〜儚げな銀座のすずめ秋の雨〜

銀座吟行句会=葱男

句会のページに飛んだらパスワードに「7hakuba7」を入力してください。 白馬さんが撮影してくださった銀座吟行句会の模様が閲覧できます。

九月七日、東京出張の最終日、楽しみにしていた「銀座吟行句会」の日が来た。

吟行句会の参加者は、丘ふみ連衆からは葱男のほかに資料官さん、阿Qさん、白馬さん、ぼくるさん、十志夫さん、ゲストにはやんまさん、なをさんをお招きし、飛び入りの分葱さん(マイワイフ)は無謀にも初めて吟行に参加する。

午後の1時、無事に参加者八名が有楽町駅前の「○1○1」ビルの正面入口に集合。

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懐かしのフランク永井、「有楽町で逢いましょう」である。
のっけから昭和の香りがプンプン匂う演出、今回の銀座吟行のコースはすべて十志夫さんがスケジュールを作ってくださった。
十志夫さんはサラリーマンをリタイアしてから年金生活にはいるまでの12年間、銀座でお洒落な居酒屋(BAR)を経営していたということもあり、この界隈のことは隅々までよくご存知なのです。
資料官さんも、長い間通っていた会社のオフィスが有楽町駅前からよく見えるビルだそうですし、阿Qさんの主宰する劇団の稽古場も以前は築地のビルの最上階にありました。三人にとっては、築地、銀座、新橋あたりのこの界隈ははとても馴染みの深い場所なのでしょう、いろんな思い出が詰まっているようです。

われわれ銀座吟行の一行は、秋の優しい雨に包まれながら十志夫さんの案内でまずは数寄屋橋へと向かう。
此処は言わずと知れた菊田一夫の名作「君の名は」の舞台になったところ。真知子と春樹のすれ違いのシーンの跡地には「めぐりあいの泉」を中心に数寄屋橋公園となっていた。真知子と春樹の悲恋と純愛の場所には、ふさわしいのか相応しくないのか、岡本太郎デザインのへんてこな時計塔が建っていた。

菊田一夫のの石碑を皮切りに、つぎに訪れたのは、藤村、透谷らが通ったという「泰明小学校」。泰明小学校からはほかにもたくさん有名人が排出している。金子光晴、殿山泰司、朝丘雪路、和泉雅子、中山千夏、加藤武、名前をあげるときりがない。
近くにはこれが二代目を接ぎ木したという「銀座の柳」、調べてみると銀座の柳も紆余曲折を経て現在に至っているようで、他にも三代目、四代目の柳もあるとのこと。

「みゆき通り」の並木道から銀座の並木道を歩く。啄木が勤めていた新聞社のあと、慶応大学OB会の集ったビルなど、懐かしい昭和の重たいビルヂングが並ぶ。

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広い通りを脇に逸れ、狭い狭い路地に入るとその奥に、太宰治、坂口安吾、織田作之助らの溜まり場だった「バー・ルパン」の看板があった。

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ほほうー、これがルパンか!
江戸川乱歩のミステリーの表紙になりそうなモノクロのルパン。山高帽も片眼鏡もさすがに決まっている。

われわれは十志夫さんの案内で狭い狭い路地を迷路をあるくようにして次の目的地、与謝野鉄幹、晶子御用達の画材店「月光荘」へと向かう。

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ここでしばしの休憩をとり、コーヒーを飲みながらしばし句の構想を練る。30分ほどでまた地上へ。最後に美輪明宏、戸川昌子、金子由香里が唄った「銀巴里跡地」や「銀ブラ」の語源になった喫茶店「パウリスタ」などを見て、句会場である新橋駅前のカラオケ屋にたどりついた。

ここで3時から5時まで句会。(欠席投句でラスカルさん、会の途中からはぼくるさんも参加してくださり、選句には間に合いました。また、後日メールでラスカルさんと小久保さんにも選句していただきました。)

20分ほどで句を仕上げ、それぞれが5句づつ短冊に記した句、全44句を清記してすぐに人数分をコピー。みんなに配って句会が始まる。ひとりひとりが7句の選(うち1句が特選)をして順番に披講、みんなで感想を述べ合ったらあっという間の2時間が過ぎました。
昼間のカラオケ屋で還暦過ぎのおじさん、おばさんが大挙して、歌も歌わずに明るい照明のもとでなにやらもぞもぞと紙に文字を記している光景をカラオケの店員さんはどう思っただろう?

最後は「土風炉」で宴会。

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「街」の句会を終えた小久保さんと、友人の「めだかさん」も駆けつけてくださって、総勢11名、私にとっては3人の美熟女のお顔を眺めながらの楽しい懇親会となりました。

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解散〜〜!

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なお、この会の模様は句友のブログ、俳句と主夫の間で♪、 <なを>の部屋にも紹介されています。

入選句

●秋の暮ルパンの先は行きどまり=資料官
◎や、阿○十、白、佳、分=8点

●ビル一つ消えて燕の帰りけり=十志夫
◎ぼ、佳○葱、な、や、ラ=8点

●路地裏の細き青空穴まどひ=白馬
◎十○葱、や、ラ、佳=6点

●学舎(まなびや)ぼ門の古びて蔦紅葉=やんま
○な、資、阿、ラ=4点

●銀巴里の跡地に秋思置いてきし=ラスカル
◎白○資、分=4点

●脂粉濃き邯鄲を脱ぐ金春湯=葱男
◎分○十、阿=4点

●銀座裏残る燕に話しかけ=白馬
◎ラ○葱、佳=4点

●新涼や啄木歌碑に鳥の影=資料官
◎な、○白、ラ=4点

●相乗りのメロスの灯り秋の蠅=十志夫
◎資○や=3点

●啄木碑裏に啄木鳴いてをり=白馬
○十、阿、ぼ=3点

●秋の雨言霊けむのやうに吐く=やんま
◎葱○な=3点

●爽やかな風連れて来る京男=ラスカル
○や、ぼ、佳=3点

●銀巴里の石碑のもとにカンナ咲く=分葱
○阿、や、ラ=3点

●真知子巻今は昔の鰯雲=阿Q
○分、ぼ=2点

●桃吹くやルパンの椅子を回しつつ=葱男
○な、分=2点

●新酒汲み交はす一人は京都弁=ラスカル
○十、佳=2点

●ノートには水玉模様草の花=なを
○葱、資=2点

●秋陰のジャジーなテンポ並木路=葱男
○資、分=2点

●銀巴里も今は昔の秋の暮=阿Q
○白、や=2点

●老紳士傘のステッキ秋めける=やんま
○葱、ぼ=2点

●銀巴里の小さき名残りや秋の雨=十志夫
○な、白=2点

●銀巴里の余韻を曳くやちっち蝉=葱男
○分、ぼ=2点

●数寄屋橋誰を待つやら秋時雨=阿Q
○十、資=2点

●止まり木に肢跳ね上ぐる秋思かな=十志夫
○白、佳=2点

●銀ブラやジョンレノンの秋日濃し=資料官
○葱=1点

●数寄屋橋に佇み釣瓶落しかな=ラスカル
○阿=1点

●君の名はあの日の思影秋しぐれ=分葱
○阿=1点

●待宵やみやこへ帰る夜行バス=資料官
○十=1点

●8Bの鉛筆一本涼新た=なを
○ぼ=1点

●路地裏に香る珈琲ゐのこづち=なを
○ラ=1点

●身に入むや小傘の銀座葱句会=白馬
○な=1点

●火取虫きのふ燃え尽きビルの闇=やんま
○白=1点


■ 葱々集〈back number〉
*Subikiawa食器店*ジャポニスム*金髪の烏の歌*Mac崩壊の一部始終*香田なをさんの俳句*能古島吟行句会*Calling you*白鴨忌*葬送*風悟さんの絶筆*小田玲子・「表の木」*初昔・追悼句*大濠公園/吟行・句会/2012,11,11金子敦「乗船券」丘ふみ俳句:丘ふみ俳句:韜晦精神派(久郎兎篇)丘ふみ俳句:協調精神派(前鰤篇)丘ふみ俳句:行楽精神派(メゴチ篇)丘ふみ俳句:ユ−モア精神派(喋九厘篇)丘ふみ俳句:俳精神派(五六二三斎篇)丘ふみ俳句:俳精神派(香久夜・資料官篇)丘ふみ俳句:俳精神派(水音篇)丘ふみ俳句:詩精神派(秋波・雪絵篇)丘ふみ俳句:工芸精神派(君不去・夏海)丘ふみ俳句:実験精神派(白髪鴨・ひら百合・入鈴・スマ篇)丘ふみ俳句:砂太篇俳句とエチカ現代カタカナ俳句大震災を詠む「遊戯の家」金原まさ子さらば八月のうた「ハミング」月野ぽぽな「花心」畑 洋子1Q84〜1X84「アングル」小久保佳世子ラスカルさんのメルヘン俳句「神楽岡」徳永真弓「瞬く」森賀まり『1Q84』にまつわる出来事「街」と今井聖「夜の雲」浅井慎平澄子/晶子論「雪月」満田春日 「現代俳句の海図」を読む:正木ゆう子篇 櫂未知子篇田中裕明篇片山由美子篇「伊月集」夏井いつき「あちこち草紙」土肥あき子「冬の智慧」齋藤愼爾「命の一句」石寒太「粛祭返歌」柿本多映「身世打鈴」カン・キドンソネット:葱男俳句の幻想丘ふみ倶楽部/お誕生日句と花