*無法投区/マリアの月

〜微熱もて遠足の朝明けにけり〜

*遅き日のゼロ番ホーム博多駅=資料官

博多駅四代

九州新幹線全線開業に合わせて新しい博多駅が開業した。平成の博多駅,4代目の博多駅である。幼心に遥かな記憶の明治の2代目博多駅,私らの人生の舞台となった昭和の3代目博多駅,そうして平成23年3月平成の4代目博多駅が開業した。今回は,これらの博多駅のこと,特に2代目3代目について振り返ってみたいと思う。
まず最初に博多駅の歴史を掲げておく。

明治22年(1889年)初代博多駅開業(九州鉄道 博多−千歳川(久留米市筑後川の北)間開業)
明治42年(1909年)2代目博多駅開業 (国鉄 門司−熊本間営業中)
昭和38年(1963年)12月1日3代目博多駅開業
昭和50年(1975年)3月10日 山陽新幹線 岡山−博多間開業
平成19年(2007年)3月3代目博多駅解体
平成23年(2011年)3月3日 4代目博多駅開業

もの心ついた昭和30年代前半,博多駅は現在の位置よりも北西に600mのところ,現在の地下鉄の祇園駅のあたりにあった。建設当時は豪華なルネッサンス風のレンガ造りの建物だったらしいが,昭和になると増加する列車と乗客に対して手狭になり,すでに戦前から移転拡張の計画があったらしい。それでも私の記憶では,大きな駅舎と広い構内にホームが3本(1番ホームから5番ホームまでか)あり,1番ホームの久留米寄りには筑肥線専用の0番ホームが設置されていた。昭和36年には門司港−久留米間の電化によって九州の国鉄初めての電車が走った時もまだ2代目博多駅であった。
小金井(東京都)の祖父(母の父)は戦前長崎の三菱造船所に勤務して戦艦武蔵などの設計などをやっていたが,戦後も当時の縁でよく東京から長崎にでかけており,昭和32年に東京−長崎間を走り出した寝台特急さちかぜを愛用していた。祖父が長崎に行くときはいつも,母共々祖父に会いに博多駅に出かけた。特急さちかぜは博多駅で蒸気機関車同士の付け替えを行うので停車時間が長く,ゆっくり会って話をすることができた。毎回,祖父から土産を受け取り,ホームで写真を撮ってもらった。土産は,往路は「東京泉屋のクッキー」か「下関の亀子煎餅」,帰りは「福砂屋のかすてら」が定番であった。今でこそ何処でも買えるやや見飽きたお菓子であるが,当時では大変珍しく貴重なものだったと記憶している。2代目博多駅は平面にあり,改札を出るとそこは広い1番ホームがあって上りの特急はここから発着していた。当時東京−福岡は遠く結婚式などない限り母はなかなか里帰りもできなかったので,祖父の博多駅通過に合わせて顔を見せていたのであろう。この特急さちかぜは名前を昭和33年10月にへいわ,昭和34年7月には特急さくらに変えて,以降平成17年まで東京−長崎間を走り続けた。



1:1958年2月
広い博多駅1番ホームにて,右手には福砂屋のかすてら
特急の発着時にはこのような立て看板が出ていた

2:1958年4月
1番ホームから2〜5番ホーム方面
当時の博多駅は貨物の取り扱いをやっていた

明治の2代目博多駅は昭和38年12月に現在の位置に移転した。豪華なレンガ造りの駅舎の保存の話も出ていたようであるが,福岡市議会で保存案が否決され結局取り壊されたのである。今さらながら,2代目博多駅が保存されなかったことが残念でならない。
三代目昭和の博多駅は小生小学校5年生,昭和38年12月に開業した。であった。当時まわりには何もなく畑の中に忽然と駅が出現した感じであった。駅は高架になり,ホームは4本に増えて8番ホームまで作られた。開業の日に父に連れられて新しい博多駅を見に行ったことをおぼろげながら覚えているが,ただ見るだけだったし,その時の写真も残っていない。この博多駅を初めて利用したのは,この年末筑肥線を通る準急九十九島号で長崎県松浦に父と帰省した時である。以降,筑紫丘時代のシャベ栗たちとの撮影旅行,2年の修学旅行,3年は東京受験組の見送りなどの舞台となり,大変お世話になった。58年の人生のうち44年がこの昭和の博多駅との付き合いである。
昭和50年3月10日に山陽新幹線が博多まで開業した。小金井の祖父はまだ元気で祖母共々東京発の1番のひかり1号に乗って博多駅に到着した。この日私が博多駅まで出迎えに行くと,得意げな顔をして祖父はひかり1号から降りてきたが,あっという間にRKB毎日テレビのカメラに囲まれてインタビューを受けることになった。終わってホームを歩いていると今度はFBSにつかまった。夕方東京の伯父からニュースの全国版に出ていたと電話があったが,8CHか6CHかどちらだったのか判らずじまいである。私はその横で祖父の得意げなインタビュー姿を撮影していた。

34

3:1975年3月10日
山陽新幹線博多開業当日の博多駅

4:1971年5月16日
博多駅見送り小柳編
左側は筑肥線のディーゼルカー

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5:1975年3月10日
東京駅からの一番のひかりで到着した祖父と祖母
RKBのカメラにつかまった

6:1975年3月10日
続いて,FBSのカメラにつかまった

●ひかりから祖父の笑顔や春の昼
●遅き日のゼロ番ホーム博多駅
●博多行きのぞみ最終月朧    丘ふみ游俳倶楽部18年4月
●少年の思い出集う夏の駅    丘ふみ游俳倶楽部17年8月

それから36年後の平成23年3月3日,平成の4代目博多駅が開業し,3月11日は九州新幹線の博多−鹿児島中央間が全線開業した。開業当日のことは丘ふみ游俳倶楽部80号の無法投区に書いたので今回は省略。最近の帰省は時間とお値段の関係で飛行機利用ばかりとなっているが,そのうちゆっくり東京からの新幹線でこの新しい博多駅に降り立ちたいと思っている。

78

7:2011年3月11日
新幹線開業前日の平成の4代目博多駅

8:2011年3月11日
九州新幹線専用の博多駅11番ホーム
東京方面がどん詰まり
向こうは線路をまたぐ形で作られた博多シティ


かごんま日記:”BICYCLE RACE"= スライトリ・マッド

2011年4月11日(月)

*あたたかしパン一斤の重さかな

Bicycle bicycle bicycle
I want to ride my bicycle bicycle bicycle
I want to ride my bicycle
I want to ride my bike
I want to ride my bicycle
I want to ride it where I like

You say black I say white
You say bark I say bite
You say shark I say hey man
Jaws was never my scene
And I don't like Star Wars
You say Rolls I say Royce
You say God give me a choice
You say Lord I say Christ
I don't believe in Peter Pan
Frankenstein or Superman
All I wanna do is
Bicycle bicycle bicycle
I want to ride my bicycle bicycle bicycle
I want to ride my bicycle
I want to ride my bike
I want to ride my bicycle
I want to ride my -
Bicycle races are coming your way
So forget all your duties oh yeah
Fat bottomed girls
They'll be riding today
So look out for those beauties oh yeah
On your marks, get set, go!
Bicycle race bicycle race bicycle race
Bicycle bicycle bicycle
I want to ride my bicycle
Bicycle bicycle bicycle bicycle
I want a bicycle race

Hey
You say coke I say caine
You say John I say Wayne
Hot dog I say cool it man
I don't wanna be the President of America
You say smile I say cheese
Cartier I say please
Income tax I say Jesus
I don't want to be a candidate for
Vietnam or Watergate
'Cos all I wanna do is

Bicycle (yeah) bicycle (eh) bicycle
I want to ride my bicycle bicycle (c'mon) bicycle
I want to ride my bicycle
I want to ride my bike
I want to ride my bicycle
I want to ride it where I like

3週間前の今日、甥の幸一君がめでたく結婚した。幸一君は長兄の長男。長兄は脳梗塞で入院中。幸一君は赤ちゃんの頃から実家の隣に住んでいて、ずっと成長を見てきたので30歳になった今でも可愛いものだ。最初は私1人が式と披露宴に出席する予定であったが、大学生の息子も春休みで帰って来ていて、将来を考えたら、従兄弟同士で仲良くしておくのもよいかなと。私の代わりに主人と息子の2人が出て、博多にたまには行きたい娘もついて行き・・私は1人でゆっくり犬のさくらと留守番のプランに変更に。たまたま私はその週末に沖縄に行くことにもなっていて、遠出が続くと、しんどいなあという気持ちもあった。しかし、成り行きから、さくらもケージごと車に積んで、家族全員で博多へ行こうかと話が持ち上がる。私と娘はさくらを連れ、今は誰もいない実家の整理でもするつもりだったのだが・・。その話を幸一君にしたら、「せっかく鹿児島から来てくれるのなら、英子ねえねえもKちゃんも結婚式と披露宴に出ちゃらん?席は用意するけん!」と。二転三転し、急きょ、全員+1匹で博多へ。犬のさくらは、天神ソラリアビルの地下2階駐車場で少し窓を開けた車のケージの中で5時間も待つこととなる。途中2回、見に行ったが、暴れたり吠えたりもせず、待っていて、お利口さんのレッテルを。挙式はホテルの隣にある警固神社で古式ゆかしく執り行われた。外国人観光客が白無垢の文金高島田と紋付袴姿の2人にシャッターを切っていた。披露宴会場の受付には、2台の自転車が置いてあり。2人は同じ自転車サークルに所属している。ハイライトのシーンはお色直し。自転車を押しながらユニフォーム姿で颯爽と登場した。披露宴で自転車仲間に暴露された話。自転車サークル内で女性メンバーは珍しく、新婦のMさんのかわいさ、性格の良さもあって、男性メンバーの間では高嶺の花的存在であったらしい。Mさんは管理栄養士の資格を持つ、料理教室の先生。パン作りが得意。幸一君が最初、彼女に話しかけた言葉が「あのお、食パン一斤の重さってどれくらいあるんですか?」だったとのこと。Mさん、食パンの重さを量ったことはなかったらしく、いきなりの質問に面食らったらしい。「うーん、わかりません。今度調べときます。」その言葉がきっかけで、結婚へとつながったらしい。やったね、幸一君。2人の前途に幸いあれ。兄もきっと喜んでいるだろう。

今日、自治会の回覧板が回ってきて、中に霧島市のハザードマップが挟まっていた。見てみると、地震調査研究推進本部地震調査委員会の長期評価という日本地図に、ここ30年以内の主な地震の想定規模と発生確率が書かれている。活断層帯と海溝型地震の2つのタイプがあって日本はまさに地震の巣。数値の高さに愕然とした。平成23年1月1日現在の数字であるが、3.11東北大地震が起こる前にわかっていたことだったのだ。以前から言われている南海トラフ、駿河トラフ、相模トラフの地震の起こる確率が70〜87%であるのに対し、茨城県沖から三陸沖北部にかけての日本海溝のプレートの地滑りが引き起こす地震の確率はすべて90%以上である。宮城県沖の今後30年以内に起こる地震発生の確率はなんと99%だった。そんなに高かったとは知らなかった。今回の地震がノーマークだったというのは間違いだろう。この地震調査研究推進本部とは、平成7年の阪神・淡路大震災の6434名の死者、10万棟を超える建物の全壊という被害を出したことに対する、課題を踏まえて議員立法によって設立された政府の特別機関。文部科学省、国土地理院、気象庁、海上保安庁、大学、防災化学技術研究所、海洋研究開発機構、産業技術総合研究所、情報技術研究機構、消防研究センターなどの調査研究を、地震予知連、中央防災会議、学術審議会などと連携を取りながら、一元的にまとめ、国、各地方公共団体の防災対策に生かすというものだが・・・。生かしきれていたのかなあ?

*“BICYCLE RACE” Queen(1978) より引用


■編集後記

震災のあと、変わったことがひとつある。

それは、明るい句を詠みたくなったことだ。
以前は「ひとを幸せにし、ひとから共鳴され、ひとを癒し、ひとから癒されるような俳句」を自分で詠むのは少しも好きじゃなかった。

ひとのために詠む句は「文学」とはすこし違うような気がしていた。
自分の心のなかの、存在の深淵を覗き込むような句を詠みたいとずっと思っていた。

しかし、今は違う。
ちょっとでも、ひとがニコッとと笑ってくれるような俳句が詠みたい。
自分の詠んだ句で、誰かの心の鈴をチリンと鳴らすことができたらな、と思う。

●鈴鳴らすたびに赤らむ桜の實 葱


(文責 葱男)


■消息

砂太:『俳句界』5月号/「俳句ボクシング」【佳作】(石田郷子 選)
●粗を煮て一人の冬に入りけり  白川砂太
『俳句界』5月号/「俳句ボクシング」【佳作】(田中 陽 選)
●能古古窯沖に静かな冬がある  白川砂太
『俳句界』5月号/「兼題」【佳作】(石井いさお 選)
●千年の石仏残す紅や冬  白川砂太
『俳句界』4月号/「雑詠」【佳作】(加古宗也 選)
●大寒の厠より見る昼の月 白川砂太

葱男:『俳句界』5月号/「俳句ボクシング」【佳作】(田中 陽 選)
●でこぼこなきもちでごめんちやつきらこ  中島葱男
『俳句界』5月号/「雑詠」【佳作】(茨木和生 選)
●風花や父のさみしき無神論  中島葱男
『俳句界』5月号/「雑詠」【佳作】(佐藤麻績 選)
●鉢植の似合ふ花より野水仙  中島葱男
『俳句界』5月号/「めーる一行詩」【佳作】
●春なかば土葬の塚のほころびぬ  中島葱男

水音:『俳句界』5月号/「兼題」【佳作】(石井いさお 選)
●寒紅や盲目の女手探りで  山下水音

五六二三斎:『俳句界』5月号/「めーる一行詩」【佳作】
●復興を見届けるまで鼓草  原たかゆき




■句友のページ
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