*無法投区/鳴神月

〜火蛾となり優作の待つ銀幕へ〜

*芳雄=葱男

原田さんは我が生涯で唯一無二、最高に大好きな役者だった。
有線放送の会社を辞して、吹田で日雇いをしていたころ、毎週のように京都の一乗寺まで映画を観にでかけた。
京福電車の一乗寺駅で下りて、小さな商店街をゆくと、市場の二階に「京一会館」という名物キネマ館があった。
大森一樹や村上知彦といった同世代の映画好きの若者が集まって、年に一回「ファンのための映画まつり」というイベントを開催していたのだ。
学生が主体となって運営する小さな映画祭には、当時、すでに大スターだった原田芳雄やまだ若き松田優作が毎回のようにゲストで来てくれた。
おそらく、ノーギャラに近かったであろうことは、その場の話でよく分った。
原田さんはただ純粋に映画と映画ファンを愛していた。そして多くの映画人やファンから愛されていた。
彼は当時の文学青年、演劇青年にとって、まさに憧れの俳優さんだった。

スクリーン上であんなに素敵に遊んだ役者は他にいない。
高倉健や池部良等の大御所を相手にしても、なんと軽やかに彼等の演技を飛び越えていったことか。そして若い役者たちに、なんと鮮やかなアドリブを投げつけたことか。
「赤い鳥逃げた?」でまだ20歳そこそこの桃井かおりとからむシーン。
ソファーに寝そべっている芳雄に覆いかぶさるようにしてかおりがキスする。
「どう? 私のキス」
「うん、悪かあ〜ない・・・・・ が、、、特別良かあ〜ない」
この間、がたまらないんですねえ〜。

YOU TUBUで検索できる動画をふたつ紹介します。 ひとつめは「芸能才人図鑑(その1〜その6)」 インタビューアーは上岡龍太郎と島田紳助。
「どんな映画を撮りたいですか?」という質問に彼の答はこうだった。
「僕は基本的に〈笑い〉というものを信じていますから、・・・喜劇ができたらいいな、と思いますね、今まで自分でやってきたことはシリアスなコメディだと思ってますから。」

もっと、もっと遊ぶことこそが大切なことだと、そう原田芳雄は云う。

では追悼の句を。
みなさんはいくつの映画を思い出しますか?

**************

復讐のつもりで歌ふ夜の秋

反逆のメロディ奏づ風の鈴

愛されし開襟シャツのアウトロー

水打てば生き生きと野良走りだす

八月の乾いた砂と濡れた砂

御子神の到頭古りし夏合羽

夕焼雲どこへ逃げたか赤い鳥

田園に死んでも消えぬ蝉時雨

祭果つ役者ひとりを失うて

波際を縫ふや裸足のブルージン

瑠璃蜥蜴憤怒の河を渡りけり

鳴神や浴衣を解いて闇を狩る

いざさらば箱舟に立つ虹の梁

月涼し友は静かに瞑りけり

寝盗られて愛の讃歌をみそぎとす


*睡蓮にちょっと立ち寄るウォーキング=資料官

●睡蓮にちょっと立ち寄るウォーキング
●睡蓮や一糸乱れず今朝も咲く
●睡蓮のひかり求めて写真館
●つかの間の自己主張あり半夏生草
●博多から恩師上京夏講義

帰宅したら大学のゼミの先生から留守電が入っていた。明日の同窓会に上京して参加するのでできたら逢いたいとおっしゃられていた。それならばと,急遽参加することとし,夕方学士会館に出かけた。先生は確か88歳,御一人で元気に上京,ひょっこり会場に現れた。今日は飛行機ですかとお聞きしたら,のんびりと新幹線に乗ってきましたバイと嬉しい一言。ところが,この春に奥様がご逝去された由,言葉もありませんでした。今回は2泊3日の上京,東京はこれが最後だろうと言われて,少々さびしい気もしたが,福岡に帰ればお会いできると思い直した。

このように七月は遠来の客人が多く宴会が多かった。ミニ丘ふみも2回やった。この時期は暑さも厳しくて,運動不足になりがちなため,土日の朝は近所の石神井公園を歩き回ることにしている。この時期の楽しみは公園の虫たちである。水辺にはクロアゲハやカラスアゲハが水飲みにやって来る。クヌギの木にはコムラサキ,ルリタテハ,キマダラヒカゲなどの蝶やカナブンやスズメバチなどが止まって樹液を吸っている。今年はなんと奄美大島が北限といわれていたアカボシゴマダラがいたし,アサギマダラが飛んでいるのも見かけた。南の蝶が突如として首都圏に現れるなど,生態系が変わってきていることを目の当たりにしたのである。

この時期の石神井公園の花は睡蓮と半夏生草。モネの絵を見ているような睡蓮池は行くたびに花の咲き具合,葉の伸び具合でその様相が変わってくる。次第に花が葉に埋もれて見えなくなってくるが,それでも毎朝きちんと花が開いているのは見事である。光の当たり具合で毎回写真の出来栄えが違っているのが面白い。周りにはカメラ持つ人・筆を持つ人がいて,和気あいあいである。

坪内稔典
●睡蓮に誰もが遠くなるまなざし
●睡蓮へまっすぐに行くあの人は
●睡蓮や老いも若きも腰おろす
●睡蓮へちょっと寄りましょキスしましょ
残念ながら,公園に河馬はいない。

2011年7月23日(土) 三宝寺池の睡蓮

2011年7月17日(日) 1週間前

2011年7月9日(土) さらに1週間前

2011年7月9日(土)

さて,白がまぶしい半夏生草のスポットに寄ってから公園を一周,もう一つ地元の氷川神社に寄ってお参りするのが定番。さっさっと歩けば30分程度の行程なんだろうが,あちこち立ち寄るので結局1時間近くかかる。たいした距離ではなく,まだまだ明らかに運動不足である。

2011年7月18日 半夏生草(片白草)


かごんま日記:“I'm Going Slightly Mad” = スライトリ・マッド

2011年7月30日(土)
*運不運いろいろありて七月尽

When the outside temperature rises
And the meaning is oh so clear
One thousand and one yellow daffodils
Begin to dance in front of you - oh dear
Are they trying to tell you something ?
You're missing that one final screw
You're simply not in the pink my dear
To be honest you haven't got a clue
I'm going slightly mad
I'm going slightly mad
It finally happened - happened
It finally happened - ooh woh
It finally happened - I'm slightly mad - oh dear !
Ha ha ha ha ha

I'm one card short of a full deck
I'm not quite the shilling
One wave short of a shipwreck
I'm not my usual top billing
I'm coming down with a fever
I'm really out to sea
This kettle is boiling over
I think I'm a banana tree
Oh dear
I'm going slightly mad
I'm going slightly mad (I'm going slightly mad)
It finally happened - happened
It finally happened - uh huh
It finally happened - I'm slightly mad - oh dear !

Uh uh ah ah
Uh uh ah ah
I'm knitting with only one needle
Unravelling fast it's true
I'm driving only three wheels these days
But my dear, how about you ?
I'm going slightly mad
I'm going slightly mad
It finally happened
It finally happened - oh yes
It finally happened - I'm slightly mad !
Just very slightly mad !
And there you have it !

今日は、大当たりの日。車が当たった!と言っても、悪いほうの意味だ。追突された。
100%先方の過失。もしも加害者のあなたが無理な追い越しをかけなかったら、私は楽しく初めての犬のキャンプに参加できたでしょう。犬のさくらは、怖い思いをすることはなかったでしょう。助手席に座っていた犬仲間のYさんの肩首腕を痛めることはなかったでしょう。
仕事を休ませ整形外科に通院させる羽目には陥らなかったでしょう。車を無残にも破り、フレームや車軸を曲げ、運転席のドアが開かなくなることはなかったでしょう。そんな恐ろしい車を修理するなら保険会社が60万出してやるから乗れと言われることはなかったでしょう。そんな車に乗りたくないというと、1年半前に100万で買った1300?の中古の、でもよく走ってくれてた車を廃車し、時価の47万出してやるから、それで買えなんて言われることはなかったでしょう。TKN保険とJA共済、持ち込んだ隼人の修理工場と車を買った大分の親戚の中古車センターの四つ巴に巻き込まれることはなかったでしょう。百戦錬磨、海千山千の人たちのマニュアル通りの慇懃無礼さにイライラさせられることはなかったでしょう。話には聞いていたが、不運はある日突然やってくるもので・・・。耐え難い日々が続く。自分もいつ加害者側に回るかわからないのだが、1,2分の道路脇のハザードランプつけ停止中の車にはぶつけるなよなあ。当てられるなら福に限る!。

*“I'm Going Slightly Mad” by Queen  (1991) より引用


■編集後記

今月の26宗匠選、A部門の天地3句は夏海さん独占でした!
快挙です!
夏海さんは「め組」に参加しはじめてもう半年ぐらい経ちますから「丘ふみ6句」と合わせると毎月13〜4句は句をまとめていることになります、それで全体の質が下がらない、というのが実力です。
今月からは水音さんも「め組」に参加しました。
これで「めじろ遊俳クラブ」には夏、水、五、ス、葱の5人が投句することになり、1大派閥となりましたが、いかんせん「め組」では基本的に句会に参加しないと選句ができないのが哀しいなあ〜。
この前、選句はエンターテイメントだと書きましたが、選句は作句よりその人の「成り」が分るのでとても面白い。選にはもともと相性のようなもがあるのですが、毎月のモード次第でその相性がときどき変わり、今月は同じ人の句ばかり選ぶ、というようなことが起きるのが俳句です。宗匠や砂太先生の選句のなかに「俳句とは何か?」のヒントがたくさん隠れているのでそこを注意して見ると面白いかも、です。
〈その人の句が好き〉というのと、〈その人の選が好き〉というのが必ずしも一致しないのも俳句です。私の経験ではすごい先生は句よりも選が面白いものです。

今月号から「俳句界」雑詠の選者が変わり、新たに「百鳥」の大串章主宰や、角川春樹氏、有馬朗人先生などが加わった。そして私の大好きな池田澄子さんも!
第1回目の「池田澄子 選」獲得者は白川先生に軍配が上がった!
これはくやしい〜!!
砂太先生の「火宅」もまた、先にしてやられたって感じでした。
でも、そのおかげで前には理解できなかった中原道夫の「氷柱」のイメージががにわかに氷解しました。そっかあ〜、「氷柱」ってとっても怖い比喩やなあ〜〜!
下段の「句友のページ」、今月から金原まさ子(かねこねこ)さんの「百歳からのブログ」が加わりました。
これはとっても刺激的!! 信じられないようなとっても革新的な俳句が毎日のように生み出されていきますよ。唖然!


(文責 葱男)


■消息

砂太
●逢へば又ああと言ふなり虹一重  白川砂太
『俳句界』8月号/「兼題=虹」【佳作】(佐藤麻績 選)
●回りつつ凧落ちてゆく遠野原  白川砂太
『俳句界』8月号/「雑詠」【佳作】(池田澄子 選)

水音
●恐竜の見た虹けふは吾が見る  山下水音
『俳句界』8月号/「兼題=虹」【佳作】(名和未知男 橋爪鶴麿 選)
●かたくりの花咲き人はみな無口  山下水音
『俳句界』8月号/「雑詠」【佳作】(泉田秋硯 角川春樹 選)

葱男
●万緑や全肯定否大肯定  中島葱男
『俳句界』8月号/「俳句ボクシング」【リングサイド】(石田郷子 選)
●ゆく春や草月流に生きて来し  中島葱男
『俳句界』8月号/「雑詠」【佳作】(大串 章 選)

五六二三斎
●斑名となるかたつむり家族会  原たかゆき
『俳句界』8月号/「めーる一行詩」【佳作】

スライトリ・マッド
●夏のてふさくらてふ犬へひらひら 島小みかん
『俳句界』8月号/「めーる一行詩」【佳作】


■句友のページ
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