〜冬 眠る〜
●ふるさとの湯屋に昭和のすきま風
●片方のハート見つかる暖炉かな
●ひうひうとうねる淑気や龍が来た
●寒雀喰ふてデカンショ論じあふ
●留守電のほろ酔ひ加減女正月
『俳句界』5月号/「雑詠」【佳作】(奈良文夫 選)
●永遠に永遠に永遠にマスク
『俳句界』4月号/「兼題/遠」【佳作】(名和未知男 選)
●豺(やまいぬ)の岩より深く眠りけり
『俳句界』3月号/「雑詠」【佳作】(大串 章 選)
●冬繊月ゼロに融け出す躯かな
『俳句界』3月号/「雑詠」【佳作】(角川春樹 選)
●粋がつて懐手して逝きにけり
『俳句界』2月号/「めーる一行詩」【佳作】
●鯛焼の余計なものに尾の餡子
『俳句界』1月号/「めーる一行詩」【佳作】
●紅葉に勝る紅葉金福寺
【百鳥】
●息白しタータンチェックのお下げ髪
【百鳥】
●探幽の凍瀧消えし曼殊院
【百鳥】
●旅憶ふ果物籠のもみぢ山
【百鳥】
●冬待ちて大樹のもとに氣功せり
【百鳥】
●君が猫だつたらひらふ小晦日
【百鳥】
●湯豆腐を乗せたる舌のマゾヒズム
【百鳥】
●雪が隠し雪が浮かべる辻模様
【百鳥】
●息白し日露戦争開戦秘話
【百鳥】
●国生みの話半分里神楽
【百鳥】
●白息を三尺五寸飛ばしけり
【百鳥】
●龍降りて凍滝ゆるむ大旦
【百鳥】
●雪嶺を遠くに見たる小雪かな
【百鳥】
●エッシャーの鳥運びくる冬の雲
【百鳥】
●ミシン台のアールヌーボー寒鴉
【百鳥】
●鉢植の似合ふ花より野水仙
【俳句界】佐藤麻績 選
●風花や父のさみしき無神論
【俳句界】茨木和生 選
●玉子酒舐めて孤独ぢやない感じ
【俳句界 茨木和生 選】<佳作>
●神無月遠出しているビリケンさん
【俳句界 佐藤麻績 選】<佳作>
●昭和八十五年東京タワー冬ざるる
【俳句界 石田郷子 選】<佳作>
●つららから昭和歌謡のひとしず
【百鳥】
●寒灯下商店街の神老ゆる
【百鳥】
●雪だるま囲みてラヂオ体操す
【百鳥】
●ベッドから合せ鏡の初御空
【百鳥】
●夜話やコビトがつくるマグカップ
【百鳥】
●冬木道スピード上げて漕ぎはぢむ
【百鳥】
●いつのまにか帰路となりをり狐塚
【百鳥】
●茶の花や寝顔を見せてくれしこと
【百鳥】
●畳まれし線路の果や鱈揚る
【百鳥】
●ご祝儀をもらふサンタの赤ら顔
【百鳥】
●無骨なる蜜柑の内のみずみずし
【百鳥】
●やすらかな不安に満ちて雪が降る
【はるもにあ】
●初雪の真中へダンスするやうに
【はるもにあ】
●冬ともし等間隔におばんざい
【はるもにあ】
●幼き日聖樹の玉を齧りけり
【はるもにあ】
●Xの大文字かじるクリスマス
【はるもにあ】
●文学も恋も終ふて日向ぼこ
【はるもにあ】
●一行を少なしとせず空也の忌
【俳句界 能村研三選】<秀逸>
●神話へとつながる系譜かたしぐれ
【俳句界 選】
●冬帽子さみしき顔に乗りてあり
【百鳥】
●ひらがなの破裂する音寒波来る
【百鳥】
●湯豆腐に舌を焼かるる逢瀬かな
【百鳥】
●狐の尾巻いて輩を連れ歩く
【百鳥】
●キユーピーのまばたきもせで春を待つ
【百鳥】
●小樽からルタオなる菓子雪まろげ
【百鳥】
●雪投げやしまけばさらに殺気立つ
【百鳥】
●神の留守極寒覚悟するのみか
【はるもにあ】
●神の子の肋をしやぶりホットワイン
【はるもにあ】
●冬茜こつんと卵割るごとく
【はるもにあ】
●ヒト科ヒトのこはれやすきを聖なる木
【はるもにあ】
●狸汁二つ枕を敷いたまま
【はるもにあ】
●海猫さわぐウォーターフロント憂國忌
【はるもにあ】
●白狐身ぬちに黄泉を湛へをり
【俳句界・めーる一行詩/特選】
●陰膳に林檎をまつるレノンの忌
【俳句界・めーる一行詩/佳作】
●早梅や五円を兄に借りしまま
【俳句界2月号/09】掲載
●春便り出町柳で乗りかへる
●雪化粧柩に母の顔施かな
●炉火消ゑてグラニュー糖の砂時計
●冬満月カクテルの名はXYZ
【百鳥】
●息白しゴジラも歳をとりました
●大根やアナクシマンドロスの無限
【俳句界 田中 陽選】
●酒冴ゆる下宿に我ら憂歌団
●冬ほほづき転校する子おみおくり
【はるもにあ】
●小晦日“を”の字にひそむ色香かな
●氷面鏡抜ければ大湖あたたかし
●雪兎ひとつ壊れてひとつ消ゆ
【俳句界・めーる一行詩/佳作】
●水仙の風ある場所に種を継ぐ
●貧貧と降りつづく雪イムジンガン
●ビタミンCDE服む冬籠
●はなひるや岳父の腹に弾丸ふたつ
●人の死を死んで聖夜の灯をともす
●山号に善気ありけりムササビ翔ぶ
●ゆきうさぎ子宮を離れゆきをんな
●ダイ・インをしてみる聖夜主は来るか
●木の葉髪積もりし古き畳かな
【百鳥】
●藪巻や胃薬に世話かけてをり
【百鳥】
●寿老人手水のあとの日向ぼこ
●車座を離れてもとの銀狐
●時雨忌のうしろに光つらなりぬ
●神有月ワープしかかる同窓会
●アトリエゆ北山時雨天ケ峯
●水郷を三段跳びに杜氏来る
●藪巻や胃薬に世話かけてをり
【百鳥】
●三畳間をのこ六人ちやんちやんこ
●侘助や鉄分たらぬ色男
●進行性メロドラマ的冬鴎
【俳句界 山崎十生/秀逸】
●名の木枯る終ひの進軍喇叭かな
●幸運の数字は13ペチカ燃ゆ
●一水をもて光らしむ雪の肌
●冬蔦の生ひ放題に一家族
●雪降り積む犬の眠りのかたちかな
【はるもにあ】
●風邪ごゑでありがとうねをうつさるる
●風邪ごこち山口小夜子の薄き胸
【はるもにあ】
●雪の晨まだ音立てぬ信号燈
【はるもにあ】
●冬深しワイングラスのこはれ易き
●歳晩やぐらつき始む大臼歯
【百鳥】
●年の尾の湯に茫々と裸の灯
【俳句界 田中 陽選】
●田遊びの父は八千代に好々爺
●しづり雪老ひてなほらぬひとめぼれ
●冬木立こぶしの固き仁王像
●埋火のような故郷に火を熾す
●火の始末あぶない母と聖夜の灯
【百鳥】
●隧道の出口は遠し雪女郎
【俳句界 岩城久治、加古宗也、中原道夫選】
●遠火事や遠くの町を訪ね来て
●クリスマス山頭火ほど酔ひにけり
●米人とこはごは河豚をつつきけり
【百鳥】
●箱裏を舐めて聖菓を囲みけり
●一と止メ墨書のけはひ冬至梅
●色足袋をそろへ妹入院す
●大根のどつかり坐る楽茶碗
●冬初め見直されてゐる煉炭
【百鳥】
●校鐘のまぢかに聞こゆ朝時雨
【百鳥】
●あらばしり役者は問屋の次男坊
【百鳥】
●チャルメラは異国の町に冬の虹
●ふりかへる癖のさびしき九月尽
【はるもにあ】
●炉話や箸替へて灰つつきをり
【はるもにあ】
●鯒鍋や父の一徹なつかしき
【はるもにあ】
●冬の鳥「〜食堂」てふ飯屋あり
●銀賞でちようどよろしき小春かな
【はるもにあ】
●みやこどり目と目の間を飛びゆけり
●鼻がまづ備長炭に捕へらる
【俳句界3月号/2008】 中原道夫選[秀逸]
●保育士をやめようかなと云ふ布子
●しみどうふ野池は柵に閉ぢてあり
●冬すずめ句集の帯はあかねゐろ
●嚔して過去玉ひとつ落としけり
●寒牡丹ひんやり赤き耳の裏
●冬葱や父直伝の空威張り
●一文字や風呂敷頭巾参上す
【はるもにあ】
●葱ありて鍋の相手をさがしをり
●手を拍つや黄泉がへりたる寒の鯉
●寒鰤や立見席からパバロッティ
●冬山路櫻の階に松の階
●鼻水や如意ケ獄から大徳寺
●着ぶくれてみやげに撰ぶあんこ玉
●雪催七年のちの一句かな
【はるもにあ】
●冬終るひとしほ夜の観覧車
●母と子と∞を巻いて毛糸玉
●冬の梅そなたの鼓動たしかむる
●さかしさのない君が好き冬の薔薇
【百鳥】
●冬萌や天使が編んでくれたもの
●ぽこぽこと歩いているよ冬日和
【百鳥】
●誕生日思ひ出せずに春隣り
【百鳥】
●綿虫やいつもの役者と脚本家
【百鳥】
●イマジンとともに聖樹をしまひけり
●水底に迎ふる神や五開鐘
●神の留守霊長類のおおあくび
【百鳥】
●灯台守去りて最期の月氷る
●凩を追いかけてゐるランドセル
【はるもにあ】
●冬銀河ついの間近き昭和かな
●しまひ湯や寒月光のひとゆらぎ
【百鳥】
●素晴らしき無に還りけり冬の虫
●銀幕の時雨となりし名画館
●寒猿のひとけなくただ木曜日
●僕と言ふ少女に逢ひし冬の園
●冬の野に立ち少年の声変はる
【百鳥】
●雪は絵に絵は雪になる寺の縁
●寒の雨に花柄の傘スィギニンザレイン
●ソンソンと雪フリヤマズ光悦寺
【はるもにあ】
●目で追ひし風花冬の蛍かな
●傍に居て帰らないでよ雪解川
●咲くほどに幽き姿水仙花
●熾り炭とんがらがつて吹きにけり
【はるもにあ】
●自己愛のかなしからずや姫椿
●つるのこゑとほくにありてふゆのつき
●息白したちまちにして空也なり
【はるもにあ】
●燗酒の師よりも三分熱き弟子
●年輪は幕間の吐息冬木立
●散紅葉覚悟の路を分け入れり
●亡き兄の三十一文字や夢十夜
●雪兆す忘れじ川の雫より
●炭の香にちち・はは・あにと筆を措く
●葱葱と過ぎ去る白きぬくきもの
●小春日や鉄路に写す過去未来
●過客なり北山を越す冬の月
●宵ちかくをんな/を纏う雪になる
●闇十年 有情の芯に榾(ほた)燃ゆる
●聖夜祈るレノンの声が覆ふ街
●風花を狩りて残れり命薬(ぬちぐすい)
●黒徳利セーターに嗅ぐ恋の崕(はて)
●冬空の 冴えて四万の月を見る
● 舞ふ雪の 我が唇に 触れて消ゆる
● 眼に哀し汚れなき日の青い雪