● 石灰石の祭壇が燭台の灯に幻想的な色を映す。 バロックの街、レッチェのサンタ.クロ−チェ教会。 イタリアのかかとの部分にある。 プ−リア州はまだまだ日本人にはあまり知られていない土地だが、地元の人達が言うにはオリーブ・オイルもワインもトスカーナには負けない。 物価の安いプーリアのワインやオリーブが日本に出回るようになるのも、そう遠い先の話ではないかもしれない。 それにしてもこの石の祭壇の、透明感のある色彩の美しさはなんだろう。 淡いピンクとブルーが暈し模様に変化しながら間接光にしっとりと浮かび上がる。 その後、アレッツォの骨董市で石灰石の仏像にはじめて出くわしたが、ひんやりと生々しい透明感を持った、なんとも西洋風なオシャレな仏陀だった。 世に中にはまだまだ見た事も聞いたこともないような、不思議なものがきっとたくさんあるのだろう。 *キリストの高き円窓に光る夏 | |
●レッチェのシンボル、サンタ・クロ−チェ教会の威風堂々とした装飾紋様のファサード。 昔の職人はある意味幸せかもしない、などと勝手な事を思う。 ローマを中心とするキリスト教圏において、中正、近世には修道士こそが芸術家であり、一流の職人であった。 厚き信仰心は時によって、世間体や家族愛を超えてまでも純粋にもの作りに携わる職人の創造の力になった。 素晴らしい建築も絵もワインやビールでさえ、僧侶の手によって吟味、向上されていったのである。 | |
●レッチェでも多くの愛すべき人たちと出会った。 大金持ちのB&Bのオーナーは世界中の美術品や趣味の靴の収集を惜し気もなく披露してくれた。 宿の近くのBARの、ちょっとオリバー・カーンに似たマスターは、イタリア語が喋れないのにイタリア人に電話しなければならない事情を察してくれて、自分の金で公衆電話から相手先に電話をかけてくれた。 町中でスケッチしていると、ヒゲのおっちゃんが盛んに絵を褒めてくれ、似顔絵を描いてくれとせがんできた。5分ぐらいで下手な絵を描くと、凄く満足げに「カプチーノでもおごるよ!」って。 |