*無法投区/二ン月

〜花蜂や三十路といへどまだこども〜


*印旛沼スケッチ 睦月七草粥=入鈴

塚本邦雄のラテン吟遊の中に、

あぢさゐのヴェニスに死するたはけもの 少年は水の反映なり

7月のコモ湖、FIRENZE、ミラノからヴェニスへの旅を 詠ったものです。
ここ印旛沼は北総にあって、緯度はヴェニスと同じくらいかな?
紫陽花の話をこの寒い時期にお話するのもなんですが、海と違い沼というのは、夏は青くないのです。あぢさゐ色に耀くのは、ぱりぱりに乾燥した冬枯れの中でこそと思います。 冬は俳句になりません。綺麗すぎて無機的で、死という言葉がいつも頭を翳めます。下記のど下手な歌は、私のもの。

宿木を吸湿しつくす大気なれ 吾行く先はあぢさゐの沼  入鈴

後の邦雄の歌は、丘ふみの皆さんからよくイメージの涌くものを選んでみました。誰彼となく、お目を拝借。

アッシジの短歌たちまち花合歓のサンタ・キアラがおもかげにたつ

またの世に棲むことあらばはつなつのルッカの「鰻横丁」(アンギーラ)

はつなつのピサぞさみどり妙齢にこころかたぶく一巨漢あり

男どもと肩並めて訪ひ来し(なめてといこし)ゆゑかウフィッツイ美術館「春」不在

南イタリア長靴の脛に心病みてシチリアの持ち越したる微熱

                 以上 塚本邦雄歌集より




*北の汽車 乗りまくり雪の旅=喋九厘

今月のバレバレ句失礼致しました。長くなりの喋九厘です。
久しぶりに「北海道 冬の旅」を敢行致しましたので、この場をお借りして今回の投句の裏話や解説なぞさせていただきます。
私は…この2年なかなか関門海峡を越える事が出来ず…つのる思いは、遠くへ行きたい… ならばついでにと、青函海峡まで飛び越えてしまい…マイルを貯めて飛行機代タダだからこその、北海道や冬の旅。

1月29日土曜
10時45分千歳空港ランディング。青函海峡から雲が取れ、千歳は晴れ。本日最初の目的地は函館だが、時間に余裕あり旭川ゆき快速エアポートでスーパー北斗の始発駅札幌に逆走。 (今回は北海道乗り放題切符でいくら乗っても同じ料金。乗れば乗る程お得!乗りまくるゾ!)
札幌12時22分発函館15時38分着。雪晴れの恵庭岳、有珠山、噴火湾、駒ヶ岳が美しい!
帰りはとんぼ返りになるけど、一日1本だけ走る函館16時28分発超スーパー北斗15号を選択。
函館の次の停車駅は東室蘭で189.5kmをノンストップ!(東京駅から静岡駅を通りすぎです)平均時速107kmでぶっ飛ばします。
札幌までも3時間きっかり運転で表定速度(始発から終着駅までの平均速度をこう言います)106.2kmは、新幹線に次ぎ在来線日本一のスピード王のはず。

1月30日日曜 今日も晴れ
札幌7時55分発「流氷特急オホーツクの風」で道東、網走へ。リゾート特急で先頭パノラマ席からの車窓を堪能する。
石北峠と常紋信号所跡で雪がチラつき逆光でキラキラと、外はたぶんマイナス15℃ぐらいでダイヤモンドダスト風。網走湖では大勢の人がワカサギ釣りでカラフルな防風囲い。
13時21分網走着。13時57分発の流氷ノロッコ号に乗り継ぐと、客車で燃える石炭ストーブが暖かい。
そして本日のメインイベント 流氷!鱒浦駅を過ぎると左手のオホーツク海を一面の流氷が埋めつくし…昨年より10日も早い接岸で1月の接岸は珍しいとか。 ノロッコ号は知床斜里の終点まで乗車し、普通列車で北浜まで折り返し都合三回も流氷を堪能する。
北浜駅前はオホーツク流氷の海で白い世界。青空の向こうには知床岳に斜里岳もクッキリと。


目の前が流氷に覆われた釧網本線北浜駅。オホーツク海の向こうには知床岳

●流氷やオホーツク閉じて凍る息


1月31日月曜 今日は快晴
釧路5時55分発快速はなさきで根室へと。


釧路駅で出発を待つ「SL冬の湿原号」

厚岸湾から朝日がゆっくりと顔を出し雪の湿原を紅く染め。原生林は樹氷でおおわれ透明な氷が太陽の光を受けまっ白に透けて輝く。
落石岬を回り込み昆布盛駅を過ぎるとエゾシカの数十頭の群れが。朝のお食事タイムで数頭ずつ線路を横断し、こちらはぶつからないように徐行運転。写真ももちろんパチリ!

●エゾシカも釧路根室も氷点下
●冬晴れの函館根室一筆に
(札幌、旭川、網走、釧路経由の2泊3日かかりです)

根室わずか9分の滞在で折り返し、本日最大のイベント釧路11時09分発「SL冬の湿原号」に乗車。こちらも石炭ストーブが暖かい。
塘路で途中下車、SLの発車風景を撮影。今日は機関車2両の重連運転なので、出発シーンはそれはド迫力!
茅沼には丹頂鶴が本日5羽程。エゾシカも十頭前後の群れが釧路湿原のあちこちに。

●丹頂と白煙残し冬の汽車

2月1日は釧路から札幌経由で稚内まで
(この日の石狩地方だけ猛吹雪のドカ雪で、降り積もる新雪を時速120km超で蹴散らしド迫力!)
2月2日は利尻富士もクッキリと稚内から、途中、留萌、増毛駅に寄り道して、最終日も雪晴れに恵まれた4泊5日の旅を終了しました。


留萌本線礼受駅舎は貨物列車に繋がれていた車掌車を再利用

蛇足ながら今回利用した切符は北海道フリーパスと言い、道内の全列車が特急自由席まで乗り放題。また6列車まで指定席も利用できます。私は流氷オホーツク号やSLの指定券にも使いました。
また7日間有効で25500円の発売額ですが、私は5日で68060円分乗り続け!
こう乗らなくても、札幌起点で函館や釧路など2か所を往復するだけでモトは取れます。
北海道のほか九州や四国、東日本管内のみどりの窓口でも購入できますので、お時間ある方はどうぞ!


旅の記録 フリー乗車券に指定券、記念乗車券に乗車証明券など

●寒紅で唇飾り旅立ちぬ
(私は唇荒れを防ぐためせいぜいメンタムのリップクリーム塗ったくらい、少しツクリました!すみません!)


冬限定駅弁 北海道三昧冬御膳 880円


*初御空スカイツリーは工事中=資料官

 会社の会議室から東京スカイツリーが見える。この一年でかなり背が伸びた。昨年春3月29日には東京タワーを追い抜き,12月1日にはその高さは500mを超している。時々休み時間にその姿をカメラに納め成長振りを楽しみにしているところ。実は,今東京駅横の26階と展望抜群のポジションではあるが,3月末には平河町の赤坂プリンスホテルの横の12階に引っ越す予定である。東京駅から離れることになり大変面白くないのであるが,皇居越しにスカイツリーを眺めることができるので,完成予定の来春までしばしその成長振りを楽しめる。



1:2009年12月30日
2008年7月着工後既に一年半経過し,ようやく目立ち始めた頃
師走の満月

2:2010年3月29日
東京タワー(333m)を追い抜いた日

3:2010年10月27日
本体の頂点に達した頃(497m),12月には500mに達した



2011年1月19日
冬の満月の日に

●去年今年天へ貫くスカイツリー
●初御空スカイツリーは工事中
●初茜スカイツリーのシルエット
●日本一スカイツリーの松かざり
●日脚伸ぶスカイツリーの先の先

昨年幾度か鉄とスカイツリーをテーマに撮影できるスポットを探した。そもそも東武沿線のスカイツリーと東武スペーシアの組み合わせは割りと楽に撮影できる。押上付近の線路端にはスカイツリー見物用のお立ち台があり,その横を通過するいろいろな種類の東武電車が撮影できる。スカイツリーを見上げるアングルであり広角レンズの活躍の場。鉄仲間の一人はこの場所で魚眼レンズを使って撮影しているが,なかなか面白い作品となっている。一方京成線の車窓からはスカイツリーは各所で眺めることができるものの,スカイライナーとスカイツリーを一緒に撮影することははなかなか難しい。沿線を行ったり来たりロケハンして,青砥駅の上野寄りホームでスカイライナーとスカイツリーが同じ画面に収まった。青砥から都営浅草線乗り入れの電車の先頭にへばりつくとスカイツリーが正面に良く見える。



5:2010年9月11日
東武伊勢崎線業平橋−曳舟間を走る東武スペーシアとスカイツリー
押上駅付近の撮影広場にて

6:2010年10月24日
京成の新型スカイライナー成田空港行きが青砥駅進入
スカイツリーとの共演



7:2010年10月24日
京成の旧型スカイライナーとスカイツリー 
今はシティーライナーとして上野と空港を結ぶ

別の鉄仲間は隅田川べたのアサヒビール本社22階の展望喫茶「アサヒスカイルーム」で席が空くのをしっかり待ってスカイツリーと真下を走る東武電車を撮影したとのこと。お酒を飲めない当人は電車撮影に没頭し,ビール好きの奥様はスカイツリーを肴に心ゆくまでビールを嗜んだと報告を受けた。家族共々楽しめるスカイツリー界隈である。
スカイツリーの開業は24年春,丘ふみ游俳倶楽部は92号に達し,丘二三マップに還暦前線が北上始める。



8:2010年9月11日
業平橋駅から見上げるスカイツリー
2012年春の東京スカイツリー開業時には「とうきょうスカイツリー」という味気ない駅名に変わる

9:2010年9月11日
浅草−業平橋間の東武電車
スカイツリーの撮影スポット北十間川にかかる源森橋から
出陣間近の屋形船

●雲の峰まぢかく東京スカイツリー   丘ふみ游俳倶楽部22年8月号
●天高し曲がって見ゆるスカイツリー  丘ふみ游俳倶楽部22年11月号
●出来上がるまでが楽しきスカイツリー


かごんま日記:「犬」= スライトリ・マッド

2011年2月7日(月)

*山の時間犬の時間や冬が去る

なぜ吠えるのだ、二疋とも
吠えてこつちへかけてくる
頭を下げることは犬の常套だ
尾をふることはこわくない
それだのに
なぜさう本気に吠えるのだ
その薄明の二疋の犬
一ぴきは灰色錫
一ぴきの尾は茶の草穂
うしろへまはつてうなつてゐる
わたくしの歩きかたは不正でない
それは犬の中の狼のキメラがこわいのと
もひとつはさしつかえないため
犬は薄明に溶解する
うなりの尖端にはエレキもある
いつもあるくのになぜ吠えるのだ
ちやんと顔を見せてやれ
ちやんと顔を見せてやれと
誰かとならんであるきながら
犬が吠えたときに云ひたい
帽子があんまり大きくて
おまけに下を向いてあるいてきたので
吠え出したのだ

今朝、桜島が、南岳山頂火口で1年4カ月ぶりに爆発的噴火をした。午前8時すぎと午前9時すぎにあり、噴煙は高さ2000メートルまで達した。気象台によると、新燃岳の噴火との関連はわからないとのこと。恒常的になっている桜島の噴火は昭和火口からのもので、違う名前が出てきて驚く。南岳の爆発的噴火は2009年10月3日以来。昭和火口でも午後5時までに5回の爆発的噴火が観測され、両火口合わせた桜島の爆発的噴火は、今年すでに128回目。降灰による視界不良で、桜島の国道224号線は一時、通行止めとなる。
新燃岳も1月の27日に突然、爆発的噴火をして連日のニュースに。あちこちから、大丈夫ですか?との電話やメールやハガキを頂いた。私の住む隼人町は、新燃岳にも近く、立ち上る噴煙がよく見える。お正月くらいにポコポコ上がっている小さな噴煙に気づき、ああ、あの山は活火山なんだ!あれが新燃岳ね!と思っていた矢先。3000メートルの高さにモクモク上がるのを見てびっくりしたものだ。空振も来る。最近は、道路端の看板に「ガラス飛散防止フィルム工事承ります」の文字も。何せ連日2つの火山がドカン、ドカンと来るものだから、恐竜でも走っていれば、原始時代さながらの光景ではあるまいか?!今のところ、風向きが冬の季節風のため、北西の風が吹き、隼人町方面は風上にあたるので、火山灰は飛んできていないが・・。風下の都城、志布志方面では、大変な被害をもたらしている。噴火活動がもし長期化すれば、こちらにも飛んで来るだろう。出来るだけ被害が最小限度で収まってくれればと願うのみ。
日本には250の火山があって、そのうち活火山は、108も。これは世界の火山の1割弱にあたる。昔、社会科で活火山、休火山、死火山という分類の仕方を習ったが。今は休火山、死火山は使われないそう。活火山の定義が改められたため。以前は「過去2000年以内に噴火した火山、及び現在も活発な噴気活動のある火山」を活火山と呼んだが、国際基準に合わせ、2千年以内を1万年に変更したとのこと。山は長生きだなあ。
1月の末に待ちに待った仔犬が来た。12月5日生まれのジャーマン・シェパードの雌。被毛は黒。名前は「さくら」。偶然九州新幹線と同じ名前に。イヌって人より早く年をとるんだと改めて実感。現在2ヶ月で、人間で言うと2,3歳。家に来て9日目。まだ寒いので家の中で飼っている。甘えてうるさい。くさい。でもかわいい。やっとトイレを覚えた模様。
イヌころになめられないようにと日夜奮闘中である。

*「犬」 宮澤賢治『春と修羅』(1922) より引用


■編集後記

今回の春の旅で知ったこと。
自分の身の丈にあった俳句を詠みましょう、ということ。
背伸びをしたような俳句はよくありません。
背伸びをしたような鑑賞や句評もよくありません。
背伸びをして、俳句を知ろうとしてもその姿は見えません。
背伸びして句友になることはできません。

いやー、大木あまりさんも、Kさんも魅力あるわ〜〜。
あの人たちの世界には一生届かないような気がするなあ〜。

(文責 葱男)


■消息

葱男:『俳句界』2月号/「兼題/水」【佳作】(名村早智子 選)
●呼び水に井戸よみがへり秋茄子  中島葱男
『俳句界』2月号/「めーる一行詩」【佳作】
●iphoneにおおつごもりのコビトかな  中島葱男

五六二三斎:『俳句界』2月号/「めーる一行詩」【佳作】
●初雪や電車に眠る山男  原たかゆき

スライトリ・マッド:『俳句界』2月号/「めーる一行詩」【佳作】
●黒神の埋没鳥居冬ざるる 島小みかん


■句友のページ
俳人・金子敦の小部屋俳句と主夫の間で♪<なを>の部屋空とぶ猫俳句魂海渡の海馬向後崎ふみ(十月桜)の気まぐれ歳時記俳句と写真で綴る日記「日々好日」nemurinn主義


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