〜ゆるキャラのカステラを買ふ冬の市〜
*「筥崎宮・蚤の市」吟行句会=葱男
高校の同窓会翌日、せっかく博多にみんな集まったのだから、ということで「丘ふみクラブ」の有志7名(砂太、淳一、資料官、五六二三斎、久郎兎、雪絵、葱男)が集い、筥崎宮の蚤の市をひやかしながら、吟行をすることになった。
蚤の市を遊吟の場所に選んだのは、同級生の「フーテンの岩ちゃん」こと岩城信久君がそこにお店を出しているからである。
彼は某保険会社を一昨年で無事定年退職し、それまでの長い単身赴任生活にピリオドをうって、故郷の博多に帰ってきた。
そして、長年の出張独身生活の間に知らぬ間に増えてしまった各地のおみやげや骨董を売りさばくべく、露天商の資格を取って毎月、ここ筥崎宮の蚤の市に出店している。
彼の偉いところはそれだけではない。同級生に声をかけて、要らなくなったガラクタを引き取り、それをみんなの代わりに売りさばき、その上、収益の一部をこれまた同級生の「小柳浩一」君が代表になって活動している「自閉症協会」に寄付していることだ。
その心意気と行動力に心うたれた私は、何か少しでも彼の気持ちを応援したいと以前から思っていたのである。
当日は生憎の雨、初冬の季語でいうならまさに「初時雨」である。
不思議なもので、ただ「雨」というと鬱陶しいだけだが、これを「初時雨」と呼んだ途端、風景はとても情緒のあるものに転化する。
私たちは細かくあたたかい初冬の雨に濡れそぼりながら、筥崎宮の境内を散策し、参道に立ち並ぶ蚤の市の店をひやかして歩いた。
その後、カラオケ屋に移動して句会、吟行句会ほど楽しいものはない。
それは経験してみなければ分らない。ただの散歩にはない充実した自然観察や物事、人に対する興味を持つことができる。その感動や発見を一句にしたためようとする頭の働きも必要になる。
頭も使い、体も使い、学習もし、そして、なんらかのものを創作、創造する喜びに満ちている。
俳句と吟行はこれだからやめられない。
そして、どきどきの披講と選句と結果発表!
誰がどんな句を詠んでいるのか、興味津々である。
■4点句
蚤の市てふがらくたに居て時雨=砂太
◎葱、雪
■3点句
平服で鳩寄せてゐる七五三=砂太
◎久○1
筆塚の漆黒に濡れ楠落葉=雪絵
◎砂○1
(この句の季語「楠落葉」が夏の季語であることが五六二三斎さんから指摘された。「落葉」といえば冬の季語だと思っていたのが目からうろこである。この句は推敲してたとえば「筆塚の漆黒に濡れ冬紅葉」としtらどうか、などの意見があった。)
箒目に鳩悠悠と冬ぬくし=雪絵
○3
雨空を癒す童謡七五三=久郎兎
○3
勝運の神の留守なり蚤の市=雪絵
◎資○1
七五三着物(べべ)が濡れてる母と娘と=砂太
◎淳○1
かじ棒を土に休めて初時雨=葱男
◎五○1
■2点句
おみくじの干し柿のごと吊られをり=葱男
宮前の昔電停柿落葉=資料官
飴舐めて頬ふくらます七五三=葱男
露店から蚤をけちらす冬の雨=資料官
■1点句
鳥居から鳥の一文字石蕗の花=資料官
神輿にも賽銭投げし七五三=五六二三斎
露天村初時雨にも賑やかし=淳一
ジェット機と鳩の飛び交ふ七五三=資料官
彩りに加勢の紅葉宮参り=久郎兎
友が出す露天の店に時雨かな=淳一
楼門の鳩滑空の弧時雨空=久郎兎
筆塚に一礼ニ拍手時雨けり=五六二三斎
蚤の市皆寄附せんと某店主=久郎兎
七五三草履が転ぶ三才娘(こ)=砂太
■ 葱々集〈back number〉
*楠木しんいち「まほろば」 *
*銀座吟行句会 *
*Subikiawa食器店 *
*ジャポニスム *
*金髪の烏の歌 *
*Mac崩壊の一部始終 *
*香田なをさんの俳句 *
*能古島吟行句会 *
*Calling you *
*白鴨忌 *
*葬送 *
*風悟さんの絶筆 *
*小田玲子・「表の木」 *
*初昔・追悼句 *
*大濠公園/吟行・句会/2012,11,11 *
金子敦「乗船券」 *
丘ふみ俳句:丘ふみ俳句:韜晦精神派(久郎兎篇) *
丘ふみ俳句:協調精神派(前鰤篇) *
丘ふみ俳句:行楽精神派(メゴチ篇) *
丘ふみ俳句:ユ−モア精神派(喋九厘篇) *
丘ふみ俳句:俳精神派(五六二三斎篇) *
丘ふみ俳句:俳精神派(香久夜・資料官篇) *
丘ふみ俳句:俳精神派(水音篇) *
丘ふみ俳句:詩精神派(秋波・雪絵篇) *
丘ふみ俳句:工芸精神派(君不去・夏海) *
丘ふみ俳句:実験精神派(白髪鴨・ひら百合・入鈴・スマ篇) *
丘ふみ俳句:砂太篇 *
俳句とエチカ *
現代カタカナ俳句 *
大震災を詠む *
「遊戯の家」金原まさ子 *
さらば八月のうた *
「ハミング」月野ぽぽな *
「花心」畑 洋子 *
1Q84〜1X84 *
「アングル」小久保佳世子 *
ラスカルさんのメルヘン俳句 *
「神楽岡」徳永真弓 *
「瞬く」森賀まり *
『1Q84』にまつわる出来事 *
「街」と今井聖 *
「夜の雲」浅井慎平 *
澄子/晶子論 *
「雪月」満田春日 *
「現代俳句の海図」を読む:正木ゆう子篇 *
櫂未知子篇 *
田中裕明篇 *
片山由美子篇 *
「伊月集」夏井いつき *
「あちこち草紙」土肥あき子 *
「冬の智慧」齋藤愼爾 *
「命の一句」石寒太 *
「粛祭返歌」柿本多映 *
「身世打鈴」カン・キドン *
ソネット:葱男 *
俳句の幻想 *
丘ふみ倶楽部/お誕生日句と花