詩集「美しき無常の月 悲しき無情の天使 」

ペナンからのメッセージ『LIFE』



●そねっと

7×7, for 49days, she had been just a baby girl.
七・七 四十九日の間だけ、彼女は人間の赤子でした

Once, she died, and was reborn in another world and lived for only 7 days
一度、神に召され、七日間だけ異界に生まれかわりました

After that, a white dragon brought her back
そのあと、白い龍に連れられてふたたび地上に還ってきました、今度は一匹の猫として

She meowed with a small voice over and over again, in front of mam's room.
彼女はママの部屋の前で、何度か、ちいさな声で鳴いてみました

In that room, mama also was weeping bitterly.
部屋の中では、ママもまた、ひどく泣き続けていました

On an empty stomach, the cat's bowels sounded.
あまりにお腹がすいているので、猫の胃袋はクーっと音を立てて鳴りました

Mama, opened the door quietly, looked at her with a wonder.
ママはしずかに扉を開き、不思議そうな顔で彼女のことを見ました

Then, mama gave her a lot of milk on one plate.
それからママは、お皿にいっぱいのミルクを彼女に与えました

For the cat, the drink was just a mother's milk.
猫にとってその飲み物は、まさにお母さんのお乳でした

One of these days , mama called her "Coo", and, she spent 19 years together with mama.
そのうちにママは彼女の事を「クー」と呼ぶようになり、そののち彼女は19年間をママと一緒に過ごしました

For the first 10 years, mama was a very skinny, smoked heavily, and, sometimes was weepinng like an early autumn shower.
最初の十年間、ママはとても痩せていて、煙草ばかりたくさん吸って、時折、秋の時雨のように泣き続けました

In the 11th year, for the first time, mama began to grow indigo plant at her porch.
十一年目、ママはベランダに初めて藍の花を鉢植えしました

Here comes the 13th verse of this sonnet, a winter is already coming near by.
ソネットの十三行目、すでに冬はすぐそこに近づいています

Mama, smiled a little ,and all the time, was stroking white hairs of Coo's back , softly annd gently .
ママは少し微笑んで、そしてクーの背中の白い毛を、いつまでもずっと、優しく優しく撫でてくれました



●金髪の烏の歌

いつもの時間に と君は云う

気まぐれに煙草を吸う
罪悪感を舐めるように いがらっぽい日常を確かめるように
朝でも昼でもかまわず夜にして カーテンを全部閉め切って
グレゴール・ザムザの殻のなかに閉じこもって
煙草を吸う

いつもの場所で と君は云う

ジャズは・・・だいっきらい!
それは前から感じていました
月曜日はもっともっと嫌い
冷たい心は君も僕もおんなじです
いつもいつもいつも 100まで数えてみる
1、2、3、4、5、6、7
しだいに苦しくなってきて53、54、55、56、57
57から向こうは分からない
だからなんのイメージも持たずに数え続ける
96、97、98、99、100
ああ 生きるのってややこしい

青い花なら好き と君は云う

眠ってしまえば夜は短いけれど 夢の総量と夜明けの一瞬を比べてみて
君はどちらかを大切だと思ったことがあるだろうか
もしあるなら どちらが大切だと思っただろう

お酒が飲みたい と云う君

もうすぐ終わりが来ます 
「時代の忘却」という名前のお酒があるの知ってる?
いつも紅の下着をつけて いつもいつも不思議な言い回しをする 可愛らしい乙女のようなお酒です
飲んでみませんか

もうイヤ! そう君は叫んだ

物語は消えてしまう のか
新しいストーリーは次回に巡ってこない のか
まわりまわって古い古い繰り返しの日々がつづくだけ なのか

君の金髪は 君の黒髪よりも 君の匂ひがしました
君のにおひは 水仙の花の匂いのようでした

※この歌は、17歳の詩人「一木正治」君の詩へのオマージュとして創られたものです。
彼の原詩が知りたい方は公転周期クリックして下さい。



●吹き寄せ

笹蔓の
松の雌花の ちちりんの
まつぼっくりは待つ
いつまでも

聖なるも精なるも隠さずに立つ雄花の飛来を待つ
いつまでも

網代は言の葉の繋がりの実感
あるいは指と指の連絡
幸いなるかな 朋よ 同志よ 恋人よ

三ツ鱗もて厄除けて
魔除けてあなたを退けて
拒んでみせて盗み見て

なんの因果でこの世に生まれ
どこの誰かは知らねども
麻の葉にして源氏香
ドラッグハイならナチュラルハイ

青海波の重なるごとく
重なりを本願として

観世音菩薩様
観自在菩薩様
アヴァローキテシュバラ観世水
アヴァローキテシュバラ観世水



●猫売り

猫はいらんかえ〜
かわいくてさびしんぼうの猫の子はいらんかえ〜
(ふるい猫がございましたら あたらしい猫と交換いたします)
あたらしくてかわいい猫はいらんかえ〜

猫鳴こね屋根の上(へ)の閨(ねや)猫鳴こね

古いものは
猫だろうが 葱だろうが 文体だろうが お払い箱

新しいものは
猫だろうと 携帯だろうと 独立国だろうと 吃驚箱

びっくりくりくりくりっくり

バンジョーを弾きながら
猫売りが唄う声が聞こえる
誰にも止められない 哀しい改革の声が聞こえる
誰にもやめられない 寂しい発展の歌が聞こえる

猫泣こね屋根の上の閨猫泣こね

そのまま死んで この街の 空の 下



●からだぢゅう 菜の花

からだぢゅう 菜の花
からだぢゅう 菜の花
からだぢゅう 菜の花
からだぢゅう 菜の花

突端には葱坊主

からだぢゅう
からだぢゅうで感じる 歓の 吾の 汝の饗応

水行なら千里 陸行なら万里

日沈むところの天使は
50%の砂糖と30%の萌黄色と
それぞれ10%ずつの鶴と八分音符でできていて
何も迷わず ただビクビクしている

しあわせになろうね

からだぢゅうの菜の花が Extra Virgin Oilに再生するように
世界中の恋人達が兵器と自我を投げ捨てるように

しあわせになろうね



●サイフォンと唐辛子

サイフォンの

すぐに沸騰する
milkyな泡立ちだね

サイフォンの ヴィーナスの
生れては消ゆる (消えないけど 消えちゃいそうなぐらい)
ヴィーナスの丘の ヴィーナスにくちづけ

ジワジワと熱い 唐辛子のような私です
唐辛子のような役割の
レシピにも載ってるでしょ
唐辛子の 愛しかた
味わい 音色 絡みかた

なんとも関わりがなさそうで
韻も踏んでないし 齢だって随分離れてるけど
じゃ〜〜〜ん 関係ないじゃ〜ん

既成事実としての 真実現実としての
眼前の
GUNS & ROSES
鉄砲と薔薇 月と太陽 雨情と花 恋人同種ぼくときみ 

サイフォンな君への便り とんがらし



●草の夢

みずからと云ひ 我が身と云ふ
ソレガイトヲシケレバ眠レ
カナシケレバ遠クヲ見ヨ と
今 光のようなものがささやいてゐる



●BLACK SWEATER

A black turtleneck'd sweater,
that's the end of the love.

Then, I'm jumping into a deep and warm sea,
name of "Friendship"



●FORTY THOUSAND MOONS

A clear sky in winter,
I can see forty thousant moons in my mind.



●MERRY X'MAS

Mr. JOHN LENNON's voice over the town.
That's waiting for Merry X'mas.



 ●HYDRANGEA

HYDRANGEA,
After the first kiss,
changes in that gentle rain...



 ●赦しの時

すべて 裁きの時代を超えて 彼を赦し給ふ
吾に殉じ給ふ



 ●幻月下村信士

その日に見るだろう 美しき無常の月
その時に出逢うだろう 悲しき無情の天使



 ●BOYS PLAY

Boys play
a last sunlight on the river
Dogs also feeling good,
and rushing.
All over the green.



 ●友情

一片の さくらの花びらが 大地に触れるように
仏陀の 末期の吐息に放たれた 甘美な教えのごとく



 ●神

ママンが神の腹 宮城まりこ も
ペデラストが神の背中 ルドウィヒ ヴィットゲンシュタイン も



 ●男と女

男と女が互いを拒否している
今宵の契りに 男を赦し 女を忘れるために



 ●少年の夜

開けた窓から 裸の胸に 冷たい夜気が降る
夜の層の いちまい底に浸み通った身体は 風信子の感じがする
両手を胸にあてて 冷えたアバラをボロンと弾くと 合わせるように
蒼褪めた月の 唄う声が聞こえる



 ●情熱

情熱は あらかじめ 薄められた 感情で
夕辺の空は 焼けていて なお 哀しい



 ●乞食

みなから蔑まれて 乞食が座っている
軽くて 臭い 黒い霞網が座っている
乞食とは 無言の事である
その他にせいぜい空き缶を所有する
もう 塔に向かっても叫ばない
蝸牛が女を知らぬように 乞食は死を知らない