*無法投区/田草月

〜上海をはなれて涼し大河かな〜


*閏月=葱男

五月末が〆きりだった第56回の「角川俳句賞」に50句に応募した。
無謀な挑戦だとは分っているが、「参加することに意味がある。」という某句友の影響を受け、まあ冬季オリンピックのボブスレー競技におけるジャマイカチームみたいなものである。

2年間でこつこつと貯金してきた50句の表題は「閏月」とした。
本当は9月末〆きりの「俳壇賞」に持って行くつもりだったのだが、「えーい!」とばかりに応募してしまった。 「俳壇賞」のほうは6、7、8、9月で毎月8句づつ溜めればいいや、という大胆な考えである。
もともと俳句を貯金し始めた2009年の正月の時点ではターゲットは「俳句界賞」50句だったのである。
ところが「文學の森」は昨年「俳句界賞」を廃止し、新たに「北斗賞」なるものを作って新人発掘を若い人に絞りこむように方針変更がなされた。年令制限は満40才以下。 ちなみに「ふらんす堂」の「田中裕明賞」は45才以下である。
出版社、編集者の気持ちはよく分かりますが、57才のおじさんは履歴書の段階でアウトでなかなか面接もしてもらえません、とほほ・・・。

俳句の募集 、公募 、コンクール情報は俳句.comのページに詳しくあります。

「角川俳句賞」の選考経過は月刊「俳句」の11月号に詳しく掲載されるそうなので、もし、予選を通過するような僥倖が訪れたら、またお知らせします。

ラッキーでもなんでも予選を通過して、選者の池田澄子さんと、正木ゆう子さんに一度、生の葱句を読んでもらえるのが夢なのですが・・・(笑)


*桂林山水公天下=資料官

  桂林の山水は天下に公たり

五連休に中国まで出かけた。隣の国だけど中国は初めてである。成田から→広州→桂林→西安→北京とぐるっと一周し,桂林と西安でそれぞれ2泊した。脈絡もなく行き先を決めたが,広州は福岡の姉妹都市,桂林は熊本の友好都市,西安は京都・奈良との姉妹都市と,それぞれ何か縁が深い都市である。今回は鉄道に乗るコースもなく,ホテルは駅から離れていたので列車を見に行くことはできなかったが,こういうことものんびりできてたまには良いと思う。総じて,土地の広さと人の多さ(パワー)に圧倒されたという印象である。

成田−広州便はほぼ半分近く日本列島の上空を飛んだ。5月1日は全国的に天気が良く,富士山から瀬戸内海,福岡,平戸まで良く見えた。特に雪をかぶった富士山と南アルプス,初めて上空から見る福岡には感動した。この日は上海万博のオープニングであり,出発間際になって上海上空の空路制限が出され出発が少々遅れた。上海で万博がこの日から始まることを初めて知った。この日は広州市内を巡り,夕食後に空路桂林に向かった。

JAL成田−広州便から博多湾を望む




広州で2010年11月12日から11月27日まで行われる第16回アジア競技大会(XVI Asian Games 2010)の準備が進んでいる


圧巻だったのは桂林の漓江下り。桂林から下流の陽朔までの漓江沿い約80kmの奇岩怪山を大型観光船に乗って眺める河下りのことである。あの独特の奇峰奇岩の山水画の世界がおおよそ4時間続く。船中でビールを飲みながら眺めるのも良いが,やはり甲板に出て次から次へと登場する山や岩山を追いかけ続けた。朝のうちは霧があってまさに墨絵の世界だったが,雨の予報は覆り日がさして,遠くの山々まではっきりと見えるようになった。
サントリーウーロン茶のコマーシャルのスポットや20元紙幣のデザインの「黄布倒影」に来ると皆歓声を上げカメラを向けていた。途中の興坪下船後バスで陽朔まで行き,また夕方には桂林に戻る。

●山々は独起独高船遊び
●青嵐奇峰奇岩の山水画

A 右端は桂林富士だそうな 
B 漓江下りの名所のひとつ五指山 



C サントリーウーロン茶のコマーシャルの撮影場所 
D 中国20元札の図柄となったスポット 黄布倒影




 中国弐拾元札裏面


西安は昔の長安。ふと筑紫丘時代の世界史と漢文のことを思い出した。平山先生のあの名口調での講義は大変懐かしく,唐の時代の玄宗皇帝と楊貴妃の話は今でもなんとなく記憶の片隅に。頭をたれ続けた漢文は2年生は二宮先生だったことは覚えているが,それ1年と3年の先生が思い出せなかった(これは漢文授業の集団離脱が担任の大塚先生にばれて,えらい怒られたから)。

●絵日傘や世界遺産の庭広し
●天空へ噴水伸びて大雁塔
●果てしなく続く城壁風薫る
●鐘楼まで真っ直ぐ街は深みどり
●謝謝你青島麦酒弐拾元
●何知らぬ顔をして青唐辛子

4日の午前中に西安の郊外にある楊貴妃の縁の華清池,秦の始皇帝の墓の周りに新たに発掘された世界遺産兵馬俑博物館,午後は西安に戻り高僧玄奘三蔵の大雁塔や市街地周囲をぐるりと囲む城壁などを見て回った。現在の西安は人口400万人の大都会で周辺は高層ビルが立ち並び,おおよそ古都の雰囲気があるのは町の中心部ぐらいであろうか。連休明けの朝は猛烈な交通ラッシュであり,現在地下鉄の工事が3路線同時に行われていた。
そうして5日夜に北京経由で成田空港に舞い戻ってきた。遅れることが定番の中国の航空事情,今回はさほど遅れずに帰還できてほっとした。

F かつて歴代王朝の離宮があり温泉地であった華清池の楊貴妃の像
白居易の「長恨歌」の中に「春寒賜浴華清池 温泉水滑洗凝脂」とある 
G 兵馬俑博物館 第1俑坑




H 大雁塔  652年に唐の高僧玄奘三蔵がインドから持ち帰った,経典や仏像などを保存するために建立された
I 西安市街 城壁の南門から鐘楼方面を望む




かごんま日記:『牛』= スライトリ・マッド

2010年5月20日(木)
*蜘蛛合戦中止の札や麦の秋

堅い大地に蹄をつけて
牛は平凡な大地を行く
やくざな架空の地面にだまされない
ひとをうらやましいとも思はない
牛は自分の孤独をちやんと知つてゐる
牛は食べたものを又食べながら
ぢつと淋しさをふんごたえ
さらに深く、さらに大きい孤独の中にはいつて行く
牛はもうと啼いて
その時自然によびかける
自然はやつぱりもうとこたへる
牛はそれにあやされる

 私が住んでいるのは霧島市隼人町。車で5分の日木山の峠に霧島市と姶良市の境界がある。峠を越えると加治木町だ。南国を思わせる棕櫚や椰子の木々を見ながら日木川を渡りJR加治木駅の近くの国道10号線沿いに進むとデッカイ蜘蛛の看板が目に飛び込んで来る。加治木のシンボル。リアルなタッチで描かれた女郎蜘蛛が2匹闘っている図は、クモの苦手な人にはちょっと〜と言う感じがするかも・・。毎年6月の第3日曜日に開催される島津家所縁の行事、蜘蛛合戦が今年は中止となった。口蹄疫防止のためとあった。そういえばスーパー最近Aco-opの入り口にも消毒液のマットが備え付けられている。先日ジャザ(運動)に来ていた友人オキちゃんの話だが。彼女の住む栗野町は宮崎県えびの町に接している町。町内に2箇所消毒のポイントが出来たそうだ。ゆっくり通らなければならないので、いつも渋滞になるらしい。畜産をやっている家の周りには真っ白な石灰が撒かれ・・。しかし一番大変なのは牛や豚を飼っている畜産農家の方だろう。新聞で宮崎県川南町で牛を飼っている家族の話を読んだ。小学生の息子さんがいつも世話して可愛がっていた牛の殺処分が決まった日に、母親が泣いているのを見て一緒に泣いたとのこと。学校から帰ったら牛小屋にもう牛は居なかった。なんともやりきれない。

*島に行く黒き牛どち青葉風

牛の力はかうも悲壮だ
牛の力はかうも偉大だ
それでもやつぱり牛はのろのろと歩く
何処までも歩く
歩きながら草を食ふ
大地から生えてゐる草を食ふ
そして大きな体を肥やす
利口でやさしい眼と
なつこい舌と
かたい爪と
厳粛な二本の角と
愛情に満ちた啼声と
すばらしい筋肉と
正直な涎を持つた大きな牛
牛はのろのろと歩く
牛は大地をふみしめて歩く
牛は平凡な大地を歩く

今回の口蹄疫の最初の発生は3月26日。民主党政権が普天間だ、辺野古だと迷走しているうちに、被害は拡大の一途を辿る。6月3日の段階で感染累例269例、殺処分対象数180,000頭に。さらにプラス10万で計約280,000頭の殺処分が必要とされるとのこと。東国原 知事が苦渋に満ちた顔で「農家にとって地獄ですよ」と言っていたが、ほんとうにその農家の方々の苦悩たるや、はかり知れない。
カネもキチも大事な問題であるが口蹄疫にも真剣に政府は取り組んで欲しい。隣県である鹿児島県では、県産ブランド牛「鹿児島黒牛」の種牛12頭を口永良部島や種子島などに分散避難させる方針を固める。偶然にも今日10号線の隣の車線に黒牛の乗ったトラックを見る。鹿児島ナンバーだった。島に行く牛かもしれない。元気でがんばれ!

*「牛」高村光太郎(1955年) より引用


■編集後記

今月は同級生の訃報があり、句友の入院があり、親の介護だの子供のインフルエンザだのと他人事のように言い騒いでいる場合ではなくなった。
自分達本人の健康管理の重要性、自己コントロールの能力が問われている。
かく言う私も毎朝一錠の降圧剤を服用しているし、更年期鬱(躁鬱病?)が調子悪い時には知り合いの神経科医にソラナックスを処方してもらうこともある。
油断をするとすぐに「中性脂肪」の数値が上がり、以前は男なのに「貧血」になったこともあった。
そろそろ前立腺や膀胱も老化しはじめていて、尿意もなかなか定まらない。

人間、何か痛い目にあわないと、その生活習慣を変えるのはむずかしい。
また、一旦健康を取り戻すと、「喉元過ぎればなんとやら〜」でもとの木阿弥となることも多い。

「惜命」はするくせに自分の体は大切に扱わない。
宇宙も地球も月も自然もこの命も、すべては神様に戴いたものである。
戴いたものはありがたいと思って大切にしなければならない。
これが当たり前だ、と思っていること多いでしょ? 世の中。(>_<)


■消息
砂太:文學の森句会【特選】(飯野幸雄選)
●おおい雲よ花菜の土手に見た夢よ  白川砂太

水音:『俳句界』6月号/「俳句ボクシング」【リングサイド】(石田郷子選)
●鬼やらい鬼の集える焼き鳥屋  山下水音
『俳句界』6月号/「雑詠」【佳作】(辻 桃子選)
●床石に化石の見ゆる余寒かな  山下水音

葱男:『俳句界』5月号/「めーる一行詩」【秀逸】
●しやぼんだま飛んでエデンの東まで  中島葱男
『俳句界』6月号/「雑詠」【特選】(辻 桃子選)
●雛の間にみしりみしりと歩み入る  中島葱男



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