)
A 冬立ちて窓のぬくもり内と外
(葱:マドンナも閉ぢし寒さや冬の窓)
A 冬紅葉グリーン奥にミスショット
(葱:自営業ゴルフもできず枯葎)
B 神の留守提案相手するのみか (回文)
(葱:恋喧嘩こんなの何個寒稽古 怪聞)
B 今月は当てにできない神頼み
(葱:今月もミスを重ねて神遊び)
B ドラコンを狙って取れず時雨かな
(葱:パソコンのせいにもできず片時雨)

※葱:私にもその謎は解けませんでした。おそらく、うっかりと削除したものと推測されます。申し訳ない<(__)>


*砂太の現代俳句選

「空飛ぶマンタ」:杜 アトム

第一章 森の扉 
土筆摘む山に入日の触るるまで
やせるお茶やせる石鹸万愚節
万愚節親が子供に反抗期

第二章 孔雀の夜会
弟の造りし酒を花に酌む
※吉野二句
寺に寝て夢に聞くなり花の声
天平の落書残す花の寺

第三章 空飛ぶマンタ
夜の空のどこか青くて桜狩り
花冷えや波の尖りのひとしほに
花冷えや耶蘇斬罪の涙石

*思い出雑感=男剣士

もうあれから14年経つのか。アメリカ西海岸で8週間のアパート暮らしをしたことがあった。
その時、スカイダイビングを初めてやった。国際電話で家内に伝えた。観覧車が嫌いなのにできるの?

思い切ってやった。風切る音で何も聞こえない、そして傘が開いた瞬間、鳥の声も車の音も聞こえない。
ただ傘がパタパタと鳴るだけの静寂・・・その時、アポロの乗員が「神の存在を感じた」という言葉を実感した。

その直後、傘が切り離された。後で聞くと6秒くらいの再落下だったらしい。その6秒の間に、子どものこと、妻のこと、 親のこと、自分の人生が走馬灯のように駆け巡った。

帰国してから約1ヵ月後、そのスカイダイビング用飛行機が墜落したという記事を目にした。
死傷者30人。墜落高度が低かったんだろうな。高かったら飛び降りてたんだろうな。

自分を担当したタンデム・マスターは、無事だったのだろうか。


*三都合同句会=葱男

句会

 東京個展/句会には22人もの人が集まってくれました。 「めじろ遊俳倶楽部」からは二六斎宗匠、「はるもにあ」からは満田春日主宰、俳句喫茶店「つぶやく堂」からは 御主人のやんまさん、「旧暦日々是好日」の高月美樹さん、そして「蘖の会」のなをさん。
錚々たるメンバーに加えて、我が「丘ふみ游俳倶楽部」からも君不去、入鈴、メゴチさんが参加して盛大な会となりました。
結果も葱男句が地位に輝くという快挙でまさに言うことなし! ばってん、二六斎宗匠からは「自分の個展句会で地位とは、それはちょっとやりすぎでしょう!」とバッサリ斬られてしまいました。

東京句会

天位
※祝・中島葱男作品展
●澄む秋の天使の筆を借りたるか  春日
◎静、渡、二、ぼ○淑、白、な、の=12点

地位
●表札に母の名残る秋燈   葱男
◎義○ぽ、括、淑、白、茶、静、入、恵、の=11点

人位
●すすき原色も重さも持たぬ風  白馬
◎メ、恵○鉄、ぽ、義、満=8点

***********************************

また、博多、京都、東京の三都、全参加者39名の78句から合同句会を企画し、この度の個展ツアーの総決算としました。
わが「丘ふみ游俳倶楽部」の夏海さんの句が見事、天位に選ばれ、この快挙には部長の私としても鼻高々の思いで、またまた大変に嬉しい結果となりました。

三都合同句会

天位
●底紅や遠く住む子の恋のこと=夏海
○佳、葱、入、括、二、白、之、義、春、御、君、満=12点
(葱:「紅」という色の持つ艶っぽさを我が娘に感じた時の母の戸惑いがよく伝わってきて愛おしい句です。 白:母親の心配とちょっとした嫉妬。)

地位
※祝・中島葱男作品展
●澄む秋の天使の筆を借りたるか=春日
○淑、二、白、な、ぼ、五、真、男、海、分=10点
(な:とても美しいお句と思います。「澄む秋」の透明感。天使の翅がふわぁっと空気をかき混ぜて筆がなべての色を描いているかのようです。 男:秋の空の浮雲でしょうか。 海:澄む秋の空気の軽さ 天使の羽根の無重力 その羽根の筆ならふしぎな、素敵な絵が描けそうです。)

人位 ●むつ湾は林檎のかたち七竈=二六斎
○ひ、葱、括、夏、な、雪、義、五、喋=9点
(葱:どう見ても、林檎に見えます、あっぱれ! 夏:林檎の形!作者の郷土愛みたいなものが伝わります。 な:「むつ湾」を見たことはありませんが、「林檎」のかたちに違いないのだと納得してしまいます。いつか、見に行ってみよう!って、思いました。「七竈」の硬い字が、ななかまどの強さ、青森の勁さも表わしていて骨格がしっかりしているお句と感じいりました。)

三都句会参加者(敬称略)
■博多:砂太、夏海、雪絵、木陰、スライトリ・マッド、五六二三斎、男剣士、喋九厘、(オブザーバー:和門、幸一、龍司、香代子)
■京都:電車、ひびき、信之、真弓、御主火、佳音、和彦、信十日、分葱、葱男、(オブザーバー:香世、映子)
■東京:二六斎、ぽんた、静、鉄馬、満丸、やんま、括弧、白馬、ぼくる、義風、春日、茶箱、恵子、淑子、のりこ、なを、海渡、海龍、入鈴、君不去、メゴチ、(オブザーバー:かすみ、風央子)

二六斎


*2006年  晩秋 三都物語=資料官

その1 そして神戸♪♪
●六甲を越えて木枯らし新空港
(神戸で木枯らし1号に出会った。今年2月に開港した神戸空港は三宮からポートライナーで18分。木枯らしと並んで海を渡り,早朝の物見遊山の空港見学。六甲の山並みがだいぶ遠くに感じた。)

●立冬や和田岬行きブルーカラー
(山陽本線に支線がある。神戸駅の隣の兵庫駅から和田岬駅までの一駅間を,工場への通勤客のための六両編成の電車が朝晩だけ走る[10時から17時までは走らない]。和田岬に電車が着くと工場へ向かうサラリーマンたちはただひたすらに工場へ向かう。彼の地,平清盛が大和田の泊(兵庫港)築港を図った地であり,明治の頃には国策による官営兵庫造船所が建設された由緒ある地とのこと。)
電車


その2 東京だよおっかさん♪♪♪
●湯島から上野を巡る菊日和
(鴎外の小説「雁」では湯島から無縁坂を下り不忍池への散歩道が登場する。11月の丘ふみ東京大会は不忍池の傍でしたので,このルートで行ってみようとも考えたが,天気は雨だったし色々と忙しくて実現出来ず。この道は定番の散歩道のひとつ。)

●菊薫る新宿御苑通り抜け
(皇室の伝統を受け継ぐ新宿御苑の菊花壇展はなかなか立派なもの。千駄ヶ谷門から御苑に入り,新宿門に向かってさらっと通り抜けるのが心地良い。)
菊


●しのばずへ五拾五人の神の旅
(今年の丘ふみ会は55名の参加があり,例年にない盛り上がりを見せた。遠来の福岡組には大変丁寧に会を設営していただき感謝しています。東京にいても卒業以来始めて会う人もいて大変新鮮で楽しかった。)

●マドンナのままのほほゑみ実むらさき
(秋の紅葉も良いが,「紫式部」にたとえた紫色の実の清楚な美しさも捨て難いもの。)
紫


●良妻も賢母も何処へ神の旅

その3 青葉城恋歌♪♪♪♪ 【注】この歌夏の歌
●白河を越して時雨に入りにけり

●みちのくの盆地を渡る冬の虹
(東京を出た東北新幹線「はやて・こまち」はあっという間に,栃木−福島県境を越え,時雨雲の下に突入して陸奥(みちのく)へと足を踏み入れた。晴れると良く見える磐梯,安達太良,吾妻,蔵王を眺めることは出来なかったが,時雨を抜けると盆地を渡る虹が迎えてくれた。)

●村時雨越へてくりでん着きにけり

●みぞるるやくりでん送る老駅員
(いよいよ来春の廃止が迫った「くりはら田園鉄道(通称くりでん)」を見るがために仙台駅から高速バスで1時間少々,岩手県境の栗原市まで出かけた。別れを惜しむ乗客たちを乗せた「くりでん」は若干送れて沢辺の駅に到着した。)
くりでん


●路地裏の牛タンの匂い夕時雨
(仙台に戻り夕食は定番の牛タン定食。国分町の路地にある老舗の牛タン屋は結構込み合っていたが,一人客でもカウンターでゆっくり堪能することが出来た。外に出るとまた雨が・・・・)

●晴れをんな陰に時雨をとこあり


かごんま日記:「北辰斜めに」 = スライトリ・マッド

2006年11月25日(土)
*合唱の一日冬の夜皿洗ふ
今月は、歌の月。先週の日曜日は所属しているめぐみコーラスの定期演奏会だった。普段は週1回2時間の練習だが、日が迫るにつれ、2ヶ月前から練習日が増やされた。最後の3週間は一日おきに集まり週10時間。年配の方も多く、様々な家庭の事情を抱えておられるにもかかわらず、みんな文句も言わず、練習に励んだ。プログラムが出来上がって来て、よく見てみると、歌う曲が21も。すべて暗譜できるのだろうか?いや、せねば!お金をとってわざわざ貴重な2時間を割いて来てくださる人たちのために、いい加減な気持ちで舞台に立つのは、申し訳ないこと。ソロで歌う訳ではないから、合唱は誤魔化しがきくのではないかなという気持ちが、合唱を始めた当初は、正直言ってあった。が、違う。客席から見ると歌っていないとすぐにわかる。自信無さそうに歌うのもみっともないし、誤魔化せない。間違うとハーモニーが崩れる。心を込めて伝えたいことを明るい声で自分の身体から飛ばす。ピアノの音を聞く。他のパートにも耳を澄ます。そして自分自身が楽しむ。結果は、大成功で。本番で最高の力を出せるなんて信じられないような話で。みんな日頃の行いがよかったのかなあ?指揮者田中さんの力も大きい。人柄がチャーミングで私の大好きな女性の一人だ。彼女の笑顔が私たちの笑顔を作る。みんなで一つのことをやり遂げたという達成感。打ち上げのパーティでの38名の皆の顔の晴れやかだったこと。終わりよければすべて良し!いい気分で帰宅したら一日空けた台所に汚れた食器の山が・・。

北辰斜にさすところ
大瀛の水洋々乎
春花薫る神州の
正気は罩る白鶴城
芳英永久に朽せねば
歴史も古りぬ四百年

紫さむる黎明の
静けき波に星数え
荒涼の気に咽ぶとき
微吟消え行く薩摩潟
不屈の色もおごそかに
東火を噴く桜島

悲歌に耳藉す人もなく
沈み濁れる末の世の
驂鸞の夢よそにして
疾風迅雨に色さびし
古城の風に嘯ける
健児七百意気高し

*神の月(かんぬてい)哭きうた響く島の冬
今日は、男性コーラス楠声会の演奏会。前から要チェックと思っていたコーラス。県の合唱祭でトリを務め、光っていた。昭和28年に発足したというから私と同い年のコーラスグループだ。めぐみの歴史も古いが、楠声会も古い。鹿児島大学男性合唱団フロイデ コールのOBで結成された上は80代までおられるおじさま合唱団。お揃いのブラックスーツにグリーンのタイが決まっていた。総勢114名の重厚な響き。第2部「わが青春の愛唱歌」の冒頭で歌われたのが、上掲の曲「北辰斜めに」だ。七高寮歌で、北辰とは北極星のこと。来春公開予定の神山征三郎監督の映画のタイトルにもなっている。その映画製作に関わりをもって活動している丘ふみメンバーもいたなあ。随分昔に見た神山監督の「忠犬ハチ公物語」も地味ながらいい映画だった。成功を祈りたいものだ。
第3部「奄美三抄」では、島唄が歌われた。ガラリと雰囲気が変わり、三線、ちぢみ太鼓、指笛が鳴り響く。挿入歌として島唄「行きゅんにゃ加那」が奄美出身の歌い手さんによって歌われたが、まるで外国語のよう。とても同じ国の言葉とは思えない言葉の世 界。でも心地よい独特の音階とリズム。「奄美三抄」の作曲者の伊地知元子さんも来ておられ、紹介されていた。島では、祖先を敬い、島の安寧と繁栄を祈る冬祭りが、今でも行われているのだそうだ。

南の翼この郷に
三年とどまる鵬の影
行路は万里雲湧きて
雄図もゆる天つ日や
首途の昔叫びにし
理想の空に長駆せん

ああ若き日の光栄は
今年十四の記念祭
祝うもうれし向上の
旅の衣にちりかかる
樟の下露清けらく
今日南溟の秋にして

*冬うらら久遠の像をそびらにし
私がよく本を借りに行く県立図書館の上に「北辰斜めに」の碑があることを知ったのは、つい最近のこと。石垣で囲まれ、まわりに堀割があり、鯉が泳いでいる。昔は島津のお城、鶴丸城があったところ。明治から昭和にかけては、「第七高等学校造士館」。
今は黎明館と県立図書館になっている。七高はいわゆる戦前のナンバースクールの一つだ。順番に東大、東北大、京大、金沢大、熊大、岡山大、鹿大、名大となるが、第○高等学校の後に「造士館」のおまけがついているのは、七高だけだそうだ。「造士館」は18世紀後半に薩摩藩主、島津重豪が造った藩校の名前で、明治4年に藩校が廃止された後も、県立中学、高等中学、尋常中学校、高等学校の校名に、その名前は残され、受け継がれて行ったのである。後世に残したいという気持ちが強かったのではないだろうか。また七高は全国で初めての天文台のあった学校とのこと。鹿児島の「天文館」は、博多で言うなら「中洲」。天文館という地名は、重豪が18世紀後半に天文学を奨励し「明時館(天文館)」を作ったことに由来している。江戸の初期から薩摩藩は財政が苦しく、藩校を作る余裕などなかったはずなのに、学問に熱心な重豪は作ってしまったのだ。鹿児島の地が明治の偉人を多く輩出した所以はそういうところにもあるのかもしれない。お金はなくても出すべきところにポンと出す剛毅なお殿様だったんだろうな。
県図書の中庭に階段があり、あがったところに黎明館が隣接している。敷地内に、学生服にマント姿の三人の若者の「七高久遠の像」と「北辰斜めに」の碑がある。携帯を打っている若い人が銅像を背に座っていた。

*「北辰斜めに」作詞:簗田勝三郎 作曲:須川政太郎 (大正9年)より引用


■編集後記
今月は個展ツアーが盛況のうちに無事終えられた事もあってか、心にも余裕が生まれ、久しぶりに編集作業も焦らず、楽しく進める事ができた。
何ごとか自分としては大きな仕事を成し遂げたあとは、生活の循環がとても心地よく、そうなると人間おかしなもので、7月にはあんなにスランプで一字一句も浮かばなかった俳句が、このごろは季節と生活の狭間からこぼれるようにぽろぽろと産まれ始めた感がある。

君不去さんも書いていたが、「肩の力を抜くところでは抜いて俳句を楽しんでおられる皆さんに接することが出来て」というあたりに俳句の秘密の入り口は見つかるかもしれない。
気負わずに、たとえ誰かに叱られても(?)、それを心地よく感じる事ができれば佳句が生まれること間違い無しである。

今月から雪絵さんが新しく会員に加わりました。高校の時は五里さんと同じ生物部、現在薬剤師さんのお仕事をされている、癒し系の美人ちゃんです。

●冬うららマドンナひとりまたひとり

な〜〜んちゃって、そんな事ばかり宣うとまた誰かさんにアカンベされそうなので、このへんでおしまい。


無法投区

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