*無法投区/秋風月

〜かなかなやクレーの線に閉ぢる恋〜

*風立ちぬ=葱男

9月3日の早朝、東京行の「こだま」に乗って1週間の東京旅行が始まりました。
生業としているハンドメイドの仕事のほぼ一年分を決める年間の最大イベント東京インターナショナルギフトショー 2013/秋に出展するためです。

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4〜6日の3日間の来場者はのべ約20万人、東京ビッグサイトに日本中のあらゆる分野のメーカーが今秋の新製品を宣伝、売り込みに東京に集まってきます。
とはいえ、わが家のプライベートブランド『セレネッラの咲くころ』のブースのスペースは2m×1、5m、わずか3平方メートルという小ささ。
無論、来場者20万人が我がブースの前を通り、作品に目を止めてくれるわけではありません。
私達夫婦が手づくりしたフェルトのショールやベストを値踏みして下さるのは(いやいや、気に入ってくださったのは)これもまた本当に少人数の、小さなお店を経営している全国のセレクトショップのオーナーや関係者、一部の商品をデパートなどに斡旋するイベント企画会社のスタッフ、そして、ファッションに多大な興味を抱く、とってもオシャレな女性達だけです。

3日間になんらかのかたち(仕入れや展覧会、イベント企画のお誘いetc)で私達の作品(商品)に目を向けてくださったお店、会社、個人の数は約40件。それでも午前10時から夕方の18時までほとんど立ちっぱなしで接客、商談をしてきました。
3回目の出展で、おかげさまで結構リピーターのお店も定着してきて、ア〜、足は疲れたけど充実した3日間でした。

7日は勉強と仕入れのために晴海埠頭の「客船ターミナル」と「ホテルマリナーズコート東京」で開催されていた「新・東京スピニングパーティー」に出掛けてきました。

そして8日
日ごろ時間と気力がなくて映画もほとんど見なくなってしまった私ですが、何故か宮崎作品だけは映画館で観たくなります。せっかく授かった貴重な自由時間を使い、新宿のピカデリーで「風立ちぬ」を観てきました。
あ〜、そうなのか〜!

TVの会見で宮崎さんが、お恥ずかしい話ですが、と前置きして、「初めて自分の作った映画を見て泣きました」というコメントを残しましたがその意味が映画を観て少し分かったような気がしました。

宮崎さんの涙は映画を完成させることができた感動も勿論ありますが、同時にこれが自分にとっては最後の監督作品になるんだという寂しさ、そして年齢から来る体力の衰え、今まで信条としてきた子供たちに対峙するジブリ(熱風)が衰えてきたこと、アニメと飛行機と物語の抒情性への偏愛、そんな複雑な感情がないまぜ になって、彼は涙したのではなかったか、そんな気がします。

エネルギーのかたまりのような子供たちと真正面から向かい合うことに、宮崎さんのジブリ(熱風)はもう、どう踏ん張っても頑張っても足りないのではないか、彼はこの作品を見返して自覚したのではなかったか? それは悲しいけれど私が考えるに、人間として仕方のない「時の流れ」です。
この「風立ちぬ」という作品のテーマのひとつでもある「それでもあなたは生きてください」という言葉を自分の創り出した菜穂子というキャラクターに耳元で囁かれて 、彼は不覚にも涙したのかもしれません。
少し文学的抒情に過ぎて、宮崎さんのいつものはちゃめちゃなチャイルドファンタジーは少なかったかもしれません、でも、それでも私のような還暦男には胸にジーンと来るものがありました。

そして深夜24時のバスに乗るまでの最後の4時間、目白の宗匠夫婦と4人で美味しいお酒を飲みながらたくさんの話をしました。俳句の話は勿論、本当にいろんな事を話しました。
今月も四句、宗匠から白髪鴨さんの追悼の句が投句されてきました。これで3ヶ月連続で投句を戴いたことになります。そのことについて宗匠は彼の追悼の句を108句詠むつもりだ、と強く仰っていました。
俳句と人生はいつも全く重なっているものです。あらためて考えること、思い直すことの多い、とても充実した東京の旅になりました。


*首都圏大手私鉄全線乗車=資料官

●炎天やワンマン電車のすれ違ひ
●停車場のプラットホームで見る花火
●大夕焼け渡良瀬川の橋渡る
●夏惜しむふらつと両毛フリーパス
●駅前の分福茶釜灼けにけり
●炎天へそつと電車の走り出す

「大手私鉄」とは日本民営鉄道協会のいう大手民鉄(the major private railway)東武・西武・京成・小田急・東急・京急・東京メトロ・相鉄・名鉄・近鉄・南海・京阪・阪急・阪神・西鉄の16社ということで,そのうち9社は首都圏にある。大手私鉄のすべてに乗ることを目標としていたが, 8月16日(金)に東武鉄道の未乗車区間を乗り継ぎ,首都圏の大手私鉄の全線制覇を達成した。
ことの始まりは,昭和43年春の営団地下鉄(現東京メトロ)の東西線乗車。昭和46年からの大学時代にはかなり乗車していたが,本格的に全線制覇にチャレンジしたのは平成になってからである。2000年頃までに東武以外の私鉄はすべて乗車したが,東武は東京だけでなく埼玉・群馬・千葉・栃木と広範囲にわたり,一日の運行本数も少ないローカル線も多かったので,しばらく首都圏乗り鉄はやらなかった。還暦も過ぎたこの夏,そろそろけじめをつけようと夏休みの一日にチャレンジした。昔は私鉄の時刻表をしらべるには,JTBの時刻表(かなり省略されているが)か各社の時刻表を個別に入手するしか手がなかったけど,最近は私鉄各社のHPで時刻表は簡単に入手できるし,ネットの「乗り換え案内」を使えば簡単に計画が作れるようになった。

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1:2013年8月16日
乗車した東武鉄道の群馬県栃木県の路線
浅草からの特急電車も走っているが2〜3輌のローカル電車が主体

2:当日利用したふらっと両毛 東武フリーパス1,770円

東武の未乗車区間は,小泉線(全線),桐生線(新桐生−赤城),伊勢崎線(太田−伊勢崎),佐野線(全線),宇都宮線(全線)の5線(90.2km)。ここには西小泉,赤城,伊勢崎,葛生,東武宇都宮のどん詰まりの終着駅が5駅あり,大きな乗換駅の館林や太田もあったので,乗り鉄旅を十分楽しむことができた。最高気温予報35℃を越す国内有数の猛暑地帯であったが,電車の冷房と水分補給に努め熱中症になることはなかった。池袋を7:27に出て,帰りに寄り道をしたので池袋に戻ったのは20:37でした。
ちなみに,首都圏での未乗車区間,JRは鹿島線全線と御殿場線一部があり,私鉄では大山や御岳のケーブルカー,ユーカリが丘のモノレール,関東鉄道,上毛電鉄の一部が残っているが,そのうち完乗できるだろう。しかしながら全国的にはまだまだ未乗車区間も少なくなく,主たる幹線の中にも残っているものがある。ここは仕事をリタイヤしてから順番にチャレンジするしかないだろう。

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3:小泉線の終点西小泉駅
ここは群馬県邑楽郡大泉町だけど小泉線

4:西小泉駅にあるPASMO簡易改札機

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5:西小泉駅ホームに2両編成の電車が2本

6:館林駅前の「分福茶釜」のタヌキの像
館林市には童話「分福茶釜」の舞台になった茂林寺がある

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7:右は桐生線終点の赤城駅
左は上毛電鉄(中央前橋−西桐生25.4km)の赤城駅

この時間帯4本の電車が並ぶ 8:上毛電鉄の終点西桐生駅
「関東の駅百選」および国の「登録有形文化財」に指定

**10

9:佐野線の終点葛生駅
広い構内に3輌編成の電車が停車中

10:葛生駅の駅舎

*11

11:宇都宮線の東武宇都宮駅に到着
これで東武鉄道全線乗車
ここからJR宇都宮駅まで徒歩30分,猛暑ゆえTaxi乗車


【編集後記】

2020年、東京オリンピックの開催が決まった。

そのころに自分がまだ生きてこの世に存在しているのか、全然予想がつかない。
オリンピックが東京で開催されることの意味や価値も判断できない。

ただ、今の若い子たち、20〜30代の若者が、自分が生まれたことに喜びを持ち、この社会が、日本が、そして地球というものが「生きているに値する」場所だと思えるのか、その物語をオリンピック開催で紡げるのだとすれば、それは必ずしも全否定することはできないとも思う。 今、日本の原発が垂れ流している「汚染水」によって世界中の海が大変な危機を迎えている。海だけではない、日本人だけでもない、地球は「人間種」という癌細胞に侵されて、「人間の住めない、生きられない」場所になりつつある。

白髪鴨さんは「ああ、人類は生き延びられないだろう。」と言い残して海に沈んだ。
「水府に水を打つ」ように私たちはいつか骨になる。スケルトンが踊るように、滑稽に、情熱的に、若者はいつの時代も踊り続けることを望むことだろう。

 (文責 葱男)


■風信

水音さん「俳句界9月号」「俳句ボクシング」でおおきな文字。
十志夫さんも活躍しています、近々、「俳句界への招待」のページにも登場する予定です。


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