*無法投区/七夕月

〜おたがいに座って話そ秋の星〜


*夏を飲み喰いするぞ!=葱男

今月は夏ばて、夏痩せ(する訳ないか・・・)解消に!
飲食に関する句を思いつくまま詠んでみました。
倶楽部員の皆様のお口に合いますかどうか??? どうぞ存分に召し上がって下さい。

●のどごしの渓流すべる夏料理
●冷や奴竹紙に君の名を見つく
●水羊羹似せ紫の戀さなか
●蜜豆の逢えねば募るいとほしさ
●江戸前のこはだ恋しや柳影
●太白のまるかぶりせし胡瓜かな
●泡こぼしはしやいでまはるラムネかな
●彩雲は湧く湧く香魚は笊に跳ね
●仲良しの又従兄弟です甜瓜
●生簀舟利休白茶の雨細し
●青二才蕃茄の赤き汁つけて
●羅馬でも日本語通す心太
●国産に限り土用の鰻かな
●振り込みを確かめてのち冷素麺

なんだか、食い気は色気にも繋がっているようで・・・お粗末さまでしたあ〜。 m(__)m


*前置きの長い闘病記=入鈴

 プライヴェイトなお題はどうかと思いましたが、こういう素人の目で見たことも、ある一面役に立つのではないかと。 今はインターネットで検索して知識を得る、少し前までは新聞によって情報を得るということが流行って、という言い方をしてしまう。
なぜなら、芥川の小説に藪の中ってのあるでしょう?
書き手のフィルターが、それぞれ違ってるのは当たり前だとしても、中立性というのをあまりにも信じていませんか?
 新聞の文化面での美術評論など、30年前私達は指導教授から読んじゃいけません、とは言わない、読む必要ないです、 なにも理解していないことすらわからない記者の書いたものは毒にも薬にもなりゃしないと聞かされました。
 そして夫の職業柄、実際に見たことの詳細(例えば獄中の横井ひでき、ホテルニュージャパンの顛末)が聞けました。が後日、さらっと表面的にまとめあげられている記事にぶつかる。
しかも多くの人がそれで、納得したがっているということも。
(早書きが売りの優等生の女性記者のパターンは、先につまらない落ちが頭にあるから陳腐な質問がよくあったそうです。アエラとか現在は、いけてると思うけど。)
 以下は、あまり中立性も落ちもないってことで、読んで頂けたらと。

 10パーセント腫瘍と言われる、褐色細胞腫というのは90パーが良性。
5年たってやっと転移が認められる、きわめて緩慢な経過を辿る悪性のものは10パーセントということです。地方の200床ある病院で5年間に1,2例あるくらいの珍しい病気。さらにまたその10パーセントに我子がひっかかったとしたらという恐怖。

  吾子の身は緩慢の増殖腫抱きをり夫の号泣を母性拒みつ

  返歌
  子の力信じその日を強くあれ母性ゆえとは言いもえずして  康子

  キャンパスに葉桜のもと吾子とゐて城に歩みし父思ひ出づ

  返歌
  子とともに眺む景色の穏やかにあれと願いて雨音を聴く  康子 

 短歌は嘘も作りやすいが、手紙としては最高。心強いものがある。
内分泌科に40日間、カテコラミン血圧コントロールのため入院して、3月よりずっと続いていた若年性高血圧の症状がとれる。バスですぐの大学院に外出許可を得られて、通学する。が、受講中止願いの6科目出さざるを得ない。
 母は絶対来るなという子の主張に、家族だからと押し切れという親戚の医者からの忠告どおり、CTもMRIもすべて母親、目を通す。でしゃばるあまり、飯塚麻生病院にいる甥の自慢などするうち、教授、主治医が偶然福岡出身とわかる。私筑紫丘よーみたいなのりで、どうにか泌尿器科の手術前入院に、親子喧嘩しつつこぎつける。

入院の品々膨らむバッグ提げ吾子のかひなは真っ直ぐに伸ぶ

 東筑高校出身の執刀医より、急に手術方法が変わりますとの連絡。7月に入ってのCTで、腫瘍が良性らしくプリッと腎動脈から離れたと。実際見ると右腎、動脈ともに、左と同じ大きさに戻っている。希望の光が見えてきました、と担当チームに感動して言うと、最初からあきらめてなかったと、でかい態度の子。 かわいくない。
 手術日前後の話は、分割して次号ということにします。


大暑・猛暑日・炎天のかごんま紀行=資料官

●おおぞらをひととび梅雨の明けにけり
●大暑なりじっと静かな桜島
7月下旬に鹿児島へ1週間の出張であります。
23日月曜の大暑の日に出かけたのですが,なんと前日から最高気温35度以上の猛暑日だそうでして,結局連続5日間鹿児島の猛暑日を体験しました。梅雨が明けないじめじめした東京からやって来ますと,灼熱の南国鹿児島は心地よい照り焼き状況でして,体がきりりと締まったような気もしたのですが,猛暑日が1週間も続きますと後半はややバテ気味になりました。決して天文館で不摂生をした訳ではありません。

●炎天や真っ赤な広告電車来し
  泊まったホテルは高見馬場交差点の横,「法華クラブ鹿児島」でして,目の前をカラフルな電車が行き交い,新型のユートラム?も初めて拝見。早起きして朝の路面電車の写真撮影に出かけましたが,鹿児島市電オリジナルの色彩の電車はほとんど来ないで,けばけばしい広告電車に占領されてしまったようでした。おまけに,「市電軌道敷緑化工事」とやらで,鹿児島中央駅前電停〜高見馬場電停区間の約6百mには線路の敷地内に芝を植え,電車は芝生の上を快走していたのです。タクシーの運ちゃんが恨めしそうに高い金かけて電車を新しくするし,芝まで植えたとブツブツ言っていた。




1回乗ると160円,長崎(100円)ほどではありませんがこれは安い。主要な乗換駅では乗換券も頂けます。初日は山形屋百貨店のそばいずろ交差点まで,二日目はかって西鹿児島駅今鹿児島中央駅まで歩きました。




●炎昼や鹿児島県庁展望階
●桜島炎暑の海に浮かびけり
仕事場は鴨池方面でしたので,昼飯時間になりますと少々早めに県庁食堂に出かけました。ビルからビルへほんの3〜4百m程度なのですが,日傘も差さずに炎天下を歩くだけで頭がくらくらしてきました。食事後は県庁展望階へ登り,のんびりと錦江湾に浮かぶ桜島を眺めて過ごすのです。外は猛暑,雲ひとつない炎天下,噴煙がない桜島はただただ海に浮かぶだけ。鹿児島の街は白くゆれて,外に戻るのが躊躇われるお昼時でした。




●炎天より桜島フェリー接岸す
●夏夕べ天文館へと身をまかせ

年相応におとなしく旅先での夜を過ごしました。黒豚横丁なんて出来たのですね。

最終日は飛行機で帰京する仲間たちを差し置いて,さっさと鹿児島中央駅に向いまして,さつま揚げとビールを買い込みわずか40分の九州新幹線の旅を楽しみました。博多まで3時間ちょっとです。東京までのぞみに乗っても8時間です。夜行寝台特急で20時間近くかけて出かけた時代からすれば夢のような話です。それでも飛行機に乗らないと変な目で見られます。




かごんま日記:"AS TIME GOES BY"= スライトリ・マッド

2007年8月5日(日)
*矮鶏鳴きて博多の朝の明けにけり
This day and age we're living in
Gives cause for apprehension
With speed and new invention
And things like fourth dimension.
Yet we get a trifle weary
With Mr. Einstein's theory.
So we must get down to earth at times
Relax relieve the tension
And no matter what the progress
Or what may yet be proved
The simple facts of life are such
They cannot be removed.
You must remember this
A kiss is just a kiss, a sigh is just a sigh.
The fundamental things apply
As time goes by.

昨日より所用で2日間帰博。母がいる実家の隣に28歳独身の甥っ子が一人で住む。借家にしていたが、今春、空きになり引っ越して来た。甥のこういち君は、私の祖父の13回忌の読経の最中、産まれた子。奇しくも私と同じ誕生日で祖父の命日。赤ん坊のときから知っているので今でもかわいいものだ。私をいまだにエイコネエネエと呼ぶ。彼は一時期料理人を目指していたこともあって料理にはこだわりがあるようで・・。市場に魚の買い付けに行ったりする。市場で仕入れたというアサリの味噌汁や珍しい海ぶどうの酢の物を食べさせてくれた。梅干も作っていて、なかなかのお味。おばさん顔負けだ。一軒家なので一人で住むには広すぎるが、前いたアパートでは魚(ナマズ、アロワナ等)を飼う大きな水槽がいくつもあって、手狭になっていたからのよう。庭があるので、矮鶏(チャボ)も飼い始めた。数えたら14羽いた。母が「朝うるさくて寝られんとよ」とこぼしていたが、これだったのか。チャボは鳴き始めは小さく外れた音のオエオッオーだったが、次第に大きくコケコッコーになる。薄暗い朝の時間はまだ眠気を誘う。

*夏の果生きた証の残りけり
And when two lovers woo
They still say, "I love you."
On that you can rely
No matter what the future brings
As time goes by.
Moonlight and love songs
Never out of date.
Hearts full of passion
Jealousy and hate.
Woman needs man
And man must have his mate
That no one can deny.

実家の2階にある使っていない部屋に、大きなボードに貼られた、カラフルでポップな一枚のポスターがあった。こういち君の父親である兄の所有物だがなぜか実家に。タイトルは「友人 宇宙人(タモリとルビ) あいつが帰って来ると博多の夜が星になる」。長兄の筑高時代からの友人の一人がタモリで、その5人の仲間をネタにして作られたもののようだ。その中の一人に明さんという、広告代理店に勤務していた元コピーライター、自称詩人がいて、恐らく彼が書いたのでは?高校大学時代のタモリたちは、よく我が家 に遊びに来ていた。頑固ものだった亡父は、タモリたちに「お前たち、遊んでばっかりおって、早よ帰らんか!」と水やりのホースの水を向けたというエピソードもあり・・。ポスターにはタモリの幼少からデビューした30歳頃までの11枚の写真があった。若い頃の兄も3、4枚写っており、キャプションにもいろいろ書かれている。タモリのお姉さんが鹿児島在住とも。そうそう、以前、吉野町にある硝子店に嫁いだという話を元気だった頃の兄から聞いたこともあったっけ。私の兄は長年の不摂生がたたって昨夏に重篤な脳出血を起こし現在も入院中。秋には初孫が産まれるのだが・・。博多滞在の2日目の今日、次兄やそのヶ丘出身の姪っ子も加わってお墓掃除とお参りに。帰りに屋形原の旧国立南病院(名前が変わったらしいが・・)横の「年年歳歳」という蕎麦屋に寄る。天ぷら蕎麦がなかなか美味しかった。劉廷芝の漢詩の一部「年年歳歳花相似、歳歳年年人不同」からとったものとのこと。

*蘭鋳や水慣らしする洗面器
It's still the same old story
A fight for love and glory
A case of do or die.
The world will always welcome lovers
As time goes by.
Oh yes, the world will always welcome lovers
As time goes by.

鹿児島の家に飼っている金魚が1匹だけなので、こういち君から蘭鋳(ランチュウ)を2匹もらってくる。「ちゃんと水ば混ぜて慣らせないかんばい」と言われその通りに。元からいるメチャでかい金魚は、オレの縄張りだと言わんばかりに泳ぎ、新入りランチュウにちょっかいを出していた。もらったランチュウはまだ子どもで、背びれがなく丸っこくて小っちゃい。食べられてしまわないか心配だったが、杞憂だったようだ。しばらくすると折り合って泳いでいた。どちらも元気で長生きして欲しい。

*"AS TIME GOES BY" music and words by Herman Hupfeld (1931)より引用


■編集後記
 砂太先生、二六斎宗匠からは嬉しいお返事、入鈴さんからは息子さんの手術成功のお知らせが届いた。
これでまずまず「丘ふみ」の将来も安泰である。
「十年つづけたら凄いものになるぞ!」と仰って下さった砂太先生の御期待にそえるまであと7年。
そんなに先の事は考えられないが、二年後の5周年記念には記念の吟行句会なんか、湯布院あたりの温泉で実現したいな、等と夢を見ている今日この頃。

先日、45才で亡くなった夭折の俳人「田中裕明」氏の全句集が発刊されたが、彼は生前、「三万句を詠んでからが俳句」、というような事を言っていたそうである。
寿命をあと20年として計算してみたら、なんと毎日四句を詠まなければならない。(ちなみに高校から俳句を詠み始めた彼は、23歳の若さで「角川俳句賞」を受賞している。また、当時の彼は「百句会」なるものを作って、週に百句詠む事をノルマとしていたそうである。あな、才能とは恐ろしいものである。)
「俳句という詩は、ほんのささやかな営みですが、セオリーを身につけて、そしてセオリーを忘れる事が大切です。(裕明)」
結局、素直が一番、努力と勉強が二番、継続が三番!なのだ。

 今月は、そんな当たり前の俳句初心者心得を真面目に実践してきた(?)雪絵さんの句が、先生方、そして多くの会員の支持を受けた。丘ふみに有力女流俳人がまたひとり増えてしまった。
女性は強い! 母性はもっと強い!(笑) 
今月はなんとか、副部長と写真部長(社長とちゃうほう)が特選の座を一議席づつ確保したものの、この格差婚の実態は紀香ー陣内をも超えているのではないだろうか?
まずは部長がもっと素直になって努力しなければならないのであります。 (文責 中島)


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