*無法投区/雪消月

〜雪降り積む犬の眠りのかたちして〜


*ペナン島からのメッセージ=葱男

マレーシアのペナン島に長期滞在している友人から一通のメールが届いた。
もう20年も前、私とその友人はタイのチェンマイいう古都で偶然に知り合い、会える機会が少ない現在でも変わらぬ友情を育んでいる。

ところで今回、彼のメールには、素敵な写真とともに、一篇の不思議なメッセージが添付されていた。
全篇英文で綴られ、LIFEというタイトルが付けられた詩の内容をきちんと理解したかったので、早速、英語が得意のスライトリ・マッドさんに頼んで和訳をしてもらった。
それは、彼 の外国の友人が、不特定多数の未知なる同胞に宛てた美しいメッセージだった。

私は彼や彼の友人が暮らしているジョージタウンの町並みを憶い出していた。
その昔、目的のない貧乏旅行の果てに辿り着いた小さな島には、おどろくほどたくさんの映画館や大好物のケンタッキーチキンの店があった。
長い長い無為の旅の途上で、南国の緑にも海にも腹いっぱいだった私には、そんな猥雑な都会の喧騒さえむしろむしろ好ましく思えた事をよく覚えている。

●この旅も終わりにしよう斑蝶  葱男

******************

LIFE

生きてると、誰かがいなくて、とてもさびしく思う瞬間がある。
そんな誰かとは、その人を抱きしめるだけであなたの夢が叶えられると思えるような大事な大事な人。

幸せの扉が閉じられ、別の扉が開いたとき、私たちはいつも閉まった扉の方を見続けたりする。
そして、今開いたばかりの扉の大切さに気付かない。

見かけで判断しないでね。
それって間違っていることがよくあるから。
裕福であろうとしないこと。
それは消えるものだから。
あなたと笑って話し合える誰かを捜し求めて。
笑うとね、たとえその日が悲しい日であったとしても、それを楽しいものに変えることができるよ。

どんなものでもあなたが見たい夢を、夢見ること。
どこへでも行きたいと思うところへ行くこと。
自分が欲しいと思うものは何でもいいから、求めること。
なぜなら、人生って、あなたがどう形づくるかで、ほんとにユニークなものになるんだから。

幸運な人って、必ずしも最上のものを持っているというわけじゃない。
そういう人は、旅の途中で目に見えるものの一番良いものを、ただ求めているだけなんだ。

一番美しい未来を開けるかどうかは、過去に執着しないという気持ちが肝心。
過去の過ちやあなたを傷つけた全てのことを乗り越えられない限り、過去からは離れられないものだから。

精一杯生きて。
つらいときであっても、いつも微笑んで。

このメッセージを、あなたを必要としている人に送ってあげてください。

私がそうしたように。

あなたの人生を変えてくれる人に・・・。

・・・あなたが本当に誰かを必要としたとき、あなたを笑わせてくれた人に。

あなたが落ち込んでいるとき、あなたを励ましてくれる人に。

あなたのお友だちに・・・。

あなたの傍を通り過ぎていっただけの人にも・・・。

あなたを励ますためにあなたを誉めてくれる人に。

あなたに傍にいて欲しい、と思っている人に。

二言か三言、励ましの言葉を必要としている人の一日に、お日様の光を当ててあげられる機会を絶対に逃さないで。

生きるっていうことは、ただ息をすることが積み重なってできた年月ではなく、あなたにふっと息を呑ませるような瞬間が集まったもの。

生きるってすばらしい!!!

特にあなたのような親友がいればなおさら。

あなたの人生の全ての一瞬、その一瞬一瞬が喜びで満たされますように。


*2008年1月=入鈴




一月二十四日
羽田発青森へ1205便
青森発9時45分便が10時05分に出発変更で待機中。
なんとなく千葉ニュータウン駅から羽田行にのったものの、東北新幹線への変更も考えていました。
京急蒲田で欠航をキャッチし、品川へユーターン。
急ぎ新幹線の切符を、大人の休日割引(数百円?)で購入しました。
1時ごろのはやてにのれたので、午後5時前には青森駅かなあと。ところがドッコイショ。

八戸から、汽車はストップ、野辺地あたりの強風(その頃下北カン八、暴風雪、強風波浪、雪崩、豪雪、ありとあらゆる警報が出てまってじゃて)で、国道4号線もバスはゆかない。
3時間かけて、七戸経由の2百何号線で青森駅さバス代行運転となりました。

汽車止まり隣の席に老婦人北帰行への辛きを語る

鳥政のおかみさんによく似た、上品な眼鏡の人とバスが一緒になりました。
お父さんは広島の方で、戦後お母様の実家のある青森へ。 終の棲み処を得られたとのこと。色々な話が尽きずあっという間に青森駅でした。

一月二十六日
※地吹雪の鯵ヶ沢にて
群れ鴉時化の浜にて宙翔ける 紙のつばさの千鳥の様して

地吹雪ツアーとかあるんですって。五所川原を経て相変わらず猛威を振るう、低気圧の日本海側の鯵ヶ沢へ。あったかい一泊の温泉だったはずだけど、時化のため、新鮮なお魚は料理に出ません。

一月二十七日
野天の湯に地吹雪止まぬ 見ま欲りし薔薇の指する女神の暁(あかとき)

※早々に宿を出て青森へ引き返す途中の道の駅もりたにて
わの作る馬鈴薯めへとゆずらざる ゴッホの農婦地吹雪の店に

2008年 睦月


*十六年振り年末帰省去年今年=資料官

十六年振りに福岡で正月を迎えた。暦の並びも良かったし,まだ親が元気なうちに大晦日を過ごすことも親孝行かと思い実行した。とにかく人は多いし,料金はすべからく高値,身も財布もほとほと疲弊していたのは間違いない。
帰省した当日の晩,鉄道少年探偵団のメンバーが忘年会を開催してくれたというかちょうどその日にぶつかったというか。宴会場所はミニ丘ふみ会の場として定着しつつある博多駅前「てっ平」。このメンバーにとって実り多かった平成19年を締めくくるにはふさわしい宴となった。さてさて20年は何するぞと大いなる夢を抱きつつ・・・・・・・



●去年今年寝台特急日本海
晦日の夜,時刻表を眺めながらしばし夢想にひたる。上下2本の寝台特急日本海はひたすら日本海に沿って走る。新年を迎えるのは,青森行き下り1号は日本海の荒波が近い柏崎付近,3号は金沢近辺,大阪に向かう上り2号は新潟平野のど真ん中,4号はまだまだ庄内平野を走る。今年の3月のダイヤ改正では寝台特急も全国的に大幅削減,この日本海も1往復に削減される。
「去年今年貫く棒の如きもの(高浜虚子)」という有名な句があるが,晦日を走る棒のような寝台特急を連想してしまう。



●着ぶくれの父もともなひ墓参り
●着ぶくれの父を待たせて墓そうじ
墓参りの予定の朝,あいにく外は雪模様。父も母も墓参りには付いて行くというので,まずは完全防寒装備。めっきり痩せた父もすっかり着ぶくれ。さりとて我々が墓そうじする間は車の中で待機させた。運良く墓掃除の間は雪も止み,いかばかりかの日差しも。北風が強く線香の火をつけることに苦労したが,無事一同並んでご先祖様へのお参りを済ませることができたのです。

●年の夜やよろよろ暮らすちちははと
いつもは早く寝るという年寄りも大晦日は紅白を最後まで見て,ゆく年くる年の番組の除夜の鐘に耳を傾けた。とうとう平成も20年,昭和も遠い昔となった実感ひしひし。

●初景色東宝満西背振



●ちちははに小さく切りけり雑煮餅
●年玉や甥っ子姪っ子従兄の子
●初夢や老いて地球を駆け巡る
福岡の正月風景であります。

●天山のきりりと鎮座初景色
●見慣れたる天山もあり淑気かな



●八十の母を上座に屠蘇祝う
●金粉を沈ませ振る舞う年始酒
●年始酒金粉泳がせ振る舞へり
佐賀の正月風景であります。


かごんま日記: "ACROSS THE UNIVERSE"= スライトリ・マッド

2008年2月4日(月)

*冬の日やジョンのマントラ流れ来る
Words are flowing out like endless rain into a paper cup,
They slither wildly as they slip away across the universe.
Pools of sorrow, waves of joy are drifting through my open mind,
Possessing and caressing me.
Jai guru deva om.

Nothing's gonna change my world,
Nothing's gonna change my world,
Nothing's gonna change my world,
Nothing's gonna change my world.

今日は、40年前にロンドンのアビイ・ロードスタジオで、我らがビートルズの"Across the Universe"が収録された日。
私が福岡市の油山のよく見えてた花畑中学校に通ってた頃。中3といっても、のんびりした時代であんまり勉強もしなかった。兄たちの影響を受け、ビートルズをよく聞いていた。私が高1のとき、お年玉など貯めたお小遣いで、初めて買ったレコードが、「アビイ・ロード」。横断歩道を4人で歩くジャケットのレコードが欲しくて、わくわくどきどきしながら、天神のヤマハまで行った。どこにも寄り道もせず、西鉄大牟田線に乗って、大事に抱えて帰ったことを覚えている。"Across the Universe"は、 1969年のアルバム"No One's Gonna Change Our World"と、1970年の"Let It Be"でリリースされたが、この年、ビートルズは解散。リフレインで出てくるマントラは「ディーヴァ導師に感謝を捧げる、オーム」の意味だとか・・。ジョン・レノンの一時期心酔したインド思想に対する訣別だという説もあるが、さだかでない。日本語の阿吽も、サンスクリット語の始まりと終りを意味する言葉だが、梵語の aum のことだそう。すなわち、om =aum = 阿吽 ということね?

*光年を旅する調べ冬の星
Images of broken light which dance before me like a million eyes,
Thay call me on and on across the universe.
Thoughts meander like a restless wind inside a letter box,
They tumble blindly as they make their way across the universe.
Jai guru deva om.

Nothing's gonna change my world,
Nothing's gonna change my world,
Nothing's gonna change my world,
Nothing's gonna change my world.

今年で設立50周年を迎える米の航空宇宙局(NASA)が、今日、この"Across The Universe"を北極星に向けて発信するとのこと。米東部時間の午後7時からだが、時差があるので日本では明日の午前9時になる。同曲のレコーディング40周年にあたり、今回のプロジェクトはそれを記念してのもの。NASA の発表によると、楽曲を電波に乗せて光速と等しいスピードで発信するとのこと。1秒間に約30万キロメートルの速さ!しかし、目標となる北極星は地球から、なんと431光年の彼方!!メッセージが北極星に到着するのは2439年ごろだって!!!ふ〜、気の遠くなる話だが、夢があって、わるくない。北極星にクマさんみたいな宇宙人がいて、返信してくれたらもっと楽しいだろうね。

*きたんぼしこぐまのしつぽ冬銀河
Sounds of laughter shades of love are ringing through my open ears,
Inciting and inviting me.
Limitless undying love which shines around me like a million suns,
It calls me on and on across the universe.
Jai guru deva om.

Nothing's gonna change my world,
Nothing's gonna change my world,
Nothing's gonna change my world,
Nothing's gonna change my world.

Jai guru deva om,
Jai guru deva om,
Jai guru deva om...

北極星は2等星。ひしゃくの形をした、こぐま座の尻尾の先にある星。北極星は北の天極から約1度(月2つ分)離れているものの、肉眼では、ほとんどその位置を変えず、いつでも北の空に見えるので、方角を知るのに便利。鹿児島では、「きたんぼし」、「きたんひとつぼし」とか呼ばれる。北極星と言う名前が登場したのは、羅針盤による航海術が発達してからであるが、それまでは「北辰」、「妙見」などと呼ばれ、仏教の信仰と深いかかわりを持つ星だったそう。鹿児島県霧島市隼人町から天降川(あもりがわ)沿いに霧島方面に北上すると、妙見という温泉街がある。昔、妙見菩薩を祀る妙見神社があったところ。妙見はかっての大隈国の中心地だった国分のちょうど北の方角に当たる。国分から見ると、妙見神社の上空に北極星が輝くのだ。よし、あったかくなったら、妙見温泉まで足をのばしてみようかな?

*"ACROSS THE UNIVERSE" by BEATLES (1968)より引用


■編集後記

地球温暖化が云々される昨今だが、今年の冬はよく雪景色を見る事ができた。
節分の前後、京都も一番寒い時期だけど、雪の晨の街の光景はとても美しく、清清しい。
水はそのかたちを器に従うが、雪は万物の上に平等に降り積もって万象を顕わしてくれる。

先月の「め組」初句会には宗匠へ、京都の御菓子司「亀屋清永」の「清浄歓喜団」なる唐菓子を持参したのだが、悪餓鬼の頃にそこいらの葉っぱに積もっている雪を掬って食べた雪団子は、さしずめ「清浄寒気団」とでも呼びたいような美味な食べ物だった。

ああ〜、今の子もそんな事して遊ぶのだろうか?
それとも中国製のインスタントの餃子ばかり食っているのだろうか。
(文責 中島)


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